表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
美咲ちゃんはちっちゃくてカワイくて、そしてとっても早い  作者: 青夜


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/17

結婚初日

 午前中に美咲の荷物が届き、美咲のご両親も来た。

 何度かこの部屋は見ているが、美咲の様子を見たかったのだろう。

 美咲もご両親を見て喜んでいた。


 「美咲、良かったね!」

 「うん! タカちゃんと一緒に住めるんだよ!」

 「そうだね。孝道君、美咲をよろしくお願いしますね」

 「はい!」


 4人で食事に行った。

 近くの和食のレストランだ。

 箸が上手く使えない美咲のために、スプーンを頼んだ。

 店員がすぐに持って来てくれる。

 美咲はハンバーグ定食を頼んだ。

 嬉しそうにスプーンで食べ始める。

 膳に入っているが、時々テーブルに零し、俺が拾った。

 口の周りのソースも拭ってやる。

 美咲のお母さんがそれを見て、微笑んでいた。


 「まるで美咲の子供の頃を思い出したわ」

 「そうですか」

 「孝道君はいつもそうやって美咲の面倒を見てくれてた」

 「大好きですから」

 「はい、ありがとうね」


 食事の後、ご両親は帰られた。

 本当はもっと美咲と一緒にいたかったのだろうが、美咲の気持ちを優先してくれた。

 俺は美咲とマンションに戻った。

 美咲は俺と手を繋いで、しょっちゅう俺を見上げて笑っていた。


 「美味しかったね!」

 「じゃあ、また今度行こうな」

 「うん!」

 

 二人でのんびりした。

 美咲はしょっちゅう俺にくっついて来る。

 実は俺はちょっと不安だった。

 4、5歳の美咲と一緒にいて、どうやって過ごせばいいのかということだ。

 子供の頃から知っている美咲だが、「今の5歳の美咲」はどうやって過ごしたがるのだろうか。

 一応、お母さんに美咲の部屋のものは大体持って来てもらっている。

 俺もよく遊びに行って知ってはいるが、大人の美咲は部屋で本を読んで過ごしていることが多いようだった。

 基本的によく寝る。

 休みの日はほとんど寝ていて、あとは本を読んでいる。

 家族でテレビを夜に観る。

 そんな生活だった。

 子供の頃は二人で何をしていた?

 思い出せない。

 いつも一緒にいた。

 お互いの家で二人で一緒にいた。

 はて、何をしていた?


 美咲の部屋にはぬいぐるみが沢山あったのは覚えている。

 時々、それで遊んだか?

 オママゴト?

 ああ、やった記憶がある。


 「オママゴトしようか?」

 「うん、タカちゃんがしたいなら」

 

 アレ?

 一応やってみた。

 紙皿があったので、それを使った。

 後は本物の鍋釜しかない。

 美咲は俺が食器を並べるのを見ている。

 美咲がどうするのかを見ていたが、俺をジッと見ているだけだ。

 ああ、俺が作るのか。


 「さあ、美咲、スープが出来たよ」

 「わーい」

 「ご飯をどうぞ」

 「ありがとー」


 ちょっとノリが悪い。

 俺のやり方が悪いのか。


 「違うことしようか?」

 「うん!」

 「何かしたいことある?」

 「映画みよう!」

 「そうか!」


 オママゴトから解放されていいのだが、さて、何を観る?

 アニメもあるが、それほどは無い。

 あ、ジブリがある!


 『天空の城ラピュタ』


 二人でソファに並んで観た。

 美咲が俺に腕を組んでピッタリ寄り添っている。

 興奮しているのが分かる。

 楽しいのだ。

 俺はブルーレイを入れて始まるのを待った。

 美咲は嬉しそうだ。

 楽しそうに見ていた。

 時々俺を見て笑った。

 女の子が空中から落ちて来るのをドキドキしていた。

 以前に何度か一緒に観たことはあるが、美咲は忘れているのだろうか。

 

