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美咲ちゃんはちっちゃくてカワイくて、そしてとっても早い  作者: 青夜


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もう一人の「私」

 タカちゃんがヘンなお話をしてくれた。

 頭を撫でられて、徐々に意識が戻った。

 最初はボウっとしていたけど、少しずつ状況を理解して行った。

 私は突然子供に戻っていたようだ。

 幼児化した自分の見聞きしたことはちゃんと覚えている。

 その記憶から、自分が幼児化したことを認識して行った。

 何でそんなことになったのかは分からないが、自分がそうなったということだけは分かってる。

 不思議なほど、自分ではそう驚いてはいない。

 どこかでこうなることを知っていたような気もする。

 なんでだろう?

 頭の中に霧のようなものが覆っているせいだろうか。

 それでも段々と思い出して行く。


 まず、タカちゃんと結婚した!

 スゴイことだぁ!

 今日からタカちゃんと一緒に暮らしているのだ!

 タカちゃんがおいしいシチューを作ってくれ、ご飯も美味しかった!

 そして……お風呂に一緒に入った……

 裸をタカちゃんに見られたよー!

 幼い体形だってタカちゃんに思われたかな。

 タカちゃんの裸も観ちゃったけど。

 結構逞しい。

 痩せているけど、やっぱり男の子の身体なんだ。

 タカちゃんに全身を洗われ、クリームも塗ってもらった。

 恥ずかしいよー!

 タカちゃんがちょっと興奮していたことも分かったけど、私が子供になってるので何もしなかった。


 タカちゃんは優しい。

 私が子供になっちゃってもちゃんと受け入れてくれてる。

 どうしてだろう?

 一生懸命におかしな話を考えて聴かせてくれた。

 話が終わってから、私も自分の意識がはっきりしてきた。

 頭が少し痛い。

 タカちゃんは隣で眠っている。

 私が意識を取り戻したことを知らない。

 私はどうして子供になっちゃったんだろう?

 タカちゃんにちゃんと戻ったことを話そうとした。





 (ダメ!)


 頭の中で声が響いた。


 (え、だれ?)

 (わたしだよ、あなただよ)

 (え?)


 私は自分が何人もになったことを分かっているのを感じた。

 おかしなことなんだけど、私は当然のように受け入れていた。

 もう一人の「わたし」が本当の自分なのだと理解していたのだ。

 30歳の「私」と幼児の「わたし」と今私に話し掛けている「私」。

 話し掛けている「私」は、幼児の「わたし」と強く繋がってる気もする。

 何かパイプのような、道のようなものがあり、それぞれと通じている。

 強い繋がりは、そのパイプの太さや道の広さとして感じているのだ。

 そして、どれも「私」だ。

 自分が同時にいることを私は自然に受け入れて怖くはなかった。

 全て自分だと分かっていたからだ。

 共通する大事なことがあった。

 私はタカちゃんが大好きなのだ。

 今、幼児になった「わたし」もいる。

 話し掛ける「私」が言った。


 (わたしたちはもうすぐ死ぬの)

 (!)


 話し掛ける「私」が言っていることが本当だと、今の私には理解出来た。

 理由は分からないが、私はもう長くはないのだと知った。


 (タカちゃんはそれが分かって結婚してくれたの)

 (え、どういうこと!)

 (さいごまでわたしといっしょにいてくれるためだよ)

 (タカちゃん!)

 (ね、だからあんまりタカちゃんを混乱させないで。意識を取り戻したって知ったら、タカちゃんは困ってしまうよ)


 それは理解出来た。

 タカちゃんがどんな気持ちで幼児化した私と結婚して一緒にいてくれているのかは、何となく分かった。

 タカちゃんが優しいからだ。

 最期まで私を幸せにしようと考えていてくれている。

 だけど、もしも私が戻ったことを知ったら、タカちゃんも喜んでくれるのではないか?


 (でも教えたいよ!)

 (ダメだよ)

 (タカちゃんはきっとどっちの私かいつも考えてしまう。タカちゃんはせっかく覚悟を決めて、子供の私と一緒にいる決心をしたの。私が戻ったら、タカちゃんが苦しむ、そうでしょ)

 

 なんとなく分かった。

 タカちゃんは私との別れを悲しむだろう。

 「私」が言っていることの意味が分かった。

 タカちゃんは混乱してしまうだろう。

 そして私に戻って欲しいに決まっている。

 だからいつも迷って不安になってしまう。

 今は子供の「わたし」を一生懸命に面倒見てくれているのが、私に会いたくて悲しむに決まってる。

 せめて、ずっと子供のままの私であれば、最期まで自分が面倒を見たと思ってくれるに違いない。


 (そうよ。タカちゃんは最後の私の「形」とお別れするの。そうすれば悲しみはやわらぐよ)

 (そうか、そうだね)

 (ね、だからこのままでいよう。タカちゃんのためだよ)

 (うん、分かったそうしよう)

 (うん)


 私はタカちゃんを抱き締めた。

 子供の頃の私は、いつもタカちゃんに抱き着いて寝ていたのを思い出した。

 今の私ももちろんそうしたかった。

 大好きなタカちゃんの匂いを胸いっぱいに吸い込んだ。

 私はもうすぐ死ぬ。

 タカちゃんは最期の時間を私のために作ってくれている。

 もうそれで十分だ。

 タカちゃんを出来るだけ悲しませたくない。

 自分がもうすぐ死ぬことは怖くない。

 タカちゃん、大好き。

 ずっと好き。

 

 



 タカちゃんは目を閉じて眠っている。

 ああ、タカちゃんのあの綺麗な紫色の瞳が観たい。

 でもそれは出来ない。

 私はタカちゃんを愛している。

 私にはそれだけしかない。

 昔も今も、これからも……


 私は再び深い底に沈んで行った。

 

 タカちゃん、愛してる……

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