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生彩放つ無神世界  作者: 美緑
〜第二章〜❅٭豪雪に包まれし鳥獣町٭❅
9/89

❊温かな錬金術❊

アルテがリハイトの家を出た後……

私は、子ども達から教えてもらった"雪の化け物"の話をリハイトに使えていた。


「そうか……子供達がそんな事を…」

「うん…ねぇリハイト、この雪っていつから降り出したの? アルテが知らなかったって事は、まだどこにも報告もしてないんでしょ?

あと、開かずの祠って本当にこの町にあるの?」

私が立て続けに聞くと、彼は腕を組んで難しい顔をしながら答えた。

「あぁ……帝国には、まだ報告していない。この雪は数日前から急に降り出してな…。まともに外出できなくて皆困っていたんだが……それでも帝国に報告しなかったのは、元町長が大反対してたからなんだ」


リハイトはそこまで言うと、

「『こんな自然現象、放置していればいい……。

町の外の者になど頼っていられるか!』ってな...」

元町長?の真似なのか、堅苦しい口調で話す。


なるほど…そういえば、確かこの町は閉鎖的でもあるんだっけ?でもコンドは町の外どころか帝国の外から来た私を歓迎してくれた……。

これは話を聞く限り、町長のコンドではなく、元町長とやらの影響が強そうだ。


「それから祠は...町の奥にあるにはあるが、簡単には開かない……いや、開けられないんだ。

鍵はその元町長が厳重に管理してるからな...」

私が閉鎖的なこの町について考えていると、リハイトは祠についても教えてくれる。

そしてここでも出てきた元町長…。


「元町長って...コンドの親?」

だとしたら、子供に仕事を継がせるの...だいぶ早いよね?

と呟き、私は首を傾げた。

するとリハイトは首を小さく横に振って続ける。

「親ではないが...コンドの"大叔父"だ。少し離れた傍系血族だな。 凄く厳しい人で、この町をここまで閉鎖的な環境にしたのも 元町長なんだ...」


それを聞いて門番等の態度を思い返し、私は苦笑する。

…もしアルテやコンドがいなかったら……私は町に入れてもらえなかっただろうな…と。


リハイト曰く、普段から監視の目が厳しい為、町の外の品を取り揃えるのも難しいそうで……自分が英雄じゃなかったらとっくにこんな町出ていってる。とまで言い切ってしまう始末だ。


「うーん……じゃあ、祠は調べられないか…。

怪しいと思ったんだけどな〜」

「まぁ…そこは何とかするさ。町の問題は俺達が解決する。探偵は客人なんだ、大人しく宿で寝てろ」

肩を落として落ち込んでいると、私が祠を調べる気満々でいる事に勘付いたのか、リハイトはそう言って

「疲れてるんだろ?宿まで送ってやるから」

と、半ば無理やり私を外に連れ出した。


「えぇ~……私も力になりたいよ。 色々とお世話になったし、これからもなる予定だし...」

それでも私は少し駄々をこねながらリハイトの背を追う。

すると…

「……それが俺達への謝礼のつもりなら必要ない……いいから、じっとしてろ」

「...むう」

と、更に釘を刺されてしまう。


でも、もう既に好奇心が抑えられなくなっていた私は…

様子を見に行くぐらいいいよね...?リハイトに見つからなければ大丈夫!...多分!

……と、完全に言う事聞かない作戦を立てたのだ。

リハイトがもし探偵の心を覗けていたら、アルテとまとめて小突かれていただろう...。


て、あれ?…ん?

そういえばリハイトは心見透かしたりできないよね?

私は急に不安になって彼に直接聞いた。

「……ねぇ、まさかリハイトもアルテみたいに、人の本音が見えてたりする?!」

もし見えるのだとしたら大変だ。絶対怒られる。


「? いいや…?アレはアルテだけだ。

あの眼があったら便利そうだが...いや、やっぱり帝国民の心なんて覗く気にはならないな…苦労しそうだ」

私がなんとも阿呆な理由を抱えて尋ねた質問に、リハイトは真剣に答えてくれた。なんだか申し訳ないや。


彼の態度に私が少しだけ反省していると、リハイトは

「……というか、あいつ…お前に竜眼の事を話したのか」

と言って、少しだけ驚いたような表情をしたかと思うと、自分の左手を掲げて私に向けた。


「あ!紋章!」

見ると彼の左手の甲には、アルテと同様の光る紋が現れている。ただその紋は竜を象った物ではなく、雷鳴のような鋭い形をしていた。

アルテは右手に竜の紋があったけど、それは神獣の力を持ってるから、だよね?

