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バンドで紡ぐイロトリドリノ音(Heavenly Light)  作者: 緋色
第1幕 悲哀のベースヒーロー
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第4話

その日も夢をみた。

遠い昔の記憶、俺がベースをやるようになったきっかけの記憶。


「ボクベースやる!灯火ちゃんはドラムやってよ!灯火ちゃん太鼓うまいし!」

普段は本ばかり読んでいて、大人しい俺だったがテンションが上がりすぎてそう叫んでいた。


ちなみに太鼓というのは保育園でやっていた鼓笛隊のことだ、幼い俺はドラムをただの太鼓だと思っていた。


「りずむ隊っていうんだって!かっこいいよね!ボクれっどがいいなぁ」

当時、リズム隊の意味も、ドラムやベースの役割もよくわかっていなかった。


ただ、映像に映ったその人物はキラキラ輝いており、本当にかっこよく見えたんだ。


そのあとは日和さんに楽器屋さんに連れて行ってもらい、安くて弾きやすいベースをおすすめしてもらった。

初めて買ってもらったベースは俺の宝物になった。

毎日練習した、指の皮がめくれていたかった。小さな指で大きなベースのフレットを抑えるのに苦労した。


でも不思議と辞めたいとは思わなかった、練習も楽しかったし弾けるようになるたびに日和さんに聞いてもらった。

頑張ったね、すごいねって褒めてもらうのが嬉しくてたまらなかった。



「んん、なっつかしい夢」

軽く伸びをして目を覚ます、夢でみた過去の俺はキラキラと輝いているように思えた。


「よーっし、今日も気合入れていきますか!」

気合を入れなおし、ベッドから飛び起きる。


今日はライブだ、過去の俺が夢みたような最高のライブをやってやろうじゃないか。

「みんな楽しんでくれるといいな」


――

「灯火ー!準備できてるかー!?」

灯火の家に向かい、幼なじみに声を掛けると、灯火のお母さんが出てきた。


「あらあら、雪兎くんおはよう」

「あの子、遅くまで練習してたからまだ寝てるかも。良かったら起こしてきてくれる?」


幼なじみとはいえ、年頃の男の子を女の子の部屋に入れるとは、

信頼されているのか男として見られていないのか、複雑な気持ちで灯火の部屋の前まで来た。


「おーい、入るぞ。いいのか?ほんとーに入るんだからな!」


ガチャっと部屋のドアを開ける、そこには掛け布団を跳ね除け大の字で寝ている灯火の姿があった。

そういえばコイツ寝相最悪だったな。

幼なじみで保育園から一緒だ、その頃から何も変わっていない。


「おい!起きろ!今日はライブだぞ!」


「うぅーん、もう少しぃー」


そういう灯火を起こそうとベットに近寄ると、身体を抱き寄せられてしまった。

「おいっ、マジでやめろ、これは、ヤバいやつだ」


ふんわりと甘い匂いがする、これが女の子の匂いなのだろうか、

柔らかな身体に包まれ、どこか落ち着くような、頭がくらくらする。

ともあれ、これはヤバい、俺の男の子が目覚めそうだ。


ていっ!

鋼の意思でなんとかホールドから抜け出した俺は声を大きくして灯火を起こす。

「んー、もうちょっとだけぇー」と寝ぼけながら、俺の目を見つめる灯火。


そこでようやく頭が覚醒したのか、恥ずかしそうに俺を見ながら頬を染め、……そして殴られた。


「あんたはデリカシーってものが」


「灯火がなかなか起きないからだろ」

理不尽だ、起こしてあげたというのに、灯火は次々と不満を並べてくる。


「2人とも朝食食べていきなさーい」


下からおばさんの声が聞こえる、まだリハの時間には余裕がある。

軽く食べれるサンドイッチを作ってくれたので、ご相伴にあずかる。


「じゃあ今日も頑張ってね、行ってらっしゃい」

そうして俺たちは一緒に灯火の家をでて、ライブハウスに向かった。


これは余談だが、灯火の両親は離婚している。

昔、灯火がかなり落ち込んでいる時期があった。


「パパとママがリコン?するんだって、もう一緒に暮らせないんだって」


「……ボクは一緒にいるよ?だってボクたちはりずむ隊なんだから!」

当時リズム隊を戦隊モノのヒーローのようにでも思っていたのだろうか。


子どもながらに、どうにか元気を出してもらいたかった、一緒にいるんだと伝えたかった。

灯火はその言葉を聞いて安心したような、嬉しそうな顔をしてくれたのを覚えている。

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