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バンドで紡ぐイロトリドリノ音(Heavenly Light)  作者: 緋色
第3幕 独りぼっちギターは誰がために鳴く
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第19話

「おはよう、白河さん」


少し早めに着いたと思ったが、先に白河さんが来ていたようだった。

相変わらず髪はボサボサで前髪は目にかかっている。


それにしても、白河さん小さいな、ギターに背負われているようだ。

失礼なので絶対口にはしないけど。


「中に入って飲み物でも飲んでようか」


「あ、はい」


そのまま2人で休憩スペースに移動する。


そうだ、白河さんに聞きたいことがあったんだった。

「白河さんちょっとだけいい?」


「白河さんのお父さんのバンドってもしかしてこれかな?」


俺がスマホで映像を見せる。

そこにはギターを天高く掲げるギターの男性が映っていた。


「はい、エンドオブヒーロー、お父さんのバンドです」


10年ほど前にインディーズシーンで爆発的に人気となったバンド。

そのままの勢いでプロに転向することになる。

だがプロになったからには自分たちのやりたい曲よりも売れる曲が求められる。


そしてプロになってから伸び悩みはじめると同時に、いやなウワサが流れることとなる。

それがパクリ疑惑。

正直、曲を聴き比べてもそこまで似ているとは思えない。だがウワサが出てしまってはもう止められない。


エンドオブヒーローはパクリバンドだという印象がついてしまったのだ。

そこからは早かった、周りからはパクリバンドとしてウワサは広がり、もはや解散するしかないという状況に追い込まれた。


そして、夢も希望も失った白河さんのお父さんは酒に溺れるようになり……。

そこまでが一般的に知られているこのバンドの顛末だ。


お父さんがそんな状況になっても、白河さんはギターの練習を辞めなかったのだろう。

いつかお父さんの教えてくれたギターをみんなに聴いて貰うために。

お父さんは凄いんだって、世の中に知らしめるために。


「わたしのお父さんはパクリなんてしていません」

白河さんが真剣な顔でボソッと呟いた。



直後、灯火と未来がスタジオにやってきた。


「あ、あの今日はよろしくお願いします」


白河さんが灯火と未来に丁寧にあいさつをする。


「よろしく、改めて俺は天宮雪兎、こっちは三澄灯火と希崎未来、俺と灯火は二年生だから一個先輩かな」

「よろしくね、白河さん」


灯火も挨拶を返す、どこか小動物をみるような感じ、印象は悪くなさそうだ。


「未来は同い年だけど、見たことはないのか?」


未来はぱちくりと瞬きをして、

「まあ、同じクラスではないですねー、クラス違うとなかなか話す機会もないですし」


「あ、わたしは知ってます、中庭ライブすごかったです!」


白河さんが未来を見る目が輝いている、未来はかなり恥ずかしそうだ。

顔が真っ赤になり身もだえている。


「うぅー、あのライブやっぱりみんな見てたんだよねぇ」


そうこうしていると前のバンドが終わったようで練習室から出てきた。


「宜しくお願いしまーす!」


スタジオのスタッフさんに挨拶をして練習室の中に入る。

まあ手慣れたもので、俺はベースのセッティングをはじめ、灯火もドラムの調整を始める。


白河さんも慣れているようで、ギターのセッティングを進めていた。

なんかエフェクターボードを見せてもらったが、俺には何がなにやらよくわからなかった。


「じゃあ、とりあえずやってみますか」


チッ、チッ、チッ、チッ。

ドラムの4カウントから曲に入る。


白河さんもギターを弾き始める。

うまい、ギターに関して俺の曲は特別変わったアレンジはしていない。


だが、白河さんが弾くギターからはとても正確な音が奏でられている。

惜しむべくはテンポだろうか、緊張しているのかやや走り気味だ。


しかしそれ以外は特に問題はない、正直俺は驚いていた。


じゃーん、と曲が終わる。


「ど、どうでしょうか?」


白河さんが自信なさげに聞いてくる。