じゃあ……リハイトはどんな力だろう?

考察しながら紋章を眺めていると、リハイトは自分の力を説明してくれる。


「俺は魔物や魔獣を手懐けたり、召喚する力を持ってるんだ。 今はまだできないが……聖獣や神獣も操れるようになるらしい…」

「わ!アルテに負けず劣らず凄い力だ!」

私はリハイトの力を聞いて目を輝かせ……その途中ある事に気がつく。

「…….ん?あれ?神獣を操る力?それって…」

「そう、神獣(アルテ)とは対の力だよ」


リハイトは私の気づきを肯定するように頷くと、そのまま肩を落として言葉を続けた。

「……まぁ二人とも自分の力を未だに全然使いこなせてないんだけどな…。既に使いこなしてる奴もいるのに……。まだまだ鍛錬が足りないのか…そもそも加護神に会う必要があるのか……」


彼の云う"使いこなしてる奴"というのは他の英雄の事だろう。

「でも……英雄力って、やっぱり力の使い方によっては帝国簡単に潰せちゃいそう」

私はまだ会ったことの無い英雄達の力を想像して呟く。

なんならアルテとリハイトの二人だけでも壊せるんじゃないかな?……なんて何気なく考えてそう言うと、リハイトは不敵に笑った。


「ふッ……間違いなく、潰せるな」

潰れた後の帝国でも思い浮かべたのだろうか……悪い事考えてそうな顔をしている。

「でも五人全員、その気は全く無いさ。あったらとっくに、こんな帝国…いや、"この星ごと全部"消えてるだろうな」

「ハハッ......怖」

私はそれを聞いてシンプルに鳥肌が立った。

リハイトは相当帝国の事(きら)ってそう……。


身震いして彼を見ると、せせ笑っていたリハイトは、すぐに表情を整えて口を開く。

「……まあ、他の英雄力は本人達に直接聞け。

今は別の事を教えてやるから」

「それは…役に立つ事?」


帝国を潰す想像をして喜んでいるようだからとんでもない事を教えられるんじゃないか…なんて失礼な事を考える私に、彼は頷いて話を続けた。

「アルテから魔法については、大体聞いただろ?

その他の"力"の存在も...。

その応用編……"異能力"について教えてやる」

「異能力?」

私は初めて聞く単語に首を傾げる。

でも確かに今後役に立ちそうだ。ここは真剣に聞いておこう。


「ある程度魔法が使えるようになると、自分だけの力…異能力を一つ創れる。戦いに有利なものや、生活に便利なもの…。自分の好きな芸術”を活用したものもある」

そこまで聞いて私は手を上げた。

「芸術……アルテもこの星の説明をする時に言ってたけど、その…自分の好きな"芸術"…?ってなに?」

そもそも"芸術"というものをイマイチ想像できなかったので聞くと、リハイトは丁寧に説明してくれる。

「芸術は、ハッキリ言って概念だからな…。

これは個人的な考えになるが……例えば"絵を描く"ことが好き、"音楽を聴く"ことが好き、"本を読む"ことが好き、文を書く"ことが好き……だとか。

自分が好きなものに強いこだわりを持ったら、それが"芸術の種"になる。"ソレ"が本当に好きで、技術を更に磨きたい、もっといい作品を見つけたい……そう思ったとき、その気持ちを手放さず"行動"に移したら、創作活動…芸術の鍛錬が出来る。

"芸術"は、芸術の鍛錬を積み上げた大作……いや、死ぬまで完成しない"生彩放つ作品"だと思う」

「…芸術って単純に好きなものってことじゃないんだね。どれだけ鍛錬を続けても絶対に完成しない作品……か」

私は教えてもらった事を一生懸命頭に叩き込む。忘れたくないから今度メモ帳でも用意しよう。


「芸術は、好きだからこそ一生追求していかなければならないものなんだ。芸術の鍛錬を生きている間にずっと続ける事…。それがどんなに苦しくても、好きであり続けられる……それが大事なんだ」

