第14話
ノックの音の後に聞こえる声に私と先輩は肩を跳ね上げ驚く
「ちょっといいかしら?入るわね」
今日は別にえっちな事をしていた訳ではなくただ二人で小説を書いていた。
机を挟んで向かい合ってノートパソコンのキーをカタカタしているだけ。
では何故ここまで驚いたかといえば昨日私と先輩がキスをして、さらにその先に行こうとしていたところを見られてしまったからだ。
「何よ居るじゃない、なら反応くらいしてくれたっていいじゃない…」
むーっと膨れる宮古先輩に先輩がすかさずフォローを入れる。
「あぁ済まない、僕も左枝も今執筆中でね」
「執筆?左枝さんも?」
「はい、今はファンタジーに挑戦しているんです」
「あら意外ね、なんとなくあなたは恋愛小説とかのイメージだったのだけれど」
「そうだね、左枝の恋愛小説はすごいよ、内容といい読者を導き、そして引き込むようなあの独特な文才は多分この分野だけなら僕よりも相当上なはずさ」
「ユウがそこまで褒めるなんて珍しいこともあるもんね、いつも貴女褒めるけど結果僕の方が上ーって言ってるから」
口に手を当てクスクスと笑う宮古先輩。
「事実だから仕方がない…それにしても君はいつもどおりに接してくれるんだね」
核心に切り込んだ先輩をジッと見つめる宮古先輩とアタフタする私。
「正直、さっき入ってきたときちょっと残念だったわ」
「は?」
「え?」
私の声と先輩の声が綺麗に重なる。
「だって、昨日みたいにえっちな事でもしてるんじゃないかって思ってたんだもん…なのに二人で仲良く普通の執筆だなんてつまらないわ」
「おいおい、ここは文芸部、僕達は真っ当な活動をしていただけさ」
「昨日はあんなにえっちな雰囲気出してたのに?」
「うぐっ…」
言葉に詰まった先輩は私に助けを求めアイコンタクトを送ってくる。
「す、」
「「す?」」
「好きな人同士で居たら…その…ああなるのも仕方ないかなぁ…って…」
あぁダメだ、これは墓穴を掘った。
「すっ…好き同士…」
顔を真っ赤にしてブツブツと言っている宮古先輩と諦めた表情の先輩。
「ヒラ、僕は本当に左枝の事が好きなんだ…同性だけど異性としての好きと同じ感情さ」
「…」
「気持ち悪いかい…?僕は君がどう思っているか、それだけが不安なんだ…」
「あ、別にそれはどうでもいいのよ…それよりも聞きたいことがあるの…!!」
「どうでもっ…!?ヒラ、それは本当なのかい!?」
「だからユウが女の子の事好きなんて昔から知ってたしアンタ今までに何人かにちょっかい出してたじゃない」
聞き捨てならぬ
「先輩…どういう事ですか?」
「さ、左枝!?落ち着いてくれ、違うんだ、これには事情が!!」
「ご、ごめんなさい!今のはそう言う意味じゃないの!だから、だからそのペンを置いて頂戴!ね?」
ペンを手放すと二人はホッとした表情で椅子に座り込んだ。
「僕は今までキスはした事なかったし本当に好きになったのは君だけだよ、左枝」
「でもちょっかい出してたって…」
「それはヒラの誤解なんだ…何度いっても信じてくれないんだよ…」
「でもあれはどう見ても手出してた様にしか見えないわよ…?」
自分は悪くないと口を尖らせて反論する。
「あれは告白を断ったらこれで諦めるから最後に抱きしめてって言われたんだ…告白を断ってしまったのにそれまで断るのは申し訳なくてね…」
「それで抱きしめて居たと?」
「そうさ、僕にやましい気持ちなんてこれっぽっちもなかったよ!」
でも確かに先輩ならありえるのかもしれない…この人はとても優しいから。
「事情はだいたいわかりました…でも先輩、次からは抱きしめるのもダメですよ…?」
コクコクと頷く先輩とヤレヤレと頭に手を当てる宮古先輩。
どうやらこの件は一件落着…?いや宮古先輩が何か頼みがあると言って言っていた様な気がする。
「宮古先輩、そういえば何か私たちに相談があるって言ってませんでしたっけ…?」
「そうそう!忘れていたわ!!ユウ、お願い、キスした感想を教えて欲しいの!!」
その言葉を聞き再び私の手がペンに伸びる。
このあと私を宥めるのに15分を要したとだけ書いておこう。
読んでくださりありがとうございました。
次話もどうぞ、よろしくお願い致します。




