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職業は探偵です!  作者: 夜行 せい
6/18

冷徹!

 対象者車輌は新たな二対象者を乗せて、発進する。

「馬鹿!ジロジロ見るな、視線を下に向けろ!」

 ネコは後部座席から運転席を蹴る。


「こういう場合はどうするんですか?」

「尾行するに決まってるだろ。マンションの駐車場で車を切り返せ」


 キキィーー!!


 ネコがオレに指示を出した瞬間に後方からタイヤのスキール音が響く。

 ネコも慌てて振り返る。


「危ねーぞ!ババァ!!」

 対象者車輌は倒れているお婆さんを放置して、急旋回し勢いよく発進する。


 おそらく()いてはいない。

 驚いて倒れただけだ。

 だがピクリとも動いていない。


「おい、早く車を出せ!見失うぞ!」

「でも、お婆さんが倒れてます!」

「いいから出せって、そこで切り返せ!」

 ネコがオレの肩を何度も揺する。


「お婆さんを放っておいて仕事が優先ですか?」

「ただビビって転んだだけだ、誰かがすぐに見付けて何とかするだろ!」

「オレ助けに行きます!」

 オレが運転席のドアを開けようとすると、物凄い力で肩を押さえられる。


「いいか?よく聞け! そんなに正義の味方になりたきゃ公務員試験受けて警察になれ! おれ達の仕事はあいつの不貞行為を暴くことなんだ! 分かったら早く車を出せ!間に合わなくなるぞ!」

「何で! 何でそんなに非情に…冷徹になれるんですか! さっきも楽しそうに撮影してたし、人としておかしいですよ!」

 オレの一言にネコは一瞬黙りこんだ。


 そうだ! オレは間違っていない!

 ネコの感覚がどうかしてる!

 早くお婆さんを助けなきゃ!


「今助けなければ間に合わないかもしれない! 後悔したくないんでオレは降ります!」

 オレは運転席のドアに怒りをぶつけるように思いっきり閉めて、お婆さんの元へ急ぐ。


 ネコは車をUターンさせて、スピードを出して対象者車輌を追っていった。


「大丈夫ですか!? お婆さん!!」

 オレは声を掛けながら119番に通報する。

 お婆さんは心臓を押さえて、苦しそうに(うめ)き声をあげている。

「お婆さん! しっかりしてください!!」


 ―病院―

 オレはさっきまでの出来事をあまり覚えていない。

 それほど必死だったからだ。

 救急車が到着したのは通報から10分も経っていないと思う。

 オレはお婆さんと救急車に同乗して、この町中の総合病院に来た。

 お婆さんは、急に車が来たから驚いて持病の心臓発作が起きて倒れたらしい。

 一時は心拍停止にもなりかけて危なかったらしいが幸い命に別状はないらしい。


 もう17時だ

 ネコと別れてから3時間以上経つか

 あいつかなり怒ってたな。

 初日からこれだもんな。

 多分クビになるかもなー、あーぁ、また就活かー



 ブーン、ブーン


 オレの携帯がバイブで着信を知らせる。


 そういえば、さっきも電話鳴ってたな

 どうせ、カッパかネコだろう

 怒られるんだろうな


「はい、もしもし」

「ヒヨッコ君!? やっと出てくれたー」

 カッパがホッとしたような声で言う。

「すいません、オレ……」

「いまどこ??」

「町中の病院ですけど」

「事情はネコから聞いてるよ。今から瓜坊をそっちに迎えに行かすから事務所に来てよ」

「あの、オレ……」

「なに? どうしたの?」


 辞めるって言いたいけどどうやって切り出そうか。

 オレにこの仕事は合わない、ネコも言ってた


「まぁ、後で話聞くからとりあえず戻っておいでよ」

「はい、分かりました」


 カッパに怒っている様子は無かったな

 事務所かー、行きにくいな。

 何でこんな目に合わなければならないんだよ。


 それから20分後、瓜坊が病室の待合室に入ってきた。

「やっほー! ヒヨッコ!」

 ジーンズにパーカーを着た、テンションの高い瓜坊が声を掛けてくる。

「どうも……」

「暗いねー、朝会った時より男前の顔になってるねー。」

 瓜坊のノリはネコと正反対で軽い。

 カッパも瓜坊もヒヨッコって呼んでくるってことはネコからオレの失態を聞いてるはず。


「病室どこ?」

「え?」

「お婆さんのだよーん」

「303号室です」

「ちょっと待っててねー、今お見舞いしちゃうからー」

 瓜坊はオレを置いてきぼりに勝手に院内を進む。


「瓜坊さん、ちょっと待ってください!」

「ほえ?」

「別館の303号室です。それに相部屋なのでオレがいないと誰か分からなくないですか?」

「やっちまったー、ほら私さ、猪年だから猪突猛進なの。あと『さん』は付けないでねー。ネコに言われなかった?」

「えぇ、まぁ」

 瓜坊はオレの手を引っ張り、早歩きで院内地図を見ながら移動する。


「あそこで寝ている人がさっき助けたお婆さんです」

 オレは303号室前で小声で瓜坊に説明する。


「失礼します」

 瓜坊が軽いステップでお婆さんに近付く。


「この度はうちの者がご迷惑を御掛けしました! 思ったよりお元気そうで何よりです。お見舞いの品と迷いましたが何かのお役に立てて下さい。」

 瓜坊は御見舞と書かれた祝儀袋を置く。


 思ったより礼儀はきちんとしてるな

 この人は意外と常識人なのか?


「すいません! 私共はこれで失礼致します」

「ちょっと、お待ち下さい!」

「ほえ?」

「お礼を言うのはこちらの方です。失礼で無ければ会社の住所を教えてくださいませんか?」

「はぁ、そう言われましても……」

「どうか教えて下さい」

「では、これでよろしくです!お大事にしてください!」

 瓜坊は祝儀袋を置いたテーブルに黄色い広告を置く。


「さ、行くよー」

 瓜坊が手を引っ張り、オレを病室から連れ出す。

 そしてオレ達は病院の駐車場へ行き、瓜坊のジープの助手席に乗り、事務所へ向かう。


「なんかさー、緊張するよねー。私たちの仕事ってさ、人に恨まれても感謝されることなんてないのにー。とってもレアな体験したよー」

「でも、ネコやカッパは怒ってますよね?」

「二人とも全然怒ってなかったよー、さっきの見舞金もネコのお金だし」

「そうなんですか!? オレすごいミスやらかしたのに」

「あはは、その様子ではネコに相当絞られましたな?」

「色々と……みんなあんな感じなんですか?」

「ピースのメンバー? まー、みんな一癖あるよー。それじゃないとやっていけないっしょ」

「オレ……自信ないです」

「そういえばネコもねー、最初そればっか言ってたよー。あいつもさ、辛い経験いっぱいしてるんだよー」


 あのネコが!? うそだろ?

 想像したら笑えてくる


「事務所帰れば答えでるよ、きっと」

 瓜坊も笑いを堪えながら運転している。


「ちなみに、ボスも事務所に帰ってきてるよ」











すいません、長くなっちゃいました(^_^;)

引き続き感想お待ちしております!

どんどん交流しましょう!

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