第9話
コンコン
「左枝、ご飯だってー…あらごめんなさい、お邪魔だったかしら?」
「お姉ちゃん!?」
見られた、見られてしまった…
「左枝、ありがとう、これでいい文章が書けそうだ」
「え?」
「もう忘れたのかい?私の取材を手伝ってくれるんだろう?ついさっき君が言ったんだぞ?」
「あ、あぁ…取材ね、取材」
「それはそうと左枝、この子は?」
「あ、そうか、えっと文芸部の部長で先輩の立花右葉さんです」
「姉の桜 美樹です、よろしくね右葉さん」
「こちらこそよろしくお願いします、立花右葉です」
軽く握手を交わす二人。
「それで…右葉さん、この子と付き合ってるの?」
「ブフッ」
「ちょっとアンタ何やってんのよ…もう、ほらティッシュ」
「ゴホッゴホッ」
吹き出しむせる私、楽しそうな先輩。
「いえ、私と左枝は文芸部の先輩後輩です、さっきのは私が書いている小説のモデルを左枝にしてもらっていて…どうも上手に書けないので左枝に手伝ってもらっていたんです」
「あぁ、私も良く左枝にやらされるわ…そういうことね、つまんない…まぁいいわ、ご飯できたから下りましょう」
「わざわざありがとうございます」
「いいのよ、早く来てね」
階段を降りていくお姉ちゃんと振り向く先輩
「フフ、ちょっと焦ったね、ボロを出さないように気をつけておくれよ?」
「は、はい…」ゼェゼェ
閑話休題
「それで右葉さん、学校での左枝はどんな感じなの?」と母
「そうそう、ずっと気になってたんだよね!」と姉
「フフフ、とても優しい子でb…私の冗談にも笑ってくれます」と先輩
と言うか先輩のあの喋り方治るんじゃん…。
「そうそうお母さん!さっきねこの子達部屋で抱き合ってたのよ!」と姉
「まぁ!」と母
「はい、いつも左枝さんにはb…私の取材を手伝ってもらっているんです」
「取材?」
「はい、私も左枝さんと同じく小説を書くのでその取材としてどういう感じなのかを左枝さんで試させてもらってるんです」
「左枝を?」
「はい、普通の人は嫌がるんですけど左枝さんはいつもb…私の取材も手伝ってくれて本当に助かります」
「まぁまぁ、左枝も役に立っているのね」と母
と言うか僕というのは本当に治らないんだなぁ…
と言うか居心地が悪い、悪いと言うか私は今空気になっている。
なるべく気づかれずなるべく話を振られないように
「この子ね、どんな小説書いてるの?って聞いても見せてくれないのよ…右葉さん読んでない?」
「さきほど読ませていただきましたがとても素敵なお話でした。…格好いい先輩に一目惚れをするっていうお話なんですがね、本当に丁寧に書かれていて長年小説書いていますがここまでこう、キュンキュンするような作品は久しぶりです」
「もう先輩!」
「おっと、左枝が怒るのは困るなぁ…すみません、この話はここまでで」
ハハハと笑う先輩とお母さんたち
顔を真っ赤にして俯く私。
ここまでも恥ずかしいはずなのに今日のごはんは一段と美味しかった。
閑話休題
それではお母さん、美樹さんお邪魔しました。
「本当に泊まってかなくてもいいの?」
「はい、私も仕事が残っていますし明日も学校ですので」
「そう?いつでも遊びに来てね?」
「はい、今日は本当に御馳走様でした、とても美味しかったです」
「あーもう!右葉さん可愛すぎる!いっそうちの子に!」
「お母さん、先輩困ってるでしょ、先輩、電車で帰るんですか?」
「うーん…そうしようかな」
「なら駅まで送ります、すぐそこですし」
「いや、もう夜も遅いし左枝も危ない、ここでいいよ」
「いえ、行きます、さぁ行きましょう先輩」
先に歩き出す私
「あっ、それじゃぁ今日は本当にありがとうございました。さ、左枝!まっておくれ!」
グングンと進んでいく私と付いてくる先輩。
「左枝、何を怒っているんだい?教えておくれ、僕は鈍いんだ…左枝がなんで怒っているのかわからない」
「だって…先輩お母さんとお姉ちゃんとばっかり仲良くして…」
言うつもりはなかった、でも口をついて出てしまった。
「そうか、ヤキモチを焼いてくれたのか…嬉しいよ、左枝」
「もう!先輩のバカ!」
でも顔が赤くなってしまう…。
「大丈夫、僕が好きなのは左枝、君だ…なんなら証拠を見せようか?」
「証拠?」
「そう、こうやってね」
先輩は私の顎をクイッと上げくちづけをする。
「んっ!!」
「これで僕の気持ちが分かってくれたかな?」
「…はい、分かりました」
フフフと笑う私とハハハと笑う先輩
「それじゃぁまた明日会おう」
「はい、先輩、また明日」
駅の中に消えてゆく先輩をみて少しのさみしさを感じつつもさっきのキスの感触を思い出し、私は家へと足を進めた。
読んでくださりありがとうございました。
次話もどうぞ、よろしくお願い致します。




