初めての友達
リハイトは巨大化てる坊の呪縛紐を使って、本格的に罠の製作を始めた。
私とアルテはその様子を少し離れた場所で見学しながら会話をしていたのだが……その内容は、明るいものではなく...私達の表情は暗かった。
「ねぇ、アルテ……。
巨大化したてる坊が出た時、なんで一人で行っちゃったの?さっきリハイトに怒られてなかった?一人で戦うなって…。
私も結構心配してたんだよ...?」
リハイトに小突かれていたアルテを思い返しながら聞くと、彼女は答えに迷うような素振りを見せた後、口を開いた。
「すみません、確かにアレは私の悪い癖です。
倒せると思ったら止まれない……”呪い”のようなもので…」
「え...呪い?」
穏やかではないワードがいきなり飛び出したので、私は思わずビクッと肩を震わせた。
それは一体どんな呪いなんだ…?と身構えると、アルテは気まずそうに話の焦点をずらしてしまう。
「……いえ、それより探偵さん、不安にさせてしまった事…やはりきちんとお詫びさせて下さい」
ッいや、ちっがーう!謝ってほしい訳じゃーない!
またも謝罪を始めた彼女の言葉に、私はズッコケた。
「ンもお~アルテ!町の外でも言ったけど、そんな事で律儀に謝らなくていいよ!
それに...ただただ不安がってた訳じゃなくて、"アルテの無事を心配"したんだよ?怪我したらどうしよう...とかさ!
アルテが英雄?...だとしても!あんな凶暴な魔物と一人で戦うなんて、どう考えても……やっぱり危ないじゃん!」
私が心配してること、ここまで気付かないなんて…
流石に鈍感が過ぎるよアルテ!と内心呆れながら言うと、彼女は表情を暗くして目を伏せる。
少しは伝わったかな……反省、してるよね?
と思いながらも私の気持ちは収まらず、更に物申そうと足を踏み込んでアルテに近付き、彼女と無理やり視線を合わせた。
しかし、彼女はすぐに目を逸らすと、暗い表情のまま質問を投げかけてきた。
「探偵さんは、"神域の五英雄"……について、
知りたいですか?」
「ンえ?!う、うん...知りたい。
英雄って何だろう…って気になってたから。
……な、なんか華やかだよね」
突然、かなり興味引かれる話題を出され……私はアルテへの言葉がポーンと吹き飛んでしまった。
勿論彼女の事の方が気になるし、心配ではあったのだが……興味がある話題に、つい反応してしまったのだ。
アルテってエスパーなのかな…?
英雄の事は次に聞こうと思ってたんだけど……。
私がそんな事を考えていると、アルテは視線を上げて口を開いた。
「…そうですね、華やかな称号ではあります。
ですが、実際のところ……この帝国にとって"英雄"とは、使い勝手の良い道具にすぎません」
「……え?」
私は彼女の言葉を聞いて、その場で固まった。
聞き間違い…?いや、今確かに使い勝手の良い道具って……。
あまりにも信じられない言葉に驚いて私が彼女を見ると、そこに居たのは…
「……ッ?!」
あの"冷たい瞳"をしたアルテだった。
細くて鋭い瞳孔はまるで....
──竜のようだ。
しかし、アルテの妖しい瞳が自分を捉えていても、やはり恐怖を感じる事はなかった。
……その表情には、深い悲しみに染まっていたから。
「英雄という称号は、
都合良く後付されたようなものです」
アルテは、その瞳に温度を取り戻すことなく語り続けた。
「英雄である五人全員、家族や仲間…身内以外の"助ける対象"である帝国民達から"心配"も"感謝”も、された事がないのです」
私はその言葉を聞いて、再び硬直した。
「え.....そんな、どうして.....?
