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生彩放つ無神世界  作者: 美緑
〜第七章〜破壊讃歌
65/89

それぞれが抱く呪い

午後から始まる逆さクラゲの舞は、教会裏に広がる庭で行われるらしい。

開始時間にはまだ早いというのに、

庭の前にはすでに大勢の人が押し寄せていた。


不治の病にかかりたくないのは里の者だけではなく、帝国中のあらゆる種族にとって切実な願いなのだ。


ワクチンを求めてやってきた来場者たちは、カテドールフェアリーの里を覆い隠すほど多く、会場には到底入りきらない。

私はその人波の中を、ひとりで会場へと進んでいく。



あの後、アルテには急用ができてしまい、翠雨様に連れられて行ってしまったので、今は別行動だ。

それに――展示スペースで出会った幽霊……いや、私がぶつかったあのお客さんの話も、まだ相談できていない。

……まぁ謝ってくれたし、本当にあの子達が幽霊だとしても、多分害意のない“いい幽霊”だったと思う。

そう思いたい。そうであってくれ。


ふぅ……それにしても、この小さな体が役に立つのは、こういう時くらいなんだよね。

私は人混みの隙間をスイスイと抜けながら、

心の中で肩をすくめた。


会場には簡易の席が設けられているが、

座るにはチケットが必要だ。

チケットのない来場者は立ち見になるか、

そもそも入場すらできない。


……幸い、私はレインから事前にチケットをもらっていたので、迷わず席に腰を下ろせた。



「探偵さん」


「あ、永護!やっほ〜!」


人混みから逃れて足を休めていたところに、

永護の姿が見えた。

私たちは自然と手を上げ、軽く挨拶を交わす。


「探偵さん、いきなりで悪いんだが……

実は頼みがあるんだ」


挨拶もほどほどに、永護は急にそう切り出した。

どんな頼みだろう? と気になった私は首を傾げる。


「珍しいね、頼み事……?」


「あぁ。できれば、舞の最中は兄上達――

破天様と雅火様のそばにいてほしいんだ」


永護の表情はいつも以上に読み取りづらかったが、

その声には深刻さが滲んでいた。


「え……まさか、何かあったの?!」


胸がざわりとして、私は思わず目を見開く。

……聖水汚染の件もあるし、この祭りの本番で何が起きてもおかしくない。

いや、毒料理の件だって、あれが事件と関係している可能性もある――。

そんな考えが頭をよぎり、動揺する私に、永護は小さく頷いた。


「……何が起こるか、俺にも分からない。

だが、ここで何らかのトラブルが起こるのは確かなんだ。

曖昧なことしか伝えられず、申し訳ない……」


その声は本当に、今にも消えてしまいそうなほど弱かった。

……それだけ“今回の何か”が重大なのだと、

嫌でも伝わってくる。



「……わかった。永護が警戒してるトラブル……

それが何なのかは分からないけど……

とにかく私が破天さん達の近くにいた方が、

何かあった時に動きやすいってことだね?」


「!あぁ、そうだ……すまない。

今はまだ曖昧な情報しかなくて……」


「ううん、全然いいよ!

もし何かあったら、その時は私も力を貸すよ!

そのための魔法だからね!」


肩を落としていた永護を励ますように、

私は小さく拳を上げた。


魔法を使えばだいたい何とかなる――

なんて少し脳筋な考えが頭をよぎったけど、

さすがに場の空気を壊しそうなので秘密である。


私がそのまま笑いかけると、彼はようやく肩の力を抜いたようで、ふっと柔らかい声でお礼を述べた。


「探偵さん……恩に着る」


軽く頭を下げる永護。

そんなに畏まらなくていいのに――

と思っていた私だけど、その瞬間、ふいに胸の奥で“ある好奇心”が灯った。



「……。」


気づいた時にはもう、私は永護がお辞儀から顔を上げたその瞬間を狙って、ぐっと距離を詰めていた。


「……っ?!」


永護がビクッと息を呑んだのに気づかないほど、

私は真剣に、間近で彼の顔を覗き込んでいた。

そして、ひとつ分かったことがある。


……やっぱり。


「…永護って、感情豊かなのに表情硬いよね」

「ッ……。」


私がぽつりと言った瞬間、それまで動いていた永護の気配がぴたりと止まった。


近距離で見ても、

やっぱり彼の顔にはほとんど変化がない。

声色や仕草に感情は出るのに、

表情だけが不思議なほど動かないのだ。


今までもそうだった。

彼の“笑顔”も“怒り”も、私は一度も見たことがない。

……これは、彼が意図的に隠しているのか?

