表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生チート?オンライン  作者: しぶすん
アナザーワールド
11/41

10

すると、ズガッ!という音とともにライトの右手に確かな手応えが伝わり、青狼は数メートル吹き飛んでいき、二度三度と地面をバウンドしたところで動きを止める。

だが動かなくなってもウルフのHPはゼロになったわけではない。ライトは油断無く狼を見据えながら、額に(にじ)む仮想の汗を袖で拭う。

狼のHPバーを確認すると、今の斬撃はどうやらそこそこの威力があったらしく、約5分の1程が減少していた。



ウルフはしばらくジタバタと地面をのたうちまわると、ゆっくりと起き上がり、「グルルル……」と喉を鳴らしながら黄色の光を(たた)えた(そう)(ぼう)でライトを()めつける。

立ち上がりつつもウルフは先程のようにいきなり襲いかからず、警戒音を鳴らしながらじわじわとライトの様子を伺いながらにじり寄るのみで、どうやら今の一幕で多少は慎重になったらしい。



「……ッ!」



それからしばらく(こう)(ちゃく)状態が続くと、先に痺れを切らせた狼が一度体を沈め、「グルァッ!」という短い声を残すとライトに向かって猛然と駆け出す。



「うぐっ!?」



ウルフの突進攻撃が最初に走り出してたところと同一方向にしか勧めないと当たりを付けたライトはタックルを躱そうと横に飛ぼうとするが、突然狼の脚が黄色い光を纏いそれに弾かれるように狼が加速し、それにより回避のタイミングに致命的な誤差を生じさせてしまったライトの鳩尾(みぞおち)にウルフの鼻先が突き刺さる。


その威力にライトの体が宙を舞い、背中から地面に墜落すると更にウルフがライトの上に乗り、その鋭い爪を振り下ろす。



「このっ……!」



ライトはその爪が肩にヒットし、肩から胸にかけて赤い爪痕が刻まれると同時に狼の腹に右足を振り上げ蹴り飛ばす。

すると、狼はキャインッ!という犬のような鳴き声を発して飛んでいき、広葉樹の幹に強かに打ちつけられる。



「はぁ……」



ライトは立ち上がり剣を拾い上げると、先ず視界上部のHPバーを確認。今の一連の攻撃で二百減少し、残りが九万になっていた。

狼の方のHPバーを確認すると、こちらは随分減っていて、丁度真ん中あたりで帯の色を緑から黄色に変えていた。

武器を使わないただの苦し(まぎ)れの蹴りでこの派手な減り方は恐らく攻撃がヒットした腹部が弱点なのであろうか。


と、様子を伺いながらそんな仮説を立てている間にウルフは立ち上がりライトを(にら)みつけると、音高く遠吠えを始めた。



「チャンス!」



そんなまたとない攻撃のチャンスにライトはウルフに向かって駆け出し、ウルフの眉間に全体重を乗せた刺突(しとつ)を放つ。

そしてそれは見事にウルフの眉間(みけん)を捉え、狼のHPバーは全体の五分の一程度になり黄色から赤に変わる。


余談だが、HPゲージはプレイヤーもモンスターも変わらず、緑が通常時フル回復から中央値を示し、黄色が中央値からウルフのような五分の一までのHPを現象を警告する警告域。そして五分の一の地点からはゲージの色は赤く染まり、HPが尽きる寸前だということを示す危険域だということを伝える役目を持っている。

このHPゲージの変化は、ライト達プレイヤーにモチベーションの維持やモンスターの挙動の変化などの判断の面で様々な(おん)(けい)をもたらす。最も、それは必ずしもいい方に転がるかと言われると素直に頷きづらいことでもあるが。




「ハッ!」



ウルフが()()っている隙に剣を引き戻し、(あら)わになったその喉元に今度は腰を回転させた全力の突きを放つ。

すると、ギャン!という断末魔の叫びとともにウルフのHPバーが全ての色を失い、その体が赤い光の粒子となって四散した。






「……はあ~~~…………」



しばらく突きの体勢のまま呆然としたのち、大きく息を吐きながら脱力する。

ようやくライトにとって初戦闘が終わった訳だが、彼が予想していたよりも精神的な疲労が溜まる。

だが、素人にしては中々上手く立ち回れたのではなかろうか。

内心でそんなことを考えながらヒュンヒュンと左右に剣を振り払い、ゆっくりと背中の鞘に戻すと、空中に白いホロウインドウが出現する。

そこには、EXP+100とsil+2000という黒い文字列と、OKと書かれた赤いボタンが表示されている。



「わっ!?」



恐る恐るライトがその赤いボタンに指先を触れさせると、ウインドウが大きく≪Level up!≫と、そしてその下に≪1→3≫と書かれたものに変わり、その場にファンファーレが響きライトは驚きの声を上げてしまう。



「びっくりした……さっきのはリザルト画面だったのか……」



EXPが経験値だとして、もう一つの方はこのゲームでの通貨だろうか。silとの表記なので、シルとでも読むのだろうか。



「……ん?」



ライトがOKボタンをクリックすると、先程ウルフがその姿を散らせた場所に小さな光の玉が落ちていることに気がつき、ライトはゆっくりとそれに近づく。

そしてそれにちょんと指先を触れさせると、しゅわっ!という効果音とともに手の中に黄金に陽光を跳ね返す動物の牙のようなものが握られていた。



「≪青狼の金牙≫?」



手の中に入っていた牙に指先を触れさせ、プロパティ・ウインドウを展開し、そこに表示されている恐らくアイテム名であろう部分を読み上げる。

どのようなアイテムかはライトには分からないが、何かの素材になるようだしとりあえず持っておいて損は無いだろうと判断し、ライトはプロパティ・ウインドウを消すと合わせて現れていた小さなウインドウをクリックする。

すると、手の中の牙はライトのアイテムストレージに格納され、一瞬のうちにその姿を消していた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