第17話
あの翌日、私は先輩と宮古先輩と一緒に部室でご飯を食べていた。
一般生徒にはあそこでタバコを吸っていた生徒4人がと言う事になっており、先輩は目を瞑っていたため真実を知ることは無かった。
「それにしてもあの時の左枝は格好良かったよ、ありがとう左枝、僕の事を守ってくれて…」
「先輩…」
見つめ合う二人、そしてヤレヤレと言う先輩。
「ちょっとお二人さーん…私、居るんですけどぉ」
「あぁ済まないヒラ忘れていたよ」
「ごめんなさい宮古先輩…」
いい雰囲気を壊された仕返しである。
「もう、二人はそうやって私に意地悪をするんだからぁ…それにしても…山倉先生格好いいわぁ…」
うっとりとした表情の宮古先輩と始まった…と言う顔の先輩。
あれ、もしかして宮古先輩が好きな人って…?
「先輩先輩」
「ひゃっ!い、いきなり耳元で話すのはやめてくれ!み、耳はその…弱いんだ…」
いいことを聞いた…ってそうじゃなくて
「宮古先輩が好きな人ってまさか…」
「そのまさかさ…向こうもそこまで悪い気はしないって感じでね…卒業後どうなっていることやら…」
「宮古先輩って大人っぽいですもんね…」
初めて知る新事実に驚きを隠せない私ではあるがとにかくお弁当を食べていく。
そして放課後の文芸部室にて
「ヒラと山ちゃんは所謂幼馴染ってやつでね」
「幼馴染ですか…?」
「うん、家が隣同士だったらしい」
そんな設定本当にあるんだ…現実に…。
「僕も聞いたときは驚いたねぇ…現実にそんな設定が存在したなんて!ってね」
ハハハと笑う先輩。
「それで昔から遊んでくれるお兄ちゃんが今でも大好きってわけさ」
「そうなんですねぇ…なんというか一途というかすごいですね…」
「僕も同意見だ…そんな彼女に憧れを持つ自分もいる」
ん?なんかデジャビュ
「先輩…この話、私どこかで聞いた事がある気が…」
「…ッ!」ギクリ
正にセリフの鍵かっこの後ろにカタカナでギクリと書かれて居そうなくらい正直な反応を返す先輩。
思い出した、これは確か大和蜜柑先生の小説であったお話だ。
「先輩…まさか…?」
「だ、だってしようがないじゃないか!僕だってプロの小説家だ!使える話は使うのが普通だろう?!」
開き直った…。驚くべきことに開き直った先輩は必死に弁解を続ける。
「だって、だって物語の中だけでもヒラには幸せになって欲しかったんだ、これは本当だ、本当にヒラには!!」
「わかりました、分かりましたから落ち着いてください…」
「はぁはぁ…」
「と言うか作品の中だけでもって…もしかして山倉先生って…?」
「いや、未婚者で彼女も居ない、一人暮らしだ」
「え?じゃぁどう言う…まさかロリk」
「待つんだ左枝、それ以上は言ってはいけない!さらに言えば別にロリコンでは無い!!」
「あ、言っちゃった」
「あ…」
やっべーと言う顔の先輩。
「まぁなんだ…その、私も若かったんだ…去年の私はその…ヒラの話を聞いて色恋にその…興味があって…お話の中だけでもって思って…」
尻すぼみに小さくなる先輩の声。
「やっぱ先輩って意外に可愛い所ありますよね…」
「う、うるさい!」
ん?ふと思えばこの前宮古先輩は一緒に好きな人とご飯へ行くとか言っていた…さすがに隣の家の子とは言え生徒と一緒にご飯へ行くのだろうか?
「先輩、もしかして山倉先生って宮古先輩のこと…」
「左枝、それは僕らが介入していい事じゃ無いよ…僕はそれを去年…嫌というほど味わったからね…この罪悪感は君には知って欲しくないよ」
曰く先輩の本を読んだ先生が宮古先輩とその話になり、先生が照れてそんなわけ無いじゃないかと言ってしまったらしい。
先生はその後本気で落ち込み、宮古先輩は数日間学校をおやすみしたとか…。
「あー…なんというか…やってしまいましたね…」
「あーもう!僕は何であんな余計な事をしてしまったんだ!今タイムマシンがあるなら過去へ行って僕の頭を殴ってやりたいよ!!」
相当な後悔をしているらしい。
「左枝ー慰めておくれー」
私にヨロヨロと抱きついてくる先輩の頭を撫で匂いを堪能する。
今はただ、宮古先輩と山倉先生の食事が成功することを祈るばかりである。
読んでくださりありがとうございました。
次話もどうぞ、よろしくお願い致します。