それとも――。


そんなことを考えてしまったせいで、

抑えていた好奇心がうずき出してしまった。



「……ッ、すまない。

不快な思いをさせただろうか?」


永護は表情を動かさないまま、焦った声だけを震わせた。

そんなに驚くと思っていなかった私は、

逆につられてあたふたする。


「え、そんなことないよ?!

私こそごめん……!

人には事情があるのに、ズカズカ聞いて……。

ただ……何か理由があるのかなって。

答えたくないなら、本当に無理しなくていいから……!」


私がしどろもどろに言うと、永護は小さく首を横に振った。


「いや、気にしなくていい。

これは……ただの呪いなんだ」


「ッ……それって……もしかして、魔王の?」


予想外の返答に、私は思わず目を見開いた。

――しまった。軽く聞いていいことじゃなかった。


反省しながら永護を見つめると、彼はまるで

“自分は平気だ”と示すように落ち着いた声で続けた。



「あぁ。だが俺のは……まだマシな方だ。

表情が変えられないだけで、感情までは奪われなかった。

それに、翠雨様や破天様、雅火様……翠嵐様に比べれば」


淡々としているのに、その“比べれば”の一言にだけ、重さが滲んでいた。

だから、思わず聞いてしまった。


「……でも永護だって、辛かったでしょ?」


永護は短い沈黙のあとで、小さく答える。


「……多少…な」


その一言が、どれだけの事を抱え込んでいる証か。

人より欠けている部分を持つ苦しさも、

それを補う術がない“呪い”という絶望も――

彼が笑って流せるような軽さじゃないはずだ。



「…よッ! 探偵! 久しぶりやな!」

「こんにちは、探偵さん。お久しぶりですね」


永護や翠山の民にかけられた“呪い”について、どうしても頭から離れず考え込んでいた私の背後から、いきなり聞き覚えのある声が飛んできた。



ッ…この二声は――!


「はッ?!、破天さんに雅火さん?!

こ、こ、ここ、こんにちはぁッ!!」


勢いよく振り返った拍子に、心臓が変なところまで飛び跳ね、そのまま私の体も宙を飛んで……

盛大にすっ転んだ。


「ぶっはぁッ!あはははははっ!!」


そして、裏返った情けない声をあげた私を見て、

破天さんは腹を抱えて大笑いした。

…くうぅ、そんな笑わないでください、恥ずかしい……。


「え、あ……申し訳ありません。

驚かせるつもりはなかったのですが……

どこか痛むところは御座いませんか?」


本日二度目ぐらいの醜態を晒した私が顔を真っ赤にして立ち上がれずにいると、

雅火さんがすぐに手を差し出してくれる。

その手を取ると、ふわっと引き起こされて、ようやく体勢が整った。

……これ、お祭りに浮かれておめかしして来なくて本当に良かった。

簡素な服だから、砂埃を払えばすぐ元通りだ。


なんて、ほっとしたのも束の間――。


「なぁ……ところで探偵は、

ワイらの“呪い”に興味があるんか?」


「え……な、なんで知って…?!」


雅火さんに整えてもらい、私がようやく呼吸を落ち着けたところで、破天さんがまたも唐突に爆弾みたいな質問を投げてきた。


ドクン――と、大きく心臓が跳ねる。


……どうして?

どうして私と永護が呪いの話をしていたのを知ってるの?!

