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生彩放つ無神世界  作者: 美緑
〜第七章〜破壊讃歌
58/89

聖獣の友

内戦が終わってから暫く、帝国には何の変哲もない――

いつも通りの、穏やかすぎるほど平凡な日常が流れていた。


けれど、もうすぐ帝国最大の行事である芸術心祭が開催されるため、

どの地域でも徐々に祭りの準備が本格化し、

街を歩けば、どこからともなく木槌の音や飾り付けの香りが漂ってくる。

帝国全体がお祭りムードに染まりはじめていた。


そんな中、私はというと――


翠山のふもとで、お祭り用料理に使う食材を調達していた。


翠山は帝国内でも屈指の自然豊かな土地だ。

澄んだ空気に、森の奥から聞こえる鳥の声。

足元には朝露を含んだ草がきらりと光り、

山道のあちこちに点在する小さな畑や水場には、

地元の人達が丁寧に育てた食材が所狭しと並んでいる。

野菜や穀物はもちろん、川魚、山の獣肉、

さらには調味料の元になる薬草や木の実まで勢揃い。

種類の多さも質の高さも、帝国内では頭一つ抜けているのだ。


そのため、翠山には腕の立つ料理人が多く、

どの飲食店に入っても「外れなし」の絶品に出会える。

料理以外にも、絵の具・墨・紙・筆といった画材が豊富で、画家にとっては宝箱みたいな場所でもあった。



「う〜…迷う!どれも美味しそう!」


私は翠山中の飲食店をほぼ一周し終え、

山風にひらひら揺れるレシピ候補のリストを片手に、

ひとり野外テラスの椅子に腰を下ろして唸っていた。


そこに並んでいるのは、翠山の店々の名物料理や、

個人的に「これ絶対うまい!」と心惹かれた一品たち。

どれも魅力的すぎて、逆に困る。


そうそう。

何故こんな事をしているのかというと――


なんと光栄なことに!

祭りで出される屋台料理の一部メニュー案を、

私が担当させてもらえる事になったのだ!

もちろん実際に調理するのはプロの料理人だけど、

それでも責任重大な役目で……緊張でお腹が捩れそうだ。


例の聖水汚染事件のあと、私は時間があるたびに

神具の見張り番をしていたのだが、

その謝礼として、レインが特別にこの役目を任せてくれたのだ。

さらに、お祭りの屋台で好きな物を

無料で食べられる券まで貰った。

……この帝国、物価が謎に安いので、

それをオマケとして受け取ったのは秘密である。

いや本当に、庶民の味方すぎる値段設定なのだ。

(ちなみに通貨単位は“プラッチ”。なんかかわいい。)


帝国に来たばかりの頃、私にはお金なんて無かったが、衣食住に必要な最低限の資金は帝国が給付してくれた。

他所者相手でも助けてくれる、

この国にしては珍しく“良心的な制度”である。


これを定めたのがコンドの叔父、

あのリータクト様だと聞いた時は、そりゃもう納得だった。

身分制度を緩和し、民に惜しみなく資金を回すことで

誰もが平等に生活できる環境を作った――

帝国史に刻まれる名英雄。

コンドが憧れるのもよく分かる。


ともあれ、この国は金銭面に関しては本当に優しい。

身分制度も緩く、貧困で苦しむ民を私は見た事がない。

帝国軍に所属してからは、

私にも月 25万プラッチ のお給金が出る。

魔物討伐など危険任務があれば、

追加で 30万プラッチ。

下っ端にしては破格と言っていい。

――とまあ、話がものすごく逸れたが。


この役目はたとえ謝礼であっても、私は全力でやりたい。皆が文句なしに美味しいと唸る料理を、絶対に揃えなければ……!


