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美咲ちゃんはちっちゃくてカワイくて、そしてとっても早い  作者: 青夜


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美咲の日記

 美咲は自分が戻った僅かな時間で、懸命に俺への言葉を綴っていた。

 恐らく一日の中でもほんの短い時間のことであり、その時間を使って日記を書いていたのだろう。

 俺やお母さんの目があって、それが出来ない場面もあったことと思う。

 それに途中で意識が入れ替わったせいだろうが、幼い美咲の落書きもあった。

 何とか自分が消える前に紙を仕舞おうと苦戦した跡もあった。

 でも一生懸命に自分が死んだ後の俺のことを思って、書いてくれたんだ。

 時間が無かったために、長文は書けなかったようだ。

 だから、一部は日付をまたいで続く文章にもなっていた。

 飛び飛びの記憶だったはずだが、美咲は俺のためにそうやって自分の思いを続ける文章にしてくれていた。

 自分の死を目の前にしながら、俺のためだけに綴られた文章。

 悲しみも無力感も絶望もあっただろうに、そのことは一切触れずに、ひたすら俺への思いを綴ってくれていた。

 どんな思いでそれを書いていたのかを思えば、俺は堪らない。

 美咲の遺した日記を読めば、もっと美咲のためにああすれば良かった、あれもしてやりたかったと無数に後悔が重なって行く。

 俺は何も出来ないままでいたのだとと思う。

 美咲のために懸命になろうとしていた俺は、まったくの無力だったのだ。

 最期まで美咲の本当の心を知ってやれなかった自分を悔やむ。

 申し訳ないと思う。


 美咲のお母さんにも読んで頂いた。

 俺たちのマンションにお呼びし、この紙を見せた。

 お母さんは途中で大泣きし、美咲の名を呼んで顔を覆った。

 そして何とか心を落ち着けて、最後まで読まれた。

 俺は用意していたコピーをお渡しし、お父さんにも読んで頂いた。


 その後、俺は美咲の墓に初めて詣でて美咲に感謝した。

 俺に最後の日記を残してくれたことに本当に感謝した。

 あれが無ければ、俺はまだまだ美咲の死を引きずっていたかもしれない。

 美咲の墓にも詣でることは出来なかった。

 美咲の心が俺の心の奥に宿った。

 俺たちはいつまでも一緒にいると思えた。

 美咲、お前のお陰だ。





 6月21日

 タカちゃん、これを読んでいるのは私が死んじゃった後だよね?

 私はもう何も出来ないけど、せめてこれを残そうと思う。


 6月22日

 タカちゃん、悲しまないで。

 タカちゃんには話せなかったけど、時々は私が意識の前面に出られることもあったんだよ?

 でもタカちゃんに話せばタカちゃんは子供のわたしじゃない私を探しちゃうからね、黙ってた。


 6月23日

 子供のわたしも「私」だから。

 そうみんなで話し合って決めたんだ。

 だけど私はタカちゃんに何かを残しておきたかった。

 (文字ではない落書き)


 6月24日

 死んでしまうのは残念だけど、タカちゃんのことが本当に好きだったからもういいの。

 愛してる、タカちゃん。

 最後に迷惑を掛けちゃってごめんね?

 でも、タカちゃんが結婚してくれたって聞いて本当に嬉しかった。


 6月25日

 タカちゃんのお嫁さんになることが私の夢だったから。

 こうして本当にタカちゃんと一緒に住んでずっと一緒にいることが出来た。

 だからもう十分に幸せ。

 (文字ではない落書き 人のようなもの)


 6月27日

 タカちゃんがずっと一緒にいてくれて嬉しいよ。

 (文字ではない落書き 花)


 6月28日

 子供のわたしが見聞きしたことは全部知ってる。

 タカちゃんは優しいね。

 (文字ではない落書き)


 6月30日

 ありがとう、タカちゃん。

 私はもうこれでいいんだよ。


 7月1日

 子供の頃からずっと一緒だったよね。

 毎日タカちゃんと一緒にいられて、私はいつも幸せだったよ。


 7月2日

 タカちゃんが選んでくれたあのリボンは一生の宝物になった。

 他にもいろいろなものをもらったけど、あのリボンが一番。


 7月2日

 あれから一杯買ったよね?

 何度もあのお店に通って、一生使える分を買った。

 (この日は2回意識が出て来たらしい)


 7月3日

 私があのリボンを好きなのは、タカちゃんの瞳と同じ紫色だったから。

 その色をタカちゃんが選んで私にくれたから。

 ああ、嬉しかったなー!


 7月4日

 タカちゃんの全部が好きだけど、一番はやっぱりタカちゃんの瞳が紫色だから。



 7月5日

 タカちゃんは違うって言ってたけど、私にはいつもそう見えたよ?

 なんでかな、おかしいね?

 (文字ではない落書き 花)


 7月7日

 でも、私にはきっと運命の色なんだって思う。

 私にとって特別な人だから、タカちゃんだけにそう見えたんだよ。

 あ、今日は七夕だね!

 (落書き 「た」)


 7月10日

 そうだ、タカちゃん、毎日美味しい物を作ってくれてありがとう!


 7月14日

 橋田先輩が『むらさきいろの目の王子さま』を描いたって聞いてびっくりしたよ!

 先輩のこと、大事にしてね。

 (一部美咲の文章に黒い線が引かれている)


 7月16日

 あ、そうだ、最初の夜にタカちゃんが作ったお話!

 面白かった!

 アハハハハハ!

 (文字ではない落書き 花)


 7月20日

 ああ、もうすぐ私は死ぬって分かる。

 これからははしだ


 7月22日

 段々表に出れなく

 (文字ではない落書き)


 7月28日

 タカちゃん、愛してる。

 世界で一番好き!

 ありが





 そこで美咲の文章は終わっていた。

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