「ふむぅ…」

リハイトのお陰で芸術についてはイメージする事ができた。……でも、

「どうして、異能力に芸術が活用できるの?」

まだここが分からない。


「芸術って、生活では役に立つかもだけど…絵を描いたりとかって、戦いに活用できる程の力があるの?」

不思議に思った事を私がそのまま聞くと、彼は難しい顔をしながら口を開いた。

「芸術を愛した神々がこの星を創った神話は…アルテに聞いただろ? "生き物"は、神々によって創られた作品……コピルムの一部でもある。

だから俺達生き物には一人一人、芸術を愛する神の心が刻まれている……らしい。まぁこれは、あくまでも神話内の話だがな…」

そしてそこまで言うと、リハイトは詠唱をせずに魔法の氷を創り出す。

「原理はよく解らない。でも、俺達生き物にとって芸術は、どんな時でも活用できる"偉大なる万能の力"なんだ」

「万能の力……?」


首を傾げる私に頷くと、彼は氷を花の形に変えてから地面に落とした。

すると───

「……わぁ!」

私達の足元には氷花の小さな花畑ができる。


魔法でできた花畑に感激していると、リハイトはこちらを見て尋ねてくる。

「お前はこれを綺麗だと感じたか?」

「うん!すっごく!」

私は即答した。

だって本当に綺麗だ。

しゃがんで花に触ろうとしたら、ひんやりとした冷気が指先を掠めた。魔法でも氷は氷らしい。……ちゃんと冷たい。

冷えた指先を摩っていると、リハイトは話を続けた。


「他者が美しいと感じるものを作るためには、芸術を極めることが必要だ。しかしそれは逆に言えば、芸術を極めることで他者に美しいと思わせるものを作ることができるということ……」

「つまり…?」

言葉の先を言ってほしくて促すと、彼は魔法を解いた。

忽ち魔法の花は散り、辺りに氷の花弁が舞う。


「つまり芸術を学べば、できることが増えるってことだ」

リハイトの出した結論は至極シンプルだった。


でも……わかった気がする。


「万能な力は自分で努力して掴むんだね!」

私がそう言うと、彼はその答えを肯定するように頷く。そして本題……異能力の話に焦点を戻した。

「長々と芸術の説明をしたが…生憎、俺の異能力は芸術とは関係ないものでな。魔法の詠唱不要と敵や攻撃の距離を把握できる"セット異能力"を持ってる」

「あ!だからさっき詠唱もなくあんな凄い魔法を…!

なるほど、二つで一つの異能力もあるって事か…」

異能力の可能性…。その広さに驚いていると、リハイトは視線を逸らす。

「ある……が、セット異能は英雄にしか使えない。

そもそも異能力自体、だいぶ高度な技だからな」


その答えを聞いて、私は思わずショックを受ける。

「高度って……なら知ってても私、異能力使えなくない?」

「そこは、お前の努力次第だな…。

まぁ…知見が広がるのはいい事だろ?」

「うーん……確かに…?」

とは言っても...どうにも腑に落ちないまま、私は考えた。

役には立ちそうだけどさぁ……うーん…まぁそりゃ、なんでも並大抵の努力じゃ使えないよね。


異能力の習得……そのハードルの高さを知ってしょげていると、リハイトが問いかけてきた。

「それ以外に聞きたい事は無いのか?」

私はそれを聞いてから少し考え、

「うーん....じゃあ、コンドについて知りたいな

ゆっくり話せなかったし」

コンドについて聞いてみる事にした。


すると忽ちリハイトは呆れたような表情になる。

「明日本人(コンド)と直接話せばいいだろ……」

しかしそんな事を言いつつも、彼はコンドについて語ってくれた。

なんだかんだ面倒見がいいと言うか律儀な人だ。



「コンドはこの町の町長であり、俺達の仲間…英雄だ」

「やっぱりそうだったか〜!」

私はコンドも英雄の一人だと聞いて納得した。

「コンドがアルテと同じような特殊な挨拶?してたから、コンドも英雄なのかなって思ってたんだよね」

彼が英雄であるかもしれないと考えていた理由を話すと、リハイトはものすごく大きな溜息を吐いた。

それはそれはもう盛大な…。

「あの面倒くさい制度は、帝国の奴らが勝手に創って勝手に押し付けてきただけだ。英雄らしさの演出だよ。無駄な言葉遊び……覚えなくていいぞ」

そう言うと、彼は不機嫌そうに「全く……迷惑極まりないよな…」と続けてから本題に戻った。


「コンドは英雄以前に、この帝国の次期皇帝候補でもある。前皇帝の甥っ子なんだよ、あいつ」

え……?