 「タカちゃん!」

 「大丈夫だよ」


 男の子が受け止めて美咲が「よかった」と言っていた。

 そしてそのうちに眠ってしまった。

 病気のせいなのか。

 始まって30分も観ていなかった。

 俺はそっと美咲を抱え、ベッドに横たえた。


 「ゆっくりやろうな、美咲」


 俺はそう声を掛けて部屋を暗くした。

 俺は美咲を起こさないように、届いた美咲の荷物を開いた。

 服と美咲の部屋の物。

 お母さんが細かに仕分けしてくれ、メモも添えてくれていた。

 ありがたい。

 どこにあったもので、美咲がどう使っていたのか、

 化粧用品も一式あったが、俺にはどうしようもない。

 肌の手入れのことが書いてあり、風呂上がりに全身にクリームを塗るとあって困った。

 美咲は自分で出来るだろうか。

 ああ、そういえばお風呂は一人で入れるだろうか。

 トイレは大丈夫だろう。

 そうでなくては困る。

 別に世話をしても良いのだが、美咲が嫌がるかもしれない。


 俺は保湿クリームを見た。

 女の子はこうやって自分を一生懸命に磨いているのか。

 美咲はいつもいい匂いがした。

 この保湿クリームと同じ匂いだ。

 香水は時々しか付けなかった。

 何故だろう?


 夕方になり、そろそろ夕飯を作ろうと準備をしていた。

 美咲に食べたいものを聞きたかったのだが、生憎眠っている。

 だが、美咲の呼ぶ声がした。


 「タカちゃーん! どこ! タカちゃん!」

 

 慌てて寝室に入り、灯を点けた。


 「美咲、ここだよ、ちゃんといるよ」


 ベッドに行って美咲の頭を撫でた。


 「よかった! 起きたらぜんぜん知らないばしょだったんだよ!」

 「ごめんね。でも大丈夫、俺たちの家だよ」

 「え?」

 「ほら、俺たち結婚したじゃん。今日からここで一緒に暮らすんだよ」

 「そっか、わすれてた!」

 「な、だから大丈夫だ。夕飯を作ってるんだ」

 「うん!」

 「シチューでいいかな?」

 「さいこー!」

 「そっか」


 美咲が起きて来て、リヴィングのソファに座られた。

 テーブルの『天空の城ラピュタ』のパッケージを見ている。

 

 「さっき見てたよね?」

 「ああ、途中で寝ちゃったな」

 「また続きをみよう!」

 「そうだな!」


 良かった、美咲はさっきまでの記憶がある。

 こういうことは注意深く見ておこう。

 美咲の変調に気付けるかもしれない。


 野菜を刻んで鳥肉と一緒に軽く炒めた。

 セロリを細かく刻んで先に鍋で煮る。

 沸騰して来たら炒めた肉と野菜を投入。

 灰汁を丁寧に覗いてルーを入れてゆっくりと混ぜて行く。


 「いい匂い!」

 「もうちょっと待っててな」

 「うん!」


 ご飯は合い挽きのソボロのケチャップご飯にしている。

 酒で臭みを摂った挽肉とケチャップを一緒に炊き込んだだけだが。

 それと野菜サラダを作った。

 イタリアン・ドレッシングだ。


 器を持ってテーブルに運んだ。

 4人掛けのテーブルだ。


 「さあ、出来たよ。どうぞ」

 

 俺はシチューをよそって美咲の前に皿を置いた。


 「あ、さっきやったね」

 「あれは練習だからな」

 「そっか!」


 美咲は嬉しそうに笑った。

 ご飯を盛り、サラダの器を置いた。


 「なにこのごはん!」

 「食べられるか?」

 「おいしそー!」

 「うん」


 スプーンを渡し、一緒に食べた。

 美咲はニコニコして夢中で食べていった。

 良かった。


 美咲の精神年齢は幼いが、美咲の中で俺との関係はどうなっているのだろうか。

 全ての記憶が4、5歳に戻ったわけではないのだ。

 多くの記憶が喪われているようだが、俺のことは無条件で受け入れてくれている。

 「結婚」という概念がどうなっているのかは分からないが、それもすぐに受け入れたばかりか喜んでくれた。

 ご両親と離れることにも、今は不安はなさそうだ。

 俺と一緒にいることをひたすらに喜んでくれている。

 何とか一緒に生活出来そうだ。


 美咲が満腹し、俺が片付けている間、美咲はずっとキッチンの俺を見ていた。

 

 「どうした?」

 「うん、なんか嬉しい!」

 「そうか」


 俺は手早く片付けて一緒にソファに座った。

 しばらくテレビを見て、その間に風呂を沸かした。


 「美咲、お風呂に入ろうか」

 「うん!」

 「一人で大丈夫か?」

 「タカちゃん、一緒に入ろう!」

 「え!」


 そうか、5歳児か!

 でも、裸の美咲と……

 嬉しいけど。

 子供の時以来、美咲の裸は見ていない。




 俺の動揺をよそに、美咲はニコニコしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