聞こえてたの?いや、まさか……。


これ以上踏み込んでしまっていいのかどうかも不安になり、口を濁していた時。

隣の雅火さんが、自分の獣耳を軽くつまんで申し訳なさそうに言った。


「生憎、この耳も機能はしているので……。

なんだか、すみません……。

今後は聞かない方が良さそうな会話内容は、

耳を塞ぐなりして気をつけますね……」


「え、あぁ……ご配慮ありがとうございます……。

でも、なるほど……つまり永護との会話は、

お二人にバッチリ聞こえていたと……」


頭を抱えたくなる現実。

そりゃあ聞こえますよね……その耳なら……。

はぁ……もう聞かれちゃったんだから仕方ない。

ここは覚悟を決めて、正直に答えよう。


「……そうですね。

皆さんは呪いの事なんて考えたくもないと思うんですけど……

私は……もっと、皆さんの事を知りたいと思っていて……」

「う、ッうぅ……うぅ……」


しかし、自分の思っていた事をおずおずと告げた途端、破天さんが謎の呻き声をあげ始めた。


「へ……え?!」


驚いて破天さんを見ると、

肩を震わせて俯いているではないか?!

……え、な、何?!

やっぱり呪いはNGワード?!

怒ってる?!いや、苦しいの?!

…ええい!とりあえず謝らないと!!

私はそう考えて、あたふたしながら、様子のおかしい破天さんに駆け寄って頭を下げた。

怒られる前に謝る!先手必勝だ!


「あの、ご、ごめんなさ――!」

「う、うおぉん…! ええ子やなぁ! 探偵は!!」


「ぐへぅッ?!?!」


とにかく謝ろうと、口を開いた私に破天さんの力強い抱擁が覆いかぶさった。

途端、私の目の前は真っ暗になる。

え…これはハグ…されてる?

なら、とりあえず怒られてはいないのかな……?

んん??て、ちょ…待って、なんか力強い…?!

折れる折れる!

私は破天さんの腕の中で状況を理解する前に意識がおさらばしそうになった…。


何が起こっているんだコレは…やっぱり破天さん、本当は怒っているのかもしれない。


───ミシッ…。

「ッあ…」

……私の骨を、ボキボキに折り曲げたいくらいは!



「ちょ、ちょっと兄者!

探偵さんが潰れてしまいますよ!

ご自分の馬鹿力をご存知でしょう!!」


「はっ……! あっと、か、かんにんな探偵!

……ワイらの呪いを心配してくれるヤツは珍しいもんで、つい……」


背骨から不吉なひび割れ音が聞こえ始めた時、雅火さんが慌てて私を奪還してくれた。

すると、指摘された破天さんは申し訳なさそうに私に謝る。


あ~……なるほど。

あの呻きは怒りじゃなくて感激か……。


行動は激しすぎたけど、怒っていなかったと分かった瞬間、私は心の底からホッとした。

……骨は泣いていたけれど。



「まぁ…呪いにかかっていない翠山の民で無い方々は、気味悪がって私達の呪い事情など、知ろうともしてくれませんからね……仕方の無い事ですが」


「え……そう…だったんですか…」


雅火さんの言葉を聞いた瞬間、胸の奥にどっと重たいものが落ちた気がした。


普通の人だって、心や身体に足りないものがあるだけで苦しい。

ましてや彼らの“欠け”は魔王の呪いによるもので、努力で補えるものではない。

あって普通の原動力が無いだけでも辛いはずなのに、周りに遠ざけられて腫れ物扱いされるなんて……

今まで一体どれだけ傷付いてきたのか…。


それに……彼等は小夜家の四山領主だ。

多くの人から目を向けられる立場であるが故に、

浴びてきた余計な偏見や恐怖の視線は、きっと私が想像するよりずっと深い。



「ワイはな、“眠れなく”なってもうたんや…

奪われたのは眠気の原動力やからな!」


「え、じゃあ…夜はどうやって?」


考え込んでいたところに破天さんが突然“自分の呪い”をぶっ込んできて、驚きすぎて反応が遅れた。

けれど内容を理解した瞬間、さらに目を見開いた。


"睡眠"――それは三大欲求のひとつ。

それを奪われたら、体と心へかかる負荷はとんでもないはずだ……。



「フッ…聞いて驚くんやないで?