私は初っ端から爆弾情報を投下されて固まる。

今なんて?

「え、ん?……それって皇族ってこと?

じゃあ…なんで町長やってるの?」

コンドのとんでも身分を知り、私は慌てて自分の行動を振り返った。

私、コンドに失礼な事してないよね?大丈夫だよね?

冷や汗をかきながらそんな事を考えていると、リハイトは「話、また長くなるぞ…」と予告をしてから、簡潔に説明をしてくれる。


「実は十年前、この帝国では大きな戦争があったんだが……その戦争で、"前皇帝陛下"が亡くなって…。

それから今まで正式な皇帝が何年もいなかったんだ。戦いに参加もしなかった王族貴族共が、一国も守れない皇帝など必要ないとか何とか言って意地張ってたからな……。

でも最近、帝国内で種族同士の争いに火がついて手に負えなくなってきたんだ。

それでようやく…国をまとめる為に皇帝を決めようってところまで話が進んだんだ。

そこで前皇帝の甥っ子であるコンドは必然的に皇帝候補に選ばれ……国をまとめる練習という体で、元町長からこの大町の町長を任されてるんだ。

まぁ帝国をまとめるのとは何もかも、比にならないけどな…」

「ナ、ナルホド……?

町長に英雄に皇族…うぅ…大変そう……」


コンドの高貴すぎる身分と、重い責務を背負っている現状に目を回していると、リハイトは呆れたように口を開いた。

「探偵……先に言っとくが、五英雄は全員、元からそこらの貴族よりも高い地位の令息令嬢だからな。

皇族のコンド以外の英雄は四大公爵家の出なんだ」

は?公爵…家?

その言葉で私は更に目を泳がせる。

「こ、公爵?て、えっと……つまり、アルテとリハイトも…?」

問うと頷くリハイトを見て、私は変な奇声を上げて飛び退いた。

「あげえぇぇ……!」

私、アルテやリハイトに対して失礼な勘違いしたりとか、失礼な偏見持ってたけど……これって重罪になったりしないよね?


自分の数ある失態を思い出して青くなりながらも私は、これだけは聞かねばと口を動かす。

「じ、じゃあ、リハイトは公爵令息ってこと?」

「いや、俺は現ルクス公爵だ」

「ひゃええ?!もう爵位継いでるの?!」

終わった。

令息令嬢ならまだしも、公爵位を持ってる本人にぃ…私はなんて無礼を……!


そもそも公爵相手に戸籍も身分も持ってない私が敬語すら使わずに接してること自体……ふ、不敬だ!

今から謙ってみる?いや、不自然過ぎるな…。

……なんて、今更考えても遅い事で私がめいっぱい悩んでいると…リハイトに、すごい目で見られた。

わかるぞ、これは可哀想なものを見る目だ。


「あぅ…処刑…処刑されてしまうぅ…無念」

「しょうもない事考えんな。お前はアルテの友人なんだろ?あいつはお前が下手に出る事を望んでるのか?」

今までの不敬を咎められるかと思いきや……皆とどう接するべきか分からなくて頭を抱えていた私に、リハイトはそう言ってくれた。

「リハイト……!」

君はなんていい人なんだ!