魔物と戦うのは凄く危ないのに...。
英雄達に、守ってもらっても...みんな....お礼さえ言わないの?」
衝撃を受け過ぎたせいで、彼女にかける言葉も見つからない。
「じゃ、じゃあ……私が最初にお礼を言ったとき、アルテの反応が不自然だったのは……身内でもなんでもない、守られて当たり前の対象である"私"に、"初めて"...お礼を言われたから...?」
私は英雄という存在の真の立場が視えてきて……震える声で呟いた。
すると、アルテは苦笑しながら何かを唱えだした。
「力のある英雄が困っている民を助けるのは、やって当然、できて当然…。
英雄が使命を果たす事に対して、感謝する必要はない……それは当たり前の事だから。
どんなに危険な仕事も、英雄ならば片付けられる。
どれだけ幼い子供でも……”英雄"であれば…」
「それは……な、何?」
自分がこれ以上踏み込んでいいのかと怖くなりながらも、私は震える声で訊ねた。
「これは私が...帝国の民達に、幼い頃から聴かされてきた……視せられてきた"心の声"です」
次はアルテが私に目を向けて...そう答えた。
「心の...声...?それって……!」
それを聞いて、私は何かを悟った。
アルテがあの瞳で視ているのは…建前の裏にある、心……本心なのだと。
「ええ、ご名答……です。
その人が一番考え込んでいる事や、特に気にかけている事……それから、"嘘"などが…私には、明瞭に見えるんです」
アルテはそう言うと、少しだけ恥ずかしそうに付け足した。
「幼少期よりは力を制御できるようになってきたので、常時視えている訳ではないのですが」
……そうだったんだ。
私は彼女の言葉を聞いて納得した。
アルテが私の事情を疑う事なく信じてくれたのは、途中から心境を覗かれてたから……なのかもしれない。
それなら見知らずの私をここまで気にかけてくれる理由として違和感も無い。
でも……人の心が……
視たくないものが、自分の意思と関係なく視えてしまうなんて……
彼女は今までどんな気持ちでいたのだろう?
辛くて悲しくて…きっとすごく傷付けられてきた筈だ…。
それでも私には同情する事しかできない。
アルテの今までの苦労を想像して落ち込んでいると、彼女は…全てを諦めたような表情で話し続ける。
「この力を悪い方向に使えば、国を潰すこともできる。英雄という称号が無ければ、帝国にとって私達は ただの"化け物…。そんな厄介な存在を、帝国は全て手中に収めておきたかったのでしょう……。
私達に地位や権利を無理やり与えて…意のままに扱うのです」
「そんな事って...」
門番等がアルテにペコペコと頭を下げていたのも、きっと”英雄"という名の、高い地位や権限を与えられているからだったのだろう…と、もう嫌でも解ってしまう。
聞いているだけでも辛くなって、私は顔を顰めた。
…なんて、なんて酷い話なんだろう……あんまりだ。
「探偵さん……私、身内以外の誰かに……いえ、"貴方"に、素直な感謝と純粋な心配を貰った時、本当に……嬉しかった...」
アルテはそう言うと...出会ってから初めて、心からの笑顔を向けてくれた。
ずっと翳っていた彼女の瞳は、見た事ないほど温かな光を宿している。
どうして……?
私はそんな彼女を見て泣きたくなった。
面倒な仕事は全部、英雄任せで……"ただお礼を言う事”、"言葉で気遣う事”さえ...この帝国の人はしてくれない。…彼等にとって、英雄とは本当に……お飾りの称号なんだ。
帝国民に対しての嫌悪感と怒りに渦巻かれながら、私は口を開いた。
「...ッたったそれだけの事をなんで?!
そんな当たり前の、事........」
しかし…そこまで言いかけて、口を噤んだ。
ある考えが頭を過ったからだ。
……もしも、私が帝国民だったとしても、今の私と同じような気持ちを抱けた?伝えられた?
今、私が心配や感謝を"伝える事”を"当たり前”だと思えているのは...この帝国の"当たり前"を知らないから...でしょ...?
