残念ながら入学式
処女作です。温かい目で見守ってください。
4/7 ユネルの名前を訂正
ノエルの名前を訂正
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1/19 加筆修正
1話 残念ながら入学式
唐突だが俺の名前はユネル。
今は「勇者」とか「英雄」って呼ばれている。
ん?
どうして「英雄」になったのかって?
そんなこと決まってるだろ。
好きな女と結婚するためだ。
時はネオス暦634年。
場所はイロアス王国第一学院。
これは俺が「英雄」と呼ばれるまでの物語だ。
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「で、あるからして新入生の皆さんには―」
イロアス王国第二学院体育館、いつもは俺たち学院の生徒が魔術や戦闘の訓練をしている場所だが今日は新入生を迎えるための入学式が行われている。
「あー、だるい、長い、帰りたい。」
在校生の中で話しをきいているこの国では珍しい黒髪黒目の俺こそがこの学校の生徒会副会長であり、超絶イケメン(自称)で成績優秀(自称)な絶賛退屈中のユネルである。
別に入学式をやるのは構わない。ただ長い、長すぎる。新入生への話だって第2王女のノエル様のお話だけで構わないと思うんだが…
「しー、静かにしないとまた怒られるわよ。」
「だいじょうぶだ。師匠はいま壇上にいるし絶対にばれない。わぁぁぁああ、眠い。」
さすがに全俺の中で「恐怖の象徴と言えば師匠!」って有名なあの師匠でもこの数百人の生徒や保護者の中から俺を見つけることは不可能なはずだ…
たぶん…
「はぁ、さっきまであんな真剣に話を聞いていたのに…」
さっきから小言を言ってくるのは幼馴染で姉弟弟子のシフェニ。年は一個上で一応この学校の生徒会長をやっていたりする。容姿は銀髪碧眼の美少女。表では高嶺の花とか正統派美少女とか言われてるけど俺からしたらただの性悪お……
「なんかいった?」
「い、いえ、なにも」
な、言っただろ…
怖いんだよ、こいつ。
「なんでさっきのノエル…様の話は聞いてたのに今はもう話を聞かないの?」
「ノエル…様の話だから聞いたんだ。当たり前だろ?」
「はぁ、ほんともう……なんでノエルばっかり…」
「ん?なんか言ったか?」
「何も言ってない!」
…ほんと、へんなやつ…
「学園長の話、シーア学園長。」
またお話かー
ほんとお話はノエルだけでいいと思うんだけどなー
「ユネル。学園長のお話だよ。」
いや、やっぱりノエルはほんとすげーかわいいじゃん。
天使が裸足で逃げ回るレベルで。
いや、マジで。
だから入学式もノエルの言葉だけでいいと思うんだ。
「ねぇ、ユネル。」
うん、そうしよう。それがいい。
今度シアおじさんに相談しよう。
あの人は話が分かる人だから絶対通してくれるはず。
ぱちぱちぱちぱちぱちぱち
ん?誰かの挨拶がようやく終わったのか?
えーと、さっきまで話していた人は…
師匠か…師匠!?
「おい、シフェ。師匠こっちに気づいてたか?」
「思いっきり見てたよ。声かけたのに…」
やばい。殺される。
前、終業式さぼって遊びに行ったのがバレたときは死にかけたのに…
願わくは明日も生きていますように…
ほかには大きなこともないまま(つーか寝てたから知らん)入学式は終了。
クラスが違う幼馴染と別れ教室に戻った。
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教室に入るといつもと変わり映えのしない奴らが談笑していた。
俺が席に向かおうとするとその中の一人が声をかけてきた。
「よ!ユネル。会長さんとの相席はどうだった?」
このニヤニヤ笑いながら話しかけてきたこいつの名前はアノイ。
腹が立つが校内近接戦闘順位二桁の成績優秀者だ。この戦闘クラスでは校内近接戦闘の順位が成績に直結する
てか相席って…
「あのなー、何回も言ってるが俺とあいつはそんな関係じゃないからな」
「と、言いつつも実は…?」
「ねーよ」
「あんな仲いいのに説得力ないよね」
「それねー、隠さなくていいからしえてよ」
アノイと話していたアリアとミリアまで乱入してくる。
「お前らなぁ――」
「それぐらいにしといてあげなよ」
俺が反論しようとすると談笑していた最後の一人のカグラが制止してくれた。
「しょうがない、カグラに免じて許してやるか。ハーハッハ」
「なんでお前が偉そうなんだよ」
「ハハハハハハハハハ」
まだ笑ってるし
まぁ、こいつの頭がおかしいのはいつものことだ
それより
「さんきゅー、助かったわ」
「ううん、気にしないで」
カグラはこのうるさい戦闘クラスの数少ない常識人。
だいたい暴走したあのバカ女を止めるのはこいつの役回りだ。
「苦労してんな、お前も…」
「えぇ、あいつと幼馴染になってしまったのが運の尽き。あきらめたわ。」
「そうか…、強く生きろよ…」
カグラを励まし?、新学期早々一番後ろの席で寝ているルームメイトの隣に座って担任が来るのを待った。
しばらくすると身長2メートルほどの筋肉の塊みたいな男の教師が入ってきた。
「はい、ひと月ぶりだな。くそ野郎ども。
今年もおれがお前ら第一学年...じゃなかった、第二学年戦闘クラス担任になった。まぁよろしく頼むわ。
それと入学式ご苦労。一人を除いてみんなちゃんと起きてたな。」
誰だろーな、寝てたの。知らないなー。
「おい、ユネル。目をそらすな馬鹿者。お前に決まっているだろう。」
「いやだなー、ニース先生。僕が寝るわけないじゃないですか。
これでも俺は生徒会の副会長やってるんですよ?