私の中で彼への印象がグッと上がった。


「あ、俺の事はいくら敬っても構わないぞ、寧ろ敬え」

「え……ごめん、やだ」

小突かれた。


✿ ┈ ⋯ ┈ ✿ ┈ ⋯ ┈ ✿ ┈ ⋯ ┈ ✿


皆の身分を知って取り乱した私が落ち着いた後、リハイトは何事も無かったかのように話を続けた。

「さっき言ってた大戦争で、多くの民が命を落としたんだ。五英雄の両親もその時、全員亡くなった。

...だから貴族の子どもが爵位を継ぐ事自体、珍しい事ではないんだ」

「そう……だったんだ...」

皆…自分を護ってくれる親がいないんだ……。

私はまた胸が苦しくなった。

話を聞くたび、この帝国が如何に子供達にとって生きづらい環境であるかを思い知らされる。


「ねぇ、公爵って仕事とか大変?」

この問いはただの好奇心だ。

英雄の役目と貴族の役目……その二つを抱える彼らの言葉を聞きたかった。


「いや別に…」

リハイトはそう言うと"ルクス公爵家"について教えてくれる。

「ルクス公爵家は昔から、錬金術の技術の高さで栄えていたんだ。だから基本的には、公爵の仕事よりも錬金術師としての仕事の方が多い。

俺は、小さい頃から続けてきた錬金術師の仕事の方が英雄なんかよりずっと性に合ってる」

「そかぁ…」

貴族としてのが彼の負担になっていないのなら幸いだ。


私はリハイトの話を聞いて安心すると、次は"錬金術"というワードに興味を示した。

「錬金術か〜便利そうだね」

「あぁ、便利だぞ。錬金術は材料と知識さえあれば色々な物が創れるからな」

私の言葉に頷いたリハイトはそう言うと、またも不敵に笑って言う。

「探偵も、錬金して欲しい物があったら、遠慮なく俺に言うといい。……まぁ、これは英雄の仕事外だから対価はしっかり貰うぞ?」

なるほど商魂逞しい。これは対価が高そうだ。

それでも……私は、どうしても"今すぐ"欲しいものがあったので、早速お願いすることにした。


「じゃありハイト、今創ってくれる? 対価はいつか絶対払うから!契約書でも何でも書くから!!」

「は?今すぐ? 手元にある素材でできる物なら、創れるが……材料は殆ど家にしかないぞ…」

私の無茶振りに動揺しつつも、彼は今自分が持っている材料を確認しだした。

それはアルテが呪縛紐を運んでいた便利魔法と同じ魔法なのか……リハイトも亜空間から様々な材料を取り出す。

あぁ!綿とか布がある……これならきっと…!

素材の中に自分が必要としている物の材料を見つけた私は、改めて彼に頭を下げた。


「服……温かい服が欲しい!!実は…アルテにかけてもらった魔法が解けそうで……」

するとその言葉で、リハイトは凍りついた。

宿に着いたら暖まれるけど…これじゃ祠に行けないし……なんて、祠に行きたいという下心を隠したお願いを伝えると、彼は顔色を悪くしながら…

「普ッッッ通に、一大事じゃないか!

この寒さは命に関わる…。探偵、対価はいらない。

……これは英雄の仕事だ」

と言うと、手際良く手元にあった素材で"防寒服"を創り始めた。


リハイトが手を掲げると、天青色の魔法陣が浮かび上がり、その場にあった綿や布、糸などが吸い込まれていく。

「服なら簡単だ…魔法ではないが、長々とした呪文もいらないな。 一気に創り出すぞ……”創製の陣”!」

彼が一声かけると、魔法陣から光る煙の塊ようなモノが出てきて……それが私の体に巻き着いた。


「え....な、何これ?!」

体を包む煙に驚いていると、それはあっという間に防寒服へ変質した。

見ると、服にはふわふわした綿の装飾品が沢山あしらわれている。

「す、凄……温かい!!ありがとう、リハイト!!」


初めて見た錬金術と温かい服に興奮しながらお礼を言うと、リハイトは、やはり一瞬驚いた後…ただ黙って頷いた。

そして……

「この宿だろ?」と、彼はその場で指を差して教えてくれた。宿に着いた事を。


「本当だ!いつの間に! あ、あのさ、リハイト……えーと、色々と本当にありがとう!」

宿の扉を開ける前にリハイトへ改めてお礼を言うと、「はいはい…」と、次はもう驚かずに感謝を受け取ってくれた。


しかし、それに満足して扉へ手を伸ばすと…

「探偵、ちゃんと寝ろよ?」

と、彼は家を出た時のように私へ釘を刺してきた。


「は、はぁーい」

言いつけを守る気など完全になかったので、私はその言葉だけで挙動不審になってしまった。

しかし、これは完全にバレてるなぁ…と、頭ではわかっていても……やはり私の好奇心は止められない。


こうして私は、絶対に祠に向かう!という決意を更に固くしたのだった。

英雄の家名と爵位名が同じなのには理由があります。

シンプルにルクス公爵リハイト・ルクスって感じで覚えてあげてください。´`*

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