そう考えると、自分に帝国民達を怒る資格があるのか、わからなくなった。
そのもどかしさに、体を震わすとアルテが肯定するように言った。
「それでも、貴方は確かに"本心、真心、思いやり……それらを全て、言葉で伝えてくれました。
当たり前の事を怠らず、当たり前にできる。想いを人に伝える努力をする。……それはけして簡単なことじゃない、誇れる事です。だから……探偵さん」
彼女はそこで一度話を途切れさせると、私の手を握って続けた。
「"ありがとう"。
貴方の言葉に、私は本当に...励まされたんです。
自分がちゃんと誰かの力になれたんだ…認められたんだ……って」
私はそう言われた瞬間、気付いた。
アルテは、自分が心配されてた事...わかってても一人だけで魔物を倒しに行ったんだ。誰にも認められた事が無い"英雄"だからこそ、自分が"役に立つ存在"である事を証明をする為に…。
『ありがとう。助かったよ。大丈夫?、無理しないでね。応援してるよ。……』相手からの言葉がなければ、自分が周りからどう見られているかは解らない。
役目を果たして感謝される事は、その行いが認められた事と同じ……。
身内以外に気遣われる事も、認められる事も無く…
ただ国の為に動かされる立場に、幼い頃から置かれるのは……どれだけ残酷なのか…。
私には想像さえできなかった。
「...…呪いってそういう事か」
アルテの発言を思い返して呟くと、アルテは困ったように笑いながら
「それはまた別の事情なので……また今度、話しますね」
と言った。
私はそれを聞いて目を回す。
え....これ以外にまだあるの?!本当にしんどい思いしてきたんだな…。
「こんな事でアルテの……英雄達の長年の苦労は報われないと思うけど...」
私はアルテを労う思いで抱きつくと、その背中を擦った。
すると、彼女も私の背中へ手を回してくれる。
「……いいえ、私にとっては最高の報酬ですよ」
こんなのが励ましになるなら...これからも沢山アルテに抱きつこうかな…。
と私は真剣に検討した。
✿ ✿ ✿ ✿
……その後も、アルテは大人しく労われていたが…暫くすると、私に抱きつかれたまま口を開いた。
「そうだ……探偵さん。
私の瞳の力は、私の家族と英雄達……それから
一部の身内しか知らない”極秘情報”なので、どうか誰にも教えないで下さいね」
「えぇ?!そんな大事な事、私に教えちゃって良かったの?」
もの凄く重要な事をサラッと話すアルテに、私は動揺した。
アルテは可笑しそうに、けらけらと笑う。
「いいんです。私、貴方には隠し事をしたくない.…。
他人行儀な英雄と客人ではない、"対等な立場"になりたいと思ったので」
「対等な立場……それって友達とか?」
"友達"という響きに照れくさくなりながら聞くと、
彼女も頬を紅くして……それでも、はっきり答えた。
「そうですね。
私、貴方と...友達に、なりたいんです」
「わ、私も!アルテの友達になりたい!」
友達…!その甘美な響に瞳を輝かせて答えると、アルテは優しく微笑んでくれる。
「良かった……なら私達、両想いですね!
探偵さん、これからは友達として、どうかよろしくお願いしますね」
さっきまで重苦しかった空気は、このやり取りですっかり和んだ。
「うん!」
私の心も軽くなって、自然と笑顔が溢れる。
この帝国の民じゃないからこそ...私にしかできない事があるかもしれない。
自分の事も記憶が曖昧でわからないけど...…
それでも、私……英雄達の力になりたい…!
「…私、友達として、アルテの事支える!
それから他の英雄達の為にも、自分ができる事なら何でも協力するよ!
だってきっと此処にいたらまた助けてもらうだろうし……あ、でも、帝国民と同じにはならないよ!
だから…弱くても、守られるだけじゃなくて、自分なりに……皆の力になれるように頑張るから!」
自分の決意を言葉にして伝えると、アルテは感激したように喜んでくれた。
「探偵さん…!心強いです……ありがとう。
でも、大切な友達が怪我をするのは嫌なので、
どうか危険な事は避けてくださいね。
怖くなったら逃げてもいいんです。
英雄の役目としてではなく、私が友達として…貴方を護るから」
アルテの硬苦しかった口調は、会話の中でいつの間にかだいぶ砕けていた。
秘密を隠さず、本音を伝え合う事ができれば、出会ったばかりでも、人と人は簡単に打ち解けられるものだ。
そうして二人で笑い合った後、私の中に新たな疑問が浮かんだ。
そういえば……どうして瞳の力を知らないのに、帝国民はアルテを"英雄"にしたんだ?
