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生彩放つ無神世界  作者: 美緑
〜第七章〜破壊讃歌
71/89

味方

·˚⌖.꙳☪︎┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈☪︎꙳. ⌖˚·

〈レイン視点〉



「デボティラ様に牽制されていたとはいえ、

ソフィア様が苦しんでいる時にお支えできなかった私達は、

罰を受けるべきです」


「このままではソフィア様に合わせる顔がありません……。

どうか、私達を罰してくださいませ」


探偵と別れた後……。

私は、ソフィアに仕えていた巫女見習いの少女達に引き止められていた。


俯いたまま頭を下げる彼女達の肩は、微かに震えている。

デボティラがいなくなった今、

ソフィアだけでなく、彼女達もまた

長く縛られてきた厳しい管理から解放されたのだろう……。


ようやく……

自分達の言葉で、自分達の意思を口にできるようになったのだ。



「……はぁ」


正直に言えば、

そういう想いは直接ソフィアに伝えてほしいところだけれど。

……今は仕方がない。


「そこまで言うのなら……いいでしょう」


私は静かに息を整え、彼女達を見下ろした。


「貴女達に、挽回の機会を与えるわ」


少女達の顔が、一斉に上がる。


「……。」

彼女達は……

このままソフィアから引き離してしまうには、あまりにも惜しい人材だった。


帝国生まれではない彼女達は、この地に古くから暮らす民とは違い、

ソフィアや私達を“英雄”や“神に近い存在”ではなく、同じ“人”として見ている。


……だからこそ、

恐れではなく、思いやりで寄り添える。


実際、ソフィア自身が強く信頼するほど、彼女達の存在に支えられてきたのも事実だ。


故に――

もし彼女達が「罰」を受けなければ自分を許せないというのなら、

その罪悪感を抱えたままソフィアの傍にいさせる方が、よほど残酷だ。


ならば……

ソフィアと彼女達、双方の為にも、私が“罰”を用意するしかない。


「……決めたわ」

私は、はっきりと告げた。


「今回の騒動で怪我を負った民達の治療、

そして里の復興に関する問題を、

今この瞬間から“ソフィアに頼らず”、貴女達だけで処理しなさい」


少女達が息を呑むのが分かる。


「そして今後……何があっても、“ソフィアだけの為”に忠誠を誓いなさい。

彼女の味方であり続け、生涯支え続ける覚悟があるのなら、

このまま傍に仕える事を許すわ」


一拍置いて、私は冷たく言い放った。


「……もし、この誓いを守る自信が無い者、

そこまでの覚悟を持てない者がいるのなら……

反省を認められないと判断し、この里からの追放を命じる」


……追放は、少し厳し過ぎるかもしれない。

けれど、もし彼女達の想いがその程度なら、

この先も共に在り続ける事は、きっと互いを苦しめるだけだ。


己の生涯を捧げてでも、ソフィアを支えたいと……

それを、“自分の意思”で選べる者こそが、

デボティラという良くも悪くも大きな存在を失った今のソフィアにとって、

本当の支えになれるはずだから。


「……。」

この条件で、何人が残るのかは……私にも分からない。

下手をすれば、全員を追放する事になるだろう。


……それでも。

私は、信じたかった。


私にとって家族同然のソフィアを、

生涯をかけて支えてくれる存在が……この中に、いるのだと。



「……。」

長い沈黙が流れた。



祈るような思いで待つ私の前で――


「……ソフィア様の為ならば、

私達の命など……幾らでも捧げます!」


一人の少女が、はっきりと声を上げた。


「ええ! 勿論です!

そのくらいの覚悟は、とうに出来ています!」


続くように、他の少女達も言葉を重ねる。


「ソフィア様に仕える身として、

里の一時的な崩壊如き……必ず乗り越えてみせます!」


「エルフ族のソフィア様ほど長くは生きられませんが……

私の短い生涯が、少しでもお役に立てるのなら……!」



……。

誰一人、異論を唱えなかった。


「……分かった」


正直、驚いた。

……何人かは追放を選ぶと思っていたから。


「貴女達がそこまで言うのなら、信じるわ。

……ただし、口約束だけでは済ませない」


私は契約書を取り出した。


「ここにいる全員、

魔導契約書にきっちりサインしてもらう。

……そのつもりで」


この契約書は、誓いを破った瞬間、

自動的にペナルティを発動する特殊な魔道具だ。


内容は……発動するまで分からない。

それだけ恐ろしい代物。

それでも、彼女達は迷わずサインした。


……度胸があるわね。

私は彼女達の署名を受け取り、正式に契約を結んだ。


……この子達になら、

ソフィアを任せられると、私は思った。


胸の奥で、ようやく息を吐く。


「貴女達の覚悟、確かに見届けたわ。

期待しているわよ」


そう告げて立ち去ろうとした、その時。


「あの、レイン様……お待ちください!」


最初に忠誠を誓った少女が、私を呼び止めた。


「レイン様は“ソフィア様だけ”に忠誠を誓えと仰いましたが……

私達にとっては、レイン様も大切な領主様です」


震える声で…それでも、真っ直ぐに。


「これが契約外の発言になる事は承知の上です……!

それでも、どうか……!

レイン様にも、忠誠を……誓わせていただけないでしょうか?」


「……!」


……まったく。

ここまでされて断れるほど、私は冷酷になれなかった。


英雄になってから、

縋られる事ばかりで、他者と関わるのが嫌になった。


私の為と言いながら、

結局は己の為に利用する者ばかりだったから。



でも……この子達は、違う。



「……好きにしなさい」


素っ気なく、それでも拒絶しない声で告げ、踵を返す。

……貴女達の勝ちよ。


「……ソフィアを、よろしくね」


『……はい!!』


その元気な返事を背に、私は歩き出した。


……ペナルティは、私が止めておこうかしら。

そんな事を真剣に考えながら、

私は自室へと戻った。

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