ネストに存在する施設 ~入浴場~
ネスト存在する入浴施設であり、文字通り湯水の如く溢れ出る湯を利用している。
入浴場には十人くらいが同時に入れそうな大きな湯船があった。
湯船には大量の湯が文字通り湯水の如く注ぎこまれている。源泉かけ流しという無駄使いは、入浴場近くにある源泉から噴出する湯量が豊富だから可能な所業であろう。風情を醸し出すため岩石と岩石を無数に組み合わせて湯船を造り、その周りに多少の木々を配置することで、この場が山奥の秘湯のような印象を見る者に与える。
建設にかかった多額の費用は、全て冒険者達の自腹である。
湯船を造るだけのために地上から岩石を持ち込むなど正気とは思えないが、娯楽に飢えていた彼等は悪い意味において金と労力を惜しまなかった。
伊達と酔狂ここに極まれり。
質素倹約を重んじる教会関係者から批判の声は上がったが、いつの世も空気を読まない馬鹿者はいるもので、どこぞの馬鹿者が述べた発言が議論の逃れを変えてしまった。
『糞坊主共がケチ臭いこと言うなよ。ビッグに行こうぜ、ビッグに!』と。
あまりに空気を読まない発言である。
同時に誰もが感じていた声でもあった。
皆が思ったのだ。
『死地を潜り抜けてここまで来たのだ。少しくらいの贅沢は許されてしかるべきだ』と。
この話には後日談がある。
発言をした当の冒険者は浪費癖が祟ったのか、冒険者を引退後に自己破産の憂き目にあったらしい。
教会関係者の主張にも一理あったのだ。
何事にも限度というものがあるという、良い一例であろう。