入学式で寝るなんてことするわけないじゃないですか。」
「そのお前が所属している生徒会の会長さんからのタレコミだ。」
まじかよ…
あいつ言いつけやがった。
「彼女の勘違いじゃないですか?」
マズイ。師匠にバレる前に何とか言いくるめないと…
「いや、学園長にも確認済みだ。」
あ、バレてましたか。
でも今日は鍛錬の日じゃないからもしかしたら会わないで済む可能性も…
「あと、学園長が放課後になったら来いだとよ。」
はい、終わったー。
いや、でもここは…
「えーと、今日は放課後予定が入ってまして…」
「主人公はそう言ってるがノア。お前、ユネルと同じ生徒会の寮に入っていたよな。なんか予定入ってたか知ってるか?」
問いかけられたのはいつの間にか起きていたルームメイトのノア。中性的な顔立ちで背が小さい。一応俺の弟弟子にあたるがどちらかというと友達って言ったほうがしっくりくる。
そんなことはさておき、今、俺の命運がこいつにかかってる。たぶんノアなら俺の味方をしてくれると賭けたのだが、彼はこちらを一目見て言った。
「入って、ない。」
はい、完璧に終了のお知らせです。
俺は数刻後に起こることを予想し深いため息をつきながら机に突っ伏した。
「じゃあ、そいつのケアはノア、任せたぞ。」
ノアはちいさくうなずくと俺の頭を撫で始めた。
あー、癒されるー。
「やっぱりシフェの隣だったの?」
「うん。これでも会長と副会長だからね。別に席を用意されたよ。」
「いっしょに、すわりたかった。」
ん?
シフェとか?
そー言えば仲いいからな、この二人。
「ノアはシフェのこと好きなのか?」
グッ
髪引っ張られた?
「イタイ!」
ついでに視線も痛い。
そんな気に障るようなことしたかな?
そーいえば、ノアってノエル様の話すると喜ぶよな…
その話をすればにらまれないかな?
「おーい、生徒会コンビ。話聞いてるかー?お前らの話だぞ?」
ナイス先生!
ん?というか…
「ぼくたちの話って何?」
そうそれそれ。
あ、ちなみにこのクラスで生徒会なのはおれとノアだけだから生徒会コンビって言われたら必然的におれたちのことになる。まぁそもそも今は会長のシフェと副会長のおれと会計のノアだけなんだけど。
「はぁ、おまえら話聞いとけよ…2週間後に剣王戦を開催することになった。その代表決めの話をしていたんだ。」
剣王戦とは毎年新入生歓迎の意を込めて行われる学内の剣術大会のことだ。ルールは5年ごとに王都で開催される「剣帝戦」と同じで、魔法使用禁止の純粋な剣技で勝敗を決する各クラス2名ずつのトーナメント戦である。
「それが一体俺たちとどういう関係があるんだ?」
「クラスの代表にお前らほどふさわしい奴はいないだろ。ノアは前年度剣王戦覇者だし、おまえ自身も近接戦闘校内ランク1位だからな。」
え?
出たくない…
「しかも、ユネルは去年の剣王戦に出てないだけで出てたら絶対勝ってた。」
まさかのノアからの援護射撃。
「そ…それは出てたらの話だ。大体俺が優勝するなんて保証どこにもないだろう?」
「ぼくは一回も近接戦闘でユネルに勝ったことがない」
「ぅう…それは…」
クラスの奴らの視線が痛い…
「で、でも俺、学園長から校内ランキング戦以外出るなって言われてるし…」
これは本当の話だ。
とある事情があって俺はある大会以外の公式大会には出場しないことにしている。
「いや、お前に関しては学園長からの指名だ。」
「ね、学園長もそう言ってる...って、え!?」
マジっすか…
あの人何考えてんだか…
「…わかりました…。ちょっと学園長に詳しい話を聞いてきます。」
「大丈夫?」
何がだ?
いや、さすがに俺が方向音痴だからといって学園長の部屋くらいは行ける……はず…
「大丈夫、聞きに行くだけだから。」
俺は教室を出て学園長室へ向かった。
「あれ、絶対怒られること忘れてるよ…」
「死んだな、あれは…」
「ほんとユネルバカなんだから!ハハハハハハハっ痛!」
「あなたは少し黙りなさいよ…」
そんな会話が教室内で交わされてるとも知らずに。