「うまいよ!めっちゃうまいじゃないか!」


「あたしもびっくりした。さすがだね、すごいうまいよ」


灯火も素直な気持ちを声にする。

白河さんはそれを聞いて、ほっと安心した顔を見せる。


「あの、わたし少し走ってましたよね、誰かと合わせるってしたことがなくて」


若干泣きそうな顔で反省を口にするが、初めて合わせたのだ、うまくいかないのは当たり前だ。




「いやいや、初めてでこれはすごいって」

「もう正式メンバーでいいんじゃない?」


白河さんの顔がぱぁっと明るくなる、この子表情がころころ変わって面白いな。

そうしていろいろな曲を合わせていった。

この時はなかなかいいじゃないかと思っていたのだが。


練習も終了間際、曲を合わせている時、白河さんの顔はずっと手元のほうを向いており、

必死に音を間違えないようにしているようなイメージが感じられた。


そんな時、白河さんがギターをミスってしまった。白河さんはやってしまったという表情を浮かべ、なかなか曲に復帰できない。


そのまま曲は終了した。


「ご、ごめんなさい!すみませんでした!」


白河さんは悲痛な顔でみんなに謝る。


「大丈夫だよ!練習なんだし、わたしも歌詞間違えちゃった」


未来がそう言ってフォローする。

俺も灯火も別に間違えたことは気にしていない。だがそのあとに復帰できなかったことを気にしていた。

白河さんは周りの音もちゃんと聞いている、ミスのあと復帰することはそこまで難しくないはずだ。


「未来の言う通り練習なんだからあんまり気にしないで」


「失敗したらしたで仕方ないし、そのあと復帰してくれたら大丈夫だよ」


そう言ってなんとか元気を出してもらおうとするのだが、白河さんの顔は暗い。


そうしていると、スタジオの終了時間がくる。


「そろそろかな、片付けはじめよっか」


白河さんは暗い顔のままで、ギターの片付けをはじめていた。


そしてスタジオ練習の終わった俺たちはスタジオ内にある休憩スペースで休んでいた。


「本当にすみませんでした」


白河さんが消えいりそうな声で、もう一度みんなに謝る。

白河さんは今まで他のバンドで合わせた経験もない、ずっと一人で弾いていたらしい。


初めて合わせてみてミスをして、みんなに責められると思ったのだろうか?

俺たちはそんな完璧を目指すようなガチ勢バンドではない。


俺の根底にあるのはバンドを楽しむ、そして聴いてくれている人たちも楽しくする、そんなバンドだ。


「はいっ、暗いのは終わり!」

「ミスなんて全然しても大丈夫だから、どうせならみんなで楽しくやろう!」


なんとかこの空気を取り除きたくて、俺は笑顔でそう言い放った。


「ありがとうございます、みんなで楽しく、ですよね」


白河さんはなんとか元気を取り戻してくれたようで、そのまま今日の練習はお開きとなったのだった。



帰り道、灯火に声を掛けられる。


「ねえ、白河さんのギターって日和さんそっくりだよね」

「それにギターを弾いてる時、やけに怖がっているというか」


さすが灯火だ、俺と同じことを感じていたようだ。

確かになんていうか、日和さんのギターに似ている、似ているというかそのままのようだった。


「多分HYTの曲をいっぱい聴いてくれてたみたいだから、それをそのままコピーしたんだろうけど」

「なんか白河さん弾いててあんまり楽しそうじゃなかったんだよなぁ」


俺は既存の曲でも結構アレンジするタイプだ、その方がやっていて楽しい。

まあ完コピして楽しむ人もいるのだから一概には言えないんだけど。


どこか義務というかコピーでなければならないという想いを感じる。

白河さん程の腕前があるのならもっと自由に弾いても楽しいんじゃないかなぁと思った。



あ、そうだ九条先輩に高槻フェスに参加したいこと言っておかないと。


九条先輩にメッセージを送る。

「お疲れ様です、高槻フェス出たいんですが」

「ありがとう!愛してるぜ!(ちゅ)」


先輩、気持ち悪いです。


ともあれ、高槻フェスに出ることが決定したのであった。

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