「あのさ、アルテ...」
今思った疑問を聞こうとしてアルテを見ると、彼女はまたも私が発言を終える前に答えた。
どうやら秘密を打ち明けた以上、もう私の前で瞳の力を使うのに抵抗は無いらしい。
「詳しいことはわからないんです...。
彼等が言うには……”始祖の英雄と同じ魂を持つ者”が加護神から加護を受ける資格を与えられ、強力な力を生まれ持つそうです」
「加護神…?強力な力……?」
知らない単語に躓いて首を傾げると、アルテは頷いて続けた。
「私の右手にあるこの紋のように、
身体の何処かに特殊な紋章を持つ者が、始祖の英雄の魂を継ぐ存在だとか……」
「紋…!!」
ようやく紋章の話が聞けた私は、目を輝かせた…が、すぐに新たな疑問が浮かんだ。
加護神...?確かこの世界の人達って、神様信じてないんだよね?
小さな矛盾を不思議がっているとアルテが答える。
「私も、なぜ帝国が崇めもしない加護神などという存在を創り上げたのかは分かりません。
ですが……英雄と同じく、帝国にとって都合のいい存在である事は間違いないでしょう。
……あ、それから」
アルテはそこまで言うと、思い出したかのように自分の右手を上げて、私に紋を見せてくれた。
「探偵さんが気になっているこれは、英雄それぞれが持つ紋章...。
普段より強力な力を放つ時や、英雄の力を行使する時に使うものなんです」
「凄い!そんな効果があったんだ!
……あ!なら、てる坊に使ってたのは強力な魔法だったんだね」
英雄や紋…そして加護神について話した後、アルテは自身の"英雄力"についても知っている事を教えてくれた。
「私の英雄力の情報は少ないですが、ざっくり言うと……
帝国を護る力と、壊す力をどちらも持つ神獣の力だそうです」
「ほへ~……本当にざっくりだね。
って、ん?こ、壊す力?!アルテがこの星のラスボスだったか……」
帝国を滅ぼしかねない力があると聞いて
失礼極まりない冗談を言うと、アルテは崩顔した。
「ふっ……あっははは!
私はそんな力の使い方、意地でもしませんよ」
私が真剣な表情で言った冗談がよほどツボにハマったのか……なかなか口角が下がらないアルテに、私は続けて聞いた。
「アルテは……この帝国、嫌いじゃないの?」
──すると、
それを聞いた彼女は笑顔を消し、真顔になった。
……が、すぐに頷いて答えた。
「こんな帝国にも、私の大事な人や護りたい人が……ちゃんといるんです。
その人達がいてくれる限り、私が帝国に牙をむく事は無いでしょう。
私は結構、差別主義で……大切な人を護りたいから英雄という立場を受け入れたんです。
どうしても……博愛主義にはなれなかった」
そう言いながら、アルテは段々元気をなくしていった。
「……博愛主義になんてならなくていいじゃん!」
私はそんな彼女を見て、すぐに口を開く。
「大事な人を護りたいって気持ちは悪い事じゃないでしょ!
英雄って立場押し付けてるくる帝国護る為に博愛主義のいい子になるなんて……それこそ馬鹿げてるよ!
こんな帝国、ついでに"守っとけばいい"!...そうでしょ?」
アルテの悩み辛みを吹き飛ばしたい一心で、私は感情的にそう言った。
"英雄"がアルテの足枷になるなら、私はそれを取っ払いたい。生き辛さなんて感じさせたくない…!