自分で自分ぶっ叩いて、気絶しとるんや!」


「え……えぇーーーーッ?!?!」


まさかの回答に私は思わず目を剥く。

予想の三万倍くらいワイルドだった。


「休息っちゅうのはな!横になっとればええんや!」


本人は涼しい顔で言うけれど、いや……いやいやいや!

確かに破天さんは普段から元気そのものに見えるし、体力ゲージ無限大みたいに動き回っているけど……。

……なんてタフな精神力なんだ。

むしろこの人なら呪いごとぶん殴って自力で呪いに打ち勝てそうな気がしてきた。


あれ?私の心配、不要だったのでは……?

さっきまでの不安が一気に吹き飛びそうなパワフルさに安心さえおぼえる…。

この人…何があっても動じないんじゃないかな?

そう思い始めた矢先だった。


「ど、ど阿呆!!!」

「ぅがッッッ……!」


破天さんの姿が、唐突に私の視界から消えた。


「…………え?」


正確には、雅火さんの怒涛のツッコミ拳で、

破天さんが一瞬で遥か彼方に吹き飛ばされたのだ。

あまりの勢いに、私は口を開けたまま固まるしかなかった。


「兄者! 貴方まだそのやり方で(強制的に)寝てたんですか?!

危ないですからやめてくださいとあれほど!」


「み、雅火様……!

どうか落ち着いて下さい。

破天様が……吹き飛ばされて、ボコボコです…!」


まるでお豆みたいに軽く飛ばされた破天さんを、

さらに追撃しようとする雅火さん……。

それを見て、ずっと黙っていた永護が流石に慌てたのか制止に入った。



「……。」


そして、

この怒涛の光景に置いていかれた私は――。



「え、こわ……」

と、ただ小さく呟くしかなかった。


いや、雅火さんのツッコミ火力も大概だと思う。



✿ ✿ ✿ ✿



「す、すみませんでした!兄者!!」


…その後、自力でこちらへヨロヨロ戻ってきた破天さんに、雅火さんが勢いよく頭を下げた。

陽が逆光で差しこむこの角度、二人の姿がやけにくっきり見える。


「ハハッ…気にせんでええよ、雅火…。

ワイは、この通り…ピンピン……しとる、で……」


当の破天さんは、ニコニコ笑っているものの……どう見てもピンピンしてない。

身体のあちこちに砂埃がつき、髪は跳ね、口元には血の滲んだ跡まである。かなりの重症だ。

……いや、よく生きて戻ってきたなこの人。


「大丈夫…なのかな……?」


思ったまんまの感想が胸に浮かび、私はそっと破天さんを見つめた。


――というか何だったんだ、今の茶番は。



特殊な…兄弟喧嘩?に困惑したまま、

私が二人を眺めていると、今度は雅火さんが気まずそうに咳払いをした。


「コホン……そうでした。

呪いについてのお話でしたよね…?