まぁ…先ずは料理を決めないと食材調達が開始できないのだが…。


…と、そんな事情があって、

私はリストと睨めっこを続けていた。


✿ ┈ ⋯ ┈ ✿ ┈ ⋯ ┈ ✿ ┈ ⋯ ┈ ✿


…暫くの間、そうしていた私だが

不意に、周囲が騒がしくなった事に気が付いて、

ゆっくりと視線を上げた。


……ん? なんだろう。

さっきまで静かだったのに、急にみんなそわそわしている。

不思議に思って騒ぎの中心へ視線を向けると、

人だかりの向こうに、見覚えのありすぎる髪色が見えた。


影のようなグラデーションが印象的な白翠色。

そして、薄い藤色が光を受けて柔らかく揺れている。

――アルテとソフィアだ。


さらにその近くには、護衛役の永護、そして……

アルテの明晰夢内(異能力)でしか見たことのなかった翠山の四山領主長・"翠雨"様の姿まであった。


私は初めて"直接"翠雨を見て、

その目を輝かせてしまう。

……わぁ……綺麗な人……。

柔らかい陽光がその髪と九つのしっぽに反射してきらめき、凛とした横顔には涼やかな気品が宿っている。

思わず、そのまま見とれてしまいそうになった

――が。


「止まれ! 其れ以って上、領主様方に近づくな!」


…どうやら、騒ぎの内容は

呑気に見ていられる物では無いようだ。

あの大人しそうな永護が、怒りを隠しもせず

よく通る声で誰かを叱責している。


───えぇ?!

永護がここまで怒るって、何したの!?

怒鳴られてる人、早く謝った方がいいんじゃないかな?!


私は軽く混乱しながら騒動を見ていた。

…と言っても、

周りに沢山人が集まっているので、ここからだと怒鳴られている者の姿は全く見えていないのだが…。


「ま、待ってくれ!お願いだ!

領主殿!これには深か訳があるばい!」


「ッまだ言うか……。

これ以上の無礼は許さぬ。早急に立ち去れ。

さもなくば――斬る」


怒鳴られている者は、なんだか必死で……

どうやら翠雨様に話を聞いてほしそうな様子だった。

だが、それでも永護は容赦なくその者を突き放している。

なんだか空気が不穏だな…大丈夫かな?


「か、刀ば抜いて……俺ば本気で斬る気か……?

領主殿に聞いてもらえるまで、俺は動かんぞ!

そ…それに!いくら領主殿直属ん護衛であったっちゃ、人ば殺めりゃ、領主殿ん顔に泥ば塗る事になるぞ!ッしゃ、しゃぁ領主殿!

早うコイツば止めたらどうばい?」


「ッ貴様……よもや、翠雨様を脅迫する所存か?」


怯みながらも接触を諦めないその者は、

ついに翠雨様へ脅迫じみた言葉を放ってしまった。

それを聞いた私は、遠い目になる。

うわぁ…あの人、絶対バカだ……。


事情は知らないけど、この場の反応だけで

悪いのは、あの人だと確信した。



「ッ……そんな睨まんでよかろーもん!

お前ら護衛は威嚇ばすりゃよかっちゃろ?

どーせ本気で斬れんとやろ?

こげん昼間っから血ィ見せたら評判ガタ落ちばい!」


刀を構えた護衛の目の前で、

よくまああんな挑発を吐けるもんだ。

度胸があるのか、やっぱりただのバカなのか……

もう判定不能である。


「ほら、早う刀ば下ろさんか!ビビらせて何が楽しかとね!?」


永護の刀がカチリと音を立て、

空気がさらに張りつめた――その時。


「……よい、永護。お前は翠嵐達の傍へ」


翠雨様がその一言で彼を制した。


「し、しかし……!」


「この程度、些事に過ぎない。

お前がその手を汚すまでもないでしょう」


何を思われたのか、翠雨様は護衛である永護に、自分の後ろへ下がるよう指示を出す。

当然、永護も戸惑いを隠せない様子だったが――



「私自ら、彼の者に対応しよう。

……よいな、永護?」


「ッ……御意のままに」


二度目の言葉に、渋々ながら従っていた。



……なぜ翠雨様が自ら対応しようと考えたのか。

他の野次馬と同様、現状ただの外野である私には、

やっぱり把握出来なかった。




「……。」


――でも、一つだけ。


翠雨様が相手に対して

“かなり怒っている”

ということだけは、はっきりと感じ取れた。



…“対応”って……。

あの人、どうなるんだろう……。

胸の奥でひやりとしたものを感じながら、

私は緊張でゴクリと唾を飲み込んだ。



✿ ┈ ⋯ ┈ ✿ ┈ ⋯ ┈ ✿ ┈ ⋯ ┈ ✿



あれから、どれほど時間が経ったのだろう……。


気づけば私は、長い腰掛けの上で横になっていた。

結局一品も決められていない料理の候補リストを片手に握りしめたまま――

どうやら本気で居眠りしてしまっていたらしい。


「うーん…しまった。時間、無駄にした……」


私はのっそり体を起こし、すっかり茜色に染まった空と、まっしろなままの候補リストを見比べて、深くため息をついた。


…それにしても、妙に静かだな?

