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零れ話 高校に上がると濃い人が多くなる

 本編ではないため、若干作者の螺子が緩んでいます。


「おい清家。神城は?」

「寝てる」


 吉田に聞かれて隣の布団を見てみれば、神城は肩どころか口元辺りまで布団をかぶって既に夢の中だった。自転車抱えて山登りをしたわけだから、疲れているのかもしれない。


 キャンプファイアーも無事……かどうかは定かでは無いがとにかく終わり、俺達は一クラスまとめて大きな部屋に押し込まれ、布団を並べて就寝の準備をしている。言うまでも無く部屋は男女別だ。

 いきなり神城が美藤につられるようにあの状況で出て行ったのには驚いたが、「おまえも来い」と国生に引っ張り出されたときは軽くパニックになった。


 単純に恥ずかしいというのもあるが、俺はどうも女性恐怖症の兆候がある。恐らく中学時代の同級生が、口下手な俺をからかいまくったのが原因だろう。

 国生は男っぽいから割と平気だが、それでも身構えはする。というより、あの状況で大して親しくも無い俺を引っ張り出すとは、国生は何を考えているのか。

 ……何も考えてない可能性が高いな。


「寝るな! 寝たら死なすぞ!!」

「グホォッ!?」


 いつの間にか寝ている神城に近付いていた吉田が、殺害予告をしながら寝ている神城の腹に飛び乗る。布団の両端が勢いよく浮かび上がったので、その下の神城の体は見事にくの字に折れ曲がっている事だろう。


「ぼ、ボディ? 倒れている相手への攻撃は反則!?」

「ここは戦場だ! ルールなど存在しないぞかっしー!」


 慌てて起き上がりながら臨戦態勢に入る神城に、吉田(阿呆)がビシィっと人差し指を向ける。

 どうでもいいが「かっしー」というのは神城の事か。吉田が「よっしー」だから多分そうだろうが。


「何よっしー? 殴られたいの? ボクサーの拳が法律で凶器扱いって嘘なんだよ?」

「なんか神城が黒いぞ!?」


 流石に人懐っこい犬のような神城でも、寝ているところを強襲されると機嫌が悪くなるらしい。普段からは想像できない凶悪な顔でシャドーボクシングを始め、それを見た吉田の友人の杉田が悲鳴のような声を上げている。

 しかしボクサーの拳が凶器扱いになろうがなるまいが、傷害罪は傷害罪なんだが。


「怯むな! 奴ら以外の男子は全員しっと団に加入している。数の前にはちびっこボクサーも無力だ!」

「ちびっこ言うなあぁっ!?」


 いつの間に俺はそんなわけの分からん団体に所属していたのだろうか。それとも俺は神城と一緒に敵とみなされているのか。

 というか神城はそんなにチビでは無いと思うのだが。まあいつも一緒に居る女子二人よりは小さいが。


「では裁判を始める。死刑!」

「いきなり!? 弁護士は!?」

「蔵田!」

「死刑!」

「弁護してないし!?」


 吉田に弁護士として指名された蔵田が、即座に神城に向って死刑判決を下す。

 何だこの状況、というかこいつら。いつのまに俺の静かだったはずのクラスは、吉田と愉快な仲間たちによるコント集団になったんだ。


「まだ分からないのか神城。俺達が何故怒っているのか!?」

「むしろ僕が怒って良い状況だと思うんだけど」


 確かに。


「国生さんと付き合ってないのは一億歩譲って信じたとしても、何だあの美藤さんとの間に発生したプラトニック・ラブ空間はーーーー!? ぶっちゃけ羨ましいんだよコラァッ!」

「いや、何だと聞かれても。というかよっしーだって委員長と踊ってたよね?」

「俺は些細な事でおしおきしてくるような、もっとキツイ性格の子が好みなんだよ!」

「うわあ……」


 吉田の魂の咆哮に、神城含めた数名が吉田から距離を取る。どんな人生を送れば、高1でそんな道に目覚めるんだ。


「そういう意味では国生さんみたいな……国生さんと言えば清家ーーーー!?」


 飛び火した。もう帰りたい。

 しかし林間学校中に脱走するわけには行かないし、避難するにしても就寝時間を過ぎているので外に出るわけにもいかない。


「何でおまえが国生さんと仲良さげなんだ!? どこでフラグを立てた!?」

「知らん」

「ああ、何かカナタさんに雰囲気が似てるから、気になったらしいけど」


 そういう事は黙っていろ神城。今のこいつはどんな情報を与えても爆発する。


「このむっつりが! おまえみたいなスカした奴に限って、いつの間にかしれっと彼女作ったり結婚しちゃってたりするんだよ!」

「なん……だと?」

「やはり清家もか!?」


 ダメだこいつら。早く何とかしてくれ。


・場面転換(収拾がつかなくなったともいう)


「……やっぱり美藤さんと神城くんって」

「えーでも国生さんと……」

「だれか聞いてきなよー」


 何というか、普段も居心地が悪いが今日は一段と悪い。何だこの修学旅行の夜みたいな雰囲気。

 原因はヒソヒソと話している委員長含む五人ほどの集団と、それを完全に無視して寝てるカナタなんだが、きっかけが私なだけにカナタに文句も言えない。

 まあこの場で婚約者だとか一緒に住んでるだとか漏らしたら、その瞬間にクラスの女子全員に知れ渡り、三日で学年全体に広がるだろうから下手な事は言わない方が良いんだろうが。


「だから委員長がよっしーとさー」

「だって何かくやしいじゃん!」


 いつの間にか話題変わってるし。

 何だ? 何がどうなって委員長と吉田の話になったんだ? どうせ大した話じゃないだろうけど、聞き逃したとなると何でか無性に気になるぞ。


「告れば? 吉田って馬鹿っぽいからすぐ飛びつくかもよ」

「えーだって吉田ってよく国生さんの方見てるし……」

『……』


 何だこの状況?