はい。では、気を取り直して……」


彼はそう言うと、

ゆるく前髪をかき上げ、真顔に切り替える。


「僕にかけられた呪いは──

“食物を身体が受け付けなくなる呪い”。

食欲の原動力が無いので、お腹が空かないのですよ」


「えぇ?! 今度は食欲?!」


さっきは睡眠、今度は食欲……。

三大欲求がどんどん削られていく二人に、本気で心が痛くなる。

というか呪いよりも、健康状態が心配になってくる…。


「あの……じゃあ、どうやって栄養補給を…?」


思わず身を乗り出して問うと、雅火さんはふっと微笑んだ。


「簡単な事ですよ。

栄養だけを取り出して摂取する術を開発したんです」


「な、何それ?!全然簡単じゃない!すごすぎる…」


破天さんの“自分で殴って気絶寝”とは真逆の、安全かつ健康的で知性の極みみたいな対抗策。

この兄弟、方向性こそ違うけれど、どっちも規格外だ…。

なんて、私が感心していると、

破天さんがぽつりと雅火さんへ提案を投げた。


「口に含んで、よーく味わえば少しはマシになるんとちゃう?」


「いえ。残念ながら、食物を口に含む事自体が受け付けないので、無理です」


そしてあっさり却下されていた…。

なんだこの二人…それぞれ過酷すぎる。


「なんというか…本当に、大変ですね……」


私は胸がぎゅっと締めつけられるような思いでつぶやいた。

そんな時、ふと頭に浮かぶ。


「そういえば……

アルテはどうやって呪いに対抗してるのかな……」


ぽろっと出た私の疑問に、永護がぴくりと反応した。

破天さんと雅火さんの顔にも一瞬、影のようなものが走ったのに……その時の私は気づけなかった。


「………姉上の…呪いは…」


「ん?永護、今なにか言った?」

「……いや、何でもない」


永護は小さく首を振り、いつもの無表情に戻る。


?、なんだろう…少し気になるけど……まあ、いっか。

そう思いかけた頃、別の疑問が湧いて、

私は再び永護へ向き直った。


「あ、そういえば永護。

さっき言ってた“トラブル”…?

どうして今日確実に起こるってわかったの?」


すると永護は少しだけ視線を上げ、静かに答えた。


「あぁ、説明を忘れていたな。

それが俺の“異能力”。

確定している未来が見える……“予知夢”の力だ」


「す、凄い!そんな異能力があるんだ!」


「いや、こんな力……凄くなんて、ない」


私が永護の異能力に感激して目を輝かせると、

彼はそれを即座に否定した。


「どれだけ鮮明に見えたとしても……

確定した未来は変えられない。

見えるだけで、止める事はできない。

今回だって……

“起こる”とわかっていたのに、何もできなかった。

この力は……俺は、ただの役立たずだ」


その声には、ずっと抱えてきた痛みがにじんでいた。


「ッそんな事ない!」


自分を否定し続ける永護を見ていられなくなって、

私は思わず叫んでいた。


「止められなくても、“起こる”ってわかれば身構えられるよ!

未来は変えられなくても、被害を減らすことはできる!

知る事って、すごく強い武器なんだよ、永護!」


どんなトラブルも、いつ何時、何処で、どんな事が起こるかは分からないものだ。

だからこそ…たとえ曖昧でも、確実にトラブルが"今"、"此処で"起こるとわかれば、対応はしやすい。


「探偵さん……」


表情こそそのままだが、永護の瞳がわずかに揺れた。

すると破天さんと雅火さんも近寄り、彼の肩に手を置いた。


「探偵さんの言う通りですよ、永護。

貴方の事を役立たずなんて思う者は、誰一人としていません。何があろうと貴方は、僕達の自慢の弟です。

大丈夫……共に戦いましょう!」


「せやで永護!

お前の予知夢が無かったら、今頃ワイらは家でだらけとったわ!ワイがここで結界張っとるんも、お前のおかげや!……な? 三人で被害抑えるんや!」


私が永護の手を引いて破天さんと雅火さんの下へ連れて行くと、二人も永護を勇気づける声をかける。

…その時、私達を交互に見た永護の瞳に

強い光が宿った……気がした。


「兄上方……はい。

全力……いえ、死力を尽くします」





わぁ……。

なんか……すごくいい場面……なんだけど。

……ちょっと待って、破天さん。

今さらっと“結界張ってる”って言いました?

え、結界ってなに?これから何が来るの?

とんでもなくヤバイやつじゃないのそれ???


三人が絆を深めている横で、私は静かに不安を膨らませていた。


……あ、まぁ、それは一旦置いとこう。

今はトラブル対策だ!

来るなら来い! 魔物でも怪物でも!


三人の背後にそっと並びながら、私は心の中で拳を握った。


「……。」


……べ、別に永護の言った“トラブル”が怖いわけじゃない!!

決ッッッして!!!!!

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