序章~俺と私の誕生日01~
初めまして!
見て下さってありがとうございます!
初めて投稿したので正直、お目汚しにならないか心配だったり…(はっはっは…)
長さはどのくらいが読みやすいか判りかねたのでとりあえずこのくらい…
長すぎたらすんません…^^;
投稿は出来れば週に1~2回投稿出来ればと思ってます!
とりあえず今日は序章が長くなってしまったので分割しながらも今日中には出そうかと!
長くなってしまってすいません!!
では、本編をどうぞ!!
《クルルルル、ポポポポポ、クルルルル、ポポポポポ―――…》
時刻は六時三十分。
俺の部屋に何とも間抜けな目覚まし音が鳴り響く。
誰だよ、こんな間抜けなのに設定した奴…
うっすらと目を開け、音の鳴る方を見やる。
その音の主は…俺の携帯。そう、スマホだ。
「……………。」
俺は静かにスマホへ手を伸ばし、アラームを止める。
そして、ゆっくりと視界をずらし、カーテンの隙間から漏れる日差しをぼんやりと眺めてフゥ…とため息を吐く。
そういえば昨日、たまには違うアラーム音で起きたいと思って目を瞑ってランダムでタッチした音に設定したのだった。
誰だよなんて言ってごめん。犯人は俺でした。すみません。
誰に言ったのか分からない謝罪を済まし、部屋を出る。
その時、俺の隣の部屋から唐突にけたたましい音が聴こえてくる。
《ピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨ―――…》
これは…
いや、間違いないわ。
その混乱するようなアラーム音は直ぐに止められ、少ししてから扉が開き、部屋の主…俺と全く同じ顔をした少女が出てきた。
その時にバチリと目が合う。
「…はよ。」
「…はよ。何をしているの?リク。こんなところで。」
俺の双子の妹・相楽海は訝しげな顔で俺を見る。
「いや、お前の部屋から面白いアラーム音が聴こえてきてな…」
「あぁ…あれね…実は昨日、たまには違うアラーム音で起きたいと思ってね。目を瞑ってランダムでタッチした音に設定したの。どんなのか聴かないでいたからまさかひよことは思わなかったけど。」
ウミは若干、遠くを見るような目をして言い放った。
…あれ、なんかアラーム設定の仕方、俺と同じ思い付きじゃね?
「リクこそ何?あの間抜けなアラーム音…」
来ると思った!やっぱりあれ、聴こえてたのね!!
言われて若干、俺の眼は死んだような目になる。
「いや、俺もウミと同じ考えでやったんだよ…俺もまさか鳩とは思わなかった…」
「「……………。」」
暫しの沈黙の後、フッと、同時に笑い、動きだし、一緒にリビングに向かう。
俺らの考えは一致している。いつも、いつも。
そりゃあたまには一致しない時だってある。当然、同一人物なわけではないし。
行動は元より、生まれた日も、歩き出した瞬間も、喋り出した瞬間も、自転車に乗れた瞬間も…多少のずれはあったとしてもほぼ全て『同時』だった。
ここまで来ると気持ちが悪いくらいに。
でも、俺はウミより劣っている。ほぼ全体的に。
例えば…そうだな。体力は殆ど同じくらいだが、若干ウミの方が上だ。スポーツはウミの方が上。勉強は互角だけど、ウミの方が柔軟な考えが出来る。
けれども俺たちは気にしない。なんて言ったって世界に一人だけしかいない兄妹で、唯一の『血縁者』なのだから。
両親は死んでいる。俺らが十歳の頃に。
死因は事故死。両親が乗っていた車に信号無視のトラックが突っ込んできた。
即死だったそうだ。当たり前だよな。だって、俺らが見た時の車は原型を留めていなかった。スプラッタという言葉がよく似合う。そんな感じの潰れ様だった。
相手の運転手は軽傷。ほとんど無傷で済んでいた。
そいつは呆れた事に、
「俺は無実だ!!彼奴らが突っ込んで来たんだよ!!」
なんて言いやがった。
今思い出しただけでも腹が立つ。殺してやりたい。そう思った。
もちろん、そう思ったのは俺だけではない。ウミもその場にいたのだ。
突然の両親の死による悲しみを通り越して、その男を恨んだ。恨んで、激怒した。
俺らは同時にその場で狂ったように暴れ出し、その男に殴りかかった。警察や親戚の人達が必死に止めていたようだが、止まらない。見境が無くなっていた。
