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左近の桜、右近の橘。  作者: みんくん
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第45話 最終話

「左枝、何処か行きたい所は無いかい?」

「行きたい所ですか?」

「うん、明日から夏休みだろう?だから、その…一緒に…一緒に旅行に行きたいんだ」


そう言う先輩は何処か自信が無さ気で、もしかしたら断られると思っているのだろう。


「そのね…嫌だったら別に構わないんだ!でもね、お仕事も一段落しただろう?…だから、その…」


自信無さ気に言い淀む先輩。


「一緒にね、思い出作りとかしたいんだ…ダメ、かな…?」

「まず右葉さん、何で私が断ると思ったんですか?」

「行ってくれるのかい?私と…」

「当たり前じゃないですか、大好きな人と旅行だなんて女の子なら夢に見ることですよ?」

「さ、左枝…いきなりは反則だろう…」///


突然の大好きの言葉に顔を赤くする先輩。


「でも、何で私が断ると思ったんですか?」

「左枝いつもなるべく節約して無駄遣いとかそんなにしないだろう?」

「え?」

「この前のカラオケだってちょっと渋ってたし…だから旅行とかは嫌なのかと思って…」


あぁそういう事だったのか、でも旅行が無駄遣いと言われるのはちょっと悲しいな…


「右葉さん、私右葉さんと一緒に旅行行くことは無駄遣いじゃないと思うんです…その、右葉さんがそう思うのか勝手ですし私のどうこう言う資格はないと思うんですけど…その、言葉の綾だってわかってても、その…ちょっと悲しかったです」

「ち、違うんだ!そんなつもりじゃっ…!!左枝との旅行は無駄遣いなんかじゃなくて、その…」


ポロポロと涙を流す先輩と私。

なんというかすごい変な雰囲気になってしまった。

尚、このあと二人が落ち着くのに時間にして約20分は掛かったとだけ言っておこう。


食卓の上は涙やら鼻水やらが染み込んだティッシュが山になっていて二人で目を真っ赤にして落ち込んでいる様は正にお葬式ムードというやつだ。


「左枝、さっきは本当にごめんなさい…言葉を選ぶべきだったよ…」

「私こそごめんなさい…何も泣く事無かったのに…」

「私が悪いんだ!今回の件に関しては全面的に!」

「いえ、今回の件は私に責任があります、だからそんなこと言わないでください!」

「いや僕だ!」

「いえ、私です!」


むぅーとにらみ合う私と先輩。

するとふっと頬から空気が抜け、笑いがこみ上げてくる。


ハハハ

フフフ


リビングに笑い声が響いた。


「でも本当に悪かったよ、僕もそんなつもりで言ったんじゃないんだ」

「もう右葉さん、この話は終わったってさっき言ったでしょう?だから行き先を考えましょうよ」

「そうだね!」


さっきとは打って変わってニコニコとしている私と先輩。

今考えると今のが初めての喧嘩になるのかもしれない。まぁ喧嘩と呼べるほど大層なものでもなかったが…。


ふと思った。

旅行に行って、帰ってきて、先輩が三年生になって大学生になって社会に出て。

ずっとずっと私と先輩は一緒に沢山楽しいことをして、一緒に笑い合うんだろうと。


これからもずっとずっと続く長い長い物語。

二人で泣いて、二人で笑って、二人で喧嘩して、二人でまた笑い合う。

そんな事がこれからもずっとずっと続くと思うと本当に楽しみで楽しみで仕方がないのだ。


「先輩、これからもずっと、ずっとずっとずっとずーーーーーーっと…一緒に居てくださいね?」

「あぁもちろんさ、君が嫌だって言ったって離れない」


2対1つの言葉で、これほど私と先輩にピッタリな言葉はないだろう。


左近の桜、右近の橘。


Fin

読んでくださりありがとうございました。

次話もどうぞ、よろしくお願い致します。

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