 何故か吉田が私を見ているという話になったら、委員長含む五人に一斉に見られた。というか恋バナに巻き込まれるとしたらユーキだと思ってたのに、吉田だと?


「……吉田ってどんな奴だっけ?」

「酷!?」

「鬼や! ここに鬼がおるで!」


 とりあえず正直に吉田について答えたら、委員長がショックを受け、黄桜という女子が何処かへ向かって叫び始めた。いや、本当どこに何を報告してんだおまえ。


「もしかして、国生さんって実はあんまり恐くない?」

「というか私のどこが恐いと思ってたんだ?」

「え? 髪派手だし」

「口悪いし」

「でかいし」


 私の疑問に、青山、黒川、桃井の三人が、遠慮とか配慮とかと忘れてはならないものを一瞬で捨てて答えてくれる。というか桃井だけニュアンスが違う気がするんだが。


「だけど吉田の事は聞き捨てならーん!」

「おっと」

『あ”っ』


 委員長が投げてきた枕を反射的に弾いたはいいが、軌道のそれた枕は狙ったように寝ているカナタに命中した。

 同時に声を上げる委員長と私以外の四人。そういえばカナタも結構クラスで避けられてるよなー。別にそんなに恐くな……。


「……」

「……か、カナタ? 目つき悪いぞ? いや、元から悪いけど」


 夜叉降臨。

 多分目つきが悪いのは、眠いから半目になってるだけだろうけど、何かヤバイオーラが出て、背後に寺の門の両側に居る像みたいな幻覚が見える。

 あの像なんて言うんだろう。今度ユーキに聞いとこう。


「誰?」

「何が?」

「委員長と国生さん」

「何が!?」


 端的過ぎて意味の分からない質問に聞き返すと、黒川がいきなり私と委員長の名前を答える。

 委員長は名前じゃないけどな。そういえば名前何だっけ委員長。


「……」

「いてっ!?」

「いたぁ!?」


 黒川の答えを聞いたカナタは、数秒考えた後に頭に当たった枕と頭に敷いていた枕を両手に掴むと、私と委員長の頭に投擲してきた。

 そして命中を確認するなり再び布団にもぐりこむ。……今のは要するに、自分に枕を当てた仕返しか?


「とりあえず、寝たカナタは起こすな」

「ことわざみたいやね」


 私と黄桜のやり取りに、委員長達だけでなくクラスの女子全員が頷く。

 しかし意外に寝起き悪いなカナタ。普段のカナタなら、人に危害を加えることはまず無いんだが。

 ユーキは知ってんのかねえ。


・場面転換(という名の仕切りなおし)


「それで、田んぼ三兄弟は結局どうしたいの?」

『誰か田んぼ三兄弟だ!?』


 うんざりしたような神城の言葉に、吉田、蔵田、杉田がシンクロツッコミを入れる。

 そういえば全員田の字が入ってるな。よく気付いたな神城。


「簡単だ。国生さんとの仲を取り持て」

「な、なんだってー!?」

「しっと団を裏切るのか副団長!?」


 副団長だったのか吉田。というか団長は誰だ?


「……無理だと思うけど」

「何だと!? やっぱりおまえ!」

「だって好みのタイプが落ち着いた文学系の年上だよ? よっしー何一つ満たしてないし」


 何ともまあ。てっきり「自分より強いやつ」というお約束かと思ったんだが。

 心理学では自分とは正反対の性格の異性に惹かれると言われているらしいが、国生もそういう事か。


「俺のどこが落ち着きが無いんだあぁっ!?」

「今正に落ち着きが無いよ」


 頭を抱えて絶叫する吉田に、冷たい一言を放つ神城。

 もしかしなくても凄い怒ってないか神城? 寝ているところを起こされたからか、それとも国生を紹介しろといわれたからか。とにかくあまり刺激しないでおこう。


「ならば仕方ない! この際美藤さんで妥協――」

「死ねェ!!」

『吉田ーーーー!?』


 神城がキレた。

 体当たりのような右ストレートを食らった吉田が声も無く崩れ落ち、その両側に居た蔵田と杉田が悲鳴のように吉田の名を叫ぶ。


 この反応からして、神城の本命はやはり美藤か。

 しかし見事なキレっぷりだな。これまでの過程でストレスが溜まってたせいだろうが。


「妥協って何様というかカナタさんは僕のだー!!」

「落ち着け!!」

「ダメだ! 頼んだ柔道部のボス!」

「仕方な……グホォッ!?」

「ボスがやられたー!?」


 何気に重大発言をしている神城に、ボスこと本名坂本が顎を綺麗に打ち抜かれて沈む。

 坂本の体重軽く100キロ越えてそうなんだが、一撃で沈めるとは当たり所が悪かったのか、それとも気力MAXで攻撃力が上がってるのか。


「……寝るか」


 神城としっと団(他の男子)が乱闘しているのを放置して、布団を部屋の端っこに移動させると寝る事にした。

 起きたら元に戻ってるといいなあ、この馬鹿軍団。……無理だろうな。



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