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美咲ちゃんはちっちゃくてカワイくて、そしてとっても早い  作者: 青夜


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7/8

一緒にいること

 中学に上がり、俺は遊ぶことよりも勉強に夢中になった。

 美咲も勉強が好きで、よく一緒に互いの家で勉強をするようになった。

 小学校五年生の時のあの誕生日以来、俺たちは二人でいられる方法を求めたのだ。

 それが「勉強」だった。

 楽しく遊ぶことよりも、互いに一緒にいられること。

 俺たちは勉強をすることで、毎日一緒にいられた。

 また美咲と一緒の楽しい時間が流れた。

 二人で夢中で勉強をやり、その結果自然と成績はトップになっていった。

 それは少しずつ俺たちの環境を変えて行った。

 美咲が時々感情を爆発させることで、周囲から「佐伯台風」と呼ばれ敬遠されていた。

 美咲は無意識でそうなってしまうので、後から本当に後悔し、反省し、周囲に謝っていたが周りの人間はちょっと嫌がっていた。

 学校の先生たちも困っていた。

 乱れる美咲を落ち着かせようとするのだが、そうなった時の美咲は誰の言葉も聞かない。

 かろうじて俺が宥めると少しだけ和らぐのだが、感情が落ち着くまでは泣き喚き、時には酷い言葉も吐く。

 俺も鎮まるまでは慰めることしか出来ないでいた。

 落ち着いてから必死に謝る美咲が可哀そうでならなかった。

 自分ではどうしようも出来ないことを俺は分かっていて、それだけに俺も苦しかった。

 それが成績優秀になることで、少しずつ美咲が周囲にも認めてもらえるようになった。

 時々は感情を爆発させるのだが、本来の美咲が優しく明るい人間なのだと分かって来てくれた。

 まだ美咲を嫌う人間もいたが、それは仕方がない。

 それと、俺が毎回美咲を宥め、いつも一緒に勉強をしていることが広まると、女の子たちが俺と距離を置くようになった。

 美咲の感情の乱れが俺と他の女の子とのことを気にしていることが俺にも分かって来て、状況的には良くなったのだと思う。


 学校では男女で付き合い出す連中も出て来た。

 南野や他に数人に告白もされたが、俺は交際する気は無いと断った。

 俺と美咲はそういうこともなく、ただ一緒にいた。

 男女の付き合いというものが少しずつ分かっては来たけど、俺たちはそういう関係にはならなかった。

 でも、一緒に家で勉強し、時々一緒に外に出掛けたりした。

 今思えば、あれは付き合っているのと同じだった。

 お互いにそれに気付いてはいたが、どちらも「付き合おう」とは口にしなかった。

 俺たちはあまりにも近い存在だったのかもしれない。

 それこそ、ずっと前から交際していたかのような。

 もうそうなってしまっていたので、却って「付き合おう」とは口に出せなくなっていたのかもしれない。

 それと、これは俺の漠然とした不安だったのだが、「付き合う」ということは「別れる」ということに繋がっているような気がした。

 俺は何かを感じていたのかもしれないと後から思う。

 美咲のことは大好きだったのだが、その不安が俺に美咲との一線を引かせていたような気がする。

 別れたくないから、まだ付き合わない。

 付き合わなければ、このままずっと美咲と一緒にいられるような気がした。

 俺は美咲のことになると、本当に憶病だった。

 でもお互いの両親は俺たちが付き合っていると思っていたようだ。

 俺たちも否定はしなかった。

 一緒に勉強をし、時々一緒に遊びにも出掛けた。

 映画を観たり美術館へ行ったり、動物園や水族館。

 駅に行くと必ず『サライ・イズコ』に寄ってリボンを買い、他のものを観て楽しんだ。

 あの綺麗な女性の店長さんが、毎回俺たちが行くと喜んでくれた。

 お金の無い俺たちはたまにリボンを買い足すくらいだったが、いつも楽しく話した。

 近所を歩くだけで俺たちは楽しかったし、だから登下校も毎日楽しかった。

 だけど普通の付き合っている男女のように手をつないだり、ましてキスなどもしなかった。

 毎日がデートのようなものだったが、俺たちは付き合ってはいなかったのだ。

 ただ互いが傍にいることで幸せだった。


 俺に一つの趣味が出来た。

 料理だ。

 美咲が美味しいものを食べると楽しそうに笑うので、自然に俺も作りたくなったのだ。

 最初は美咲の誕生日に作ったケーキだった。

 チーズケーキで、お袋が教えてくれた。

 分量を正確に測れば誰でも作れる簡単なケーキ。

 でも美咲が本当に嬉しそうに俺にお礼を言ってくれた。

 それが切っ掛けで、普通の料理も勉強して行った。

 互いの家に行き来していたので、そういうことが出来た。

 ちょっとしたお菓子やケーキから、パスタ、そこからいろいろな料理を作るのが楽しくなった。

 いや、美咲が喜んでくれ美味しそうに食べるのを見るのが好きだったのだ。

 だからどんどん色々な料理を覚え、またより美味しくすることが俺の楽しみになった。

 まあ、美咲は一緒に作ることはほとんどなく、嬉しそうに食べるだけだったが。

 高校も一緒になり、地元で優秀な進学校へ入った。

 毎日俺が美咲の分もお弁当を作るのが習慣になった。

 美咲と俺がいつも一緒にいて仲良くしているので、周囲からも当然俺たちが付き合っていると思われていた。

 また否定もせずに、俺たちはただ一緒にいた。

 俺は背が伸びて美咲は小さいままだったが、美咲は誰よりも可愛かった。


 高校でも俺たちはずっと成績トップで、大学も一緒合格した。

 東京大学で俺たちは共に医学部に受かり、お祝いだと俺たちの両親は2泊の温泉旅行を計画した。

 お互いの家族で出掛けたり食事はしょっちゅうだったが、泊りがけでの旅行は久しぶりだった。

 やっぱり親たちは俺たちが恋人同士だと思っていたようだ。

 でも、俺も美咲もそういうんじゃなかった。

 仲良しでこの世で大切な人間同士ではあったので、敢えて否定もしなかったが。

 だけど俺も美咲も「付き合う」ということを流石に意識するようになっていた。

 それがあまりにも近くにい過ぎていたので、却ってお互いに踏み込めないでいた。

 ぼんやりとした不安のようなものがそこにはあった。

 実際にはもう付き合っているようなものだったが、言葉にすることは躊躇われていた。

 自分たちはもうこれでいいとさえ思っていた。

 美咲と一緒にいられるだけでいい。






 本当にそう思った。

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