この男だけは…この男だけは許さない。
そう、頭の中でこだましていた。
暫く暴れて、沢山の警察に取り押さえられて、俺たちは大人しくなった。
その時にいた一人の警察、小泉奏輔…もとい奏兄さんが言った。
「辛かったな、辛かっただろう。君達の気持ちは痛いくらいに分かる。俺も君達と似たような事件に巻き込まれた事があるからね。でも耐えるんだ!後は俺達に任せて耐えてくれ!この世は暴力では勝てない事の方が多いんだ。君達はまだ幼い。まだ弱い!!故に君達だけではあの場所では勝てない。だから俺に手助けをさせてくれ。絶対に!君達の無念を晴らしてやる!」
俺らの頭をわしゃわしゃと撫でて、思い切り、力強く、安心のできるその腕で抱きしめてくれた。
その時初めて、両親が死んでから涙が零れた。ぼろぼろと。
二人同時に、えぐえぐと、涙で顔を濡らし、ぐしゃぐしゃになりながら。
俺らが泣き疲れて眠りにつくまで小泉さんは、ずっと抱きしめてくれていた。
学校へ行く準備も終わり、俺らの毎日の日課となっている両親への『いってきます』の挨拶。
その時にあの頃の事がたまに思い出せる。辛くとも忘れない記憶。
あの事故は奏兄さん達が必死に動いてくれたお蔭で男は有罪判決、多額の賠償金を背負う事となった。
その後の俺らのアフターケアも当然のように行ってくれた。
毎日俺らの家に訪問しては学校へ行く準備も手伝ってくれた。
奏兄さんの時間が出来た時は学校まで迎えに来てくれたり、食事にも連れて行ってくれたりした。
身寄りのなくなった俺達を、まるで自分の子供のように育ててくれた。
今でも何かと俺らの世話を焼いてくれる。本当に、どこまでも良い人だ。
今は七時三十分。もうそろそろか…
《ピンポーン…》
「あ、奏兄さんだ。」
ウミは玄関の方に駆けていく。俺もそれに続く。
玄関の扉を開けるとそこには、黒髪短髪の好青年が立っていた。顔は中の上と言ったところか。イケメンな方だと思う。
「おっす!なんだ、今日も元気そうだなお前らは!」
そう言って俺たちの方を見てへらりと笑う。
「奏兄さん、はよ。」
ススス…とウミは奏兄さんに近づき、抱きつく。…いや、へばりつくと言った方がしっくりくるか。
「おいおい…ははは…ウミはいつまでたっても甘えん坊だなぁ…」
へらりとした顔が今度はへにゃりとなる。へらりからへにゃりに進化したのだ。
…ん?分かりづらい?…まぁ、簡単に言うとデレ顔だ。
だって心なしか奏兄さん、鼻の下が伸びているような…そんな感じ。
「奏兄さん、はよ。本当、いつも早いよね。」
俺も若干遅ればせながら挨拶をする。
「まぁ俺も一応、お前らの保護者みたいなもんだからな!リク、お前も俺の胸に飛び込んで来るか?ちゃんと抱き留めてやるぞ!」
右手でウミを抱き留めているので、残っている左腕を広げて俺を待ち構える。
なので、俺はその広げられた奏兄さんの手を取り握手をする。
「あ、あれ?リク君?なんで握手?」
「今日十七になる男がデレデレしながら妹の頭を撫で繰り回している男の胸に飛び込むなんて、気味が悪いだろ…。」
困惑する奏兄さんに対して軽い毒舌付きの突っ込みを入れる。
そう、俺達は今日が誕生日なのだ。
だからもうそろそろ親離れならぬ兄離れの準備もしていかなくては。
それに、玄関先でやってるから知らない人が通ったら奇妙な事この上ない光景だろう。
…ていうか、俺達より奏兄さんの方が俺達離れ出来ていないと思うが。
「そ…そうだな…お前の言う通りだわ…すまん…。」
俺の言葉にショックを受けたのか、ちょっと悲しそうになった。
「ま…まぁ、早く上りなよ奏兄さん。まだ仕事行くのには早いんでしょ?」
立ち話もなんなのでとりあえず家に上がってもらい、色々と世間話をする。
…とはいっても奏兄さんは今結構位の高い刑事さんだ。
色々と現場に言ったりしているらしい。
警察ってあまり外部に情報を漏らしちゃいけないのでは?とか思うところはたくさんあるが、今さらである。
当然、彼から聞いた情報を俺たちは他の人には話してはいない。
それこそ、彼がどれほどに口が軽いかと思うほどだ。
まぁ実際は奏兄さんも俺達以外には口が堅い方だとは思うんだけどね。