それは勿論、他の英雄達にも。
私が一息で言いたい事を叫ぶと、アルテは表情を和らげた。
「ええ…そうですね。帝国を守るのは”ついで"です。
ふふっ、本当に不思議……。
貴方と話しているだけで、心が凄く楽になります」
「え、それって……
アルテの家族とか仲間と話しても楽にならないってこと?」
身内の不仲説を心配して聞くと、彼女は首を横に振った。
「楽にならない訳ではないんです…。
家族や仲間達には何度も救われてきました。
……でも、幼い頃から同じ境遇にいたら、
支え合うのが当たり前過ぎて……話し合う事で
お互いの心の負担を軽くできるなるなんて考えた事もありませんでした。
……それだけ私達には、余裕が無かったのかもしれません」
それを聞いて私は納得する。
「そっか……。仲が良いから、心の距離が近過ぎるからこそ……
お互いを客観視できないってことか」
私の言葉にアルテは頷いて...思い返すように目線を上に上げた。
「今思えば、私は昔から…仲間達が辛く悲しい想いをしても、
一緒になって苦しむ事しか……できなかったんです」
「……そっか」
きっと瞳のせいで余計に辛い事、共感しちゃうんだな…。
そんなことを考えながら私がアルテの言葉に相槌をすると、突然……
「俺達は、昔からお前を本当に心配してるつもりなんだけどな問題児?」
と、背後から声がした。
「し、師匠?!いつから!」
私が振り向くよりも速く、アルテが体を震わせて声をあげた。
見るとリハイトは、腕を組んで不機嫌そうな様子で立っている。
「毎回毎回、懲りずに規則違反を繰り返して…」
「聞いて……」
アルテの質問には一切答えずに、彼は続ける。
「この間は一年前の報告書を書いてたよな?
規則違反は、今日の含めて今月45回目……
ははっ、良かったな俺の実験に45回も参加できるぞ被験体」
もはや"アルテ"という呼び名すら呼ばず説教を続けるリハイトに、彼女はあわあわと狼狽えている。
なんか、親子みたいだなぁ……。
私はそんな二人の様子を見て仲がいいな~と思うだけだった。
「ご、ご勘弁を師匠……貴方の実験は命の保証がない……」
「なら、規則違反を無くすんだな」
「無理……です…」
なんで命が惜しいのに、規則違反?やめないの...と私も心の中で呆れながらツッコミを入れる。
そして──
当たり前だけど...まだまだアルテについて、知らない事ばっかだな……。
という現状に改めて気付かされた。
「今すぐ実験するか?」
「嫌です、ごめんなさい」
……その後も、暫く二人のそんなやり取りは続いていたが、突然...
───ゴンゴンゴンっ!
と、大きな物音がして私達は固まった。
「荒々しいな……泥棒…いや、強盗か?」
そう呟くと、リハイトは地下室から素速く出て入り口に向かった。
私達も後を追って階段を駆け上がる。
……今の音、思いっきり扉を叩くような音だった…。外でなにかあったのかな?
と、私は不安になりながら考える。
地下まで聞こえる程大きく扉を叩くなんて……嫌な予感しかしない。
「……何の用だ?」
三人で扉の前まで辿り着くと、リハイトが外へ向かって声をかけた。
すると、扉の向こう側から、"誰が"の声が返ってくる。
「あ……リハイトさん?
あねう……いえ、翠嵐様は此処にいらっしゃいますか?!」
ひどく慌てた様子の声の主は、翠嵐...アルテを探していたようだ。
「……なんだ、お前か」
リハイトはそう言うと、すぐに扉を開けた。
どうやら知り合いだったらしい…。
ひとまず強盗等ではないようで安心する。
……開いた扉の先にいたのは、頭に一本の角を生やした白髪の少年と、複数の顔を隠した団体だった。
慌てていた声の割に無表情な少年は、扉が開くや否やアルテに近づく。そして周りに聞こえないように声を潜めて、何かを彼女に伝えた。
「……?」
アルテの傍にいた私でも、その内容を聞くことはできなかったが……
彼女の表情が青ざめていくのを見て、穏やかな内容では無いことがわかった。
「あ…し、師匠……すみません…」
少年からの伝言が終わると、
アルテは今にも泣き出しそうな表情でリハイトの方を向いた。
「暫く……探偵さんを、お願いします…。
私…すぐに行かないと……」
立っているのも辛そうな様子で彼女がそう言うと、リハイトは…
「あぁ……わかった。行ってこい」
と、ただ静かに頷いた。
アルテは私達に小さく会釈すると、
白髪の少年と共に、後ろにいた団体を引き連れて行ってしまった。
大丈夫かな...アルテ。
状況も掴めないまま、私はアルテを心配する事しかできず、リハイトと共に彼女を見送った。