辺りを見渡すと、あれほどの騒ぎが嘘だったかのように、町は穏やかな夕暮れに包まれていた。


結局あの騒動は何だったのか――

気にならないわけじゃない。

けれど今は料理の方が大事だ。


私は腰掛けから立ち上がり、

再び候補リストと真剣勝負を始める。


……が、やっぱり気になるものは気になる。


あの場にいた永護やアルテ、ソフィアに、

あとでさりげなく聞いてみようかな……。

そんなふうに

寝起きの頭を無理やり働かせていたそのとき――


「ん?貴方は……もしや、翠嵐の友人ですか?」


「……んぇ?あ!は、はい!!……えっ?」


聴き慣れない、けれど耳に心地よい美しい声に呼ばれ、私は勢いよく顔を上げた。


状況がまったく飲み込めないまま返事をしてしまった私は――

声の主を見た瞬間、カチンと固まった。

今のが、この山の領主長……"翠雨"様の声だと理解するのに、ほんの少し遅れてしまったのだ。



───えぇぇぇ?!翠雨様?!何でここに?!

「そッ、そそそ、そぉうです!!わ、私!

アルテ……さん、の友人です!!

た、た、た、探偵といいますッ!

ご、ごきげんよう……領主様!!」


まさか彼女と直接関わる事になるなんて全っっったく想定していなかったので、焦りに焦り……

慌てて姿勢を正し、深々と頭を下げる。


……第一印象、絶対最悪だよねこれ。

動揺しすぎて噛み倒した私は、頭を下げながらひとり勝手にしょんぼりしていた。

しかし――その不安は杞憂だった。


「ふむ…」

翠雨様は、頭を下げた私を見て、

驚くほど柔らかな微笑みを浮かべられたのだ。


「…貴方は外から来たと、あの()――

翠嵐から聞いていましたが、

既に私のことをご存じなのですね。

礼も作法も様になっています。

……さぁ、もう良い、顔を上げなさい。探偵」


恐れ多さに胸が縮みながら、私はそっと顔を上げた。

と、その瞬間――翠雨様と目が合い、

まじまじと見つめられる。


「ッ?!」


な、なんでそんなに見つめるんですか?!

私なんか変なもの付いてる?!

やめて、恥ずかしい!!

――ハっ!もしかして翠雨様も竜眼を?!

心を読まれてる?!

今は読まないでぇ……!


……と、ひとりで脳内大暴走していたのだが――

当然、妖族の翠雨様は竜眼など持っていない。


ただ私の想像力が暴走しただけである。



「……日の聖獣、フェニシアを驚かせたのは、

貴方だったのですね」


翠雨様が口にしたのは、

予想とはまったく違う言葉だった。


え、フェニシア?!

なんでその名前が――?


「へ? あっ、はい……そうです。

ど…どうしてそれを?」


驚きつつ尋ねると、翠雨様は少し困ったように眉を下げた。


「聖獣フェニシアとは古い付き合いでして。

貴方や、皇子――宝珠のことまで、

この山での出来事はおおよそ把握していますよ。

あれしきで咎めるつもりはありませんが……

フェニシアは、この山を瘴気から守る大切な聖獣。

とても繊細な子なのです。

次は驚かせぬよう、気をつけなさい」


「っは、はい!! 絶対に気を付けます!!

あと……領主様のご友人を驚かせてしまい、

本当に申し訳ありませんでしたぁ!!」


まさか、あの聖獣と翠雨様が交友関係にあったなんて……。

私が必死に謝っていると、翠雨様はふいに不思議そうな顔をされた。


「今……なんと?」


「え? 申し訳ありませんでした……?」


「……その前です」


「えっと…?領主様のご友人…を……?」


”友人”……。

その単語を聞くと翠雨様は短く息を呑み、

ほんの一瞬だけ表情を緩められた。


「――フェニシアと、私が。……友人」


その呟きは、とても静かで、どこか愛おしさが滲んでいた。

すぐに凛とした表情へ戻ると、私に向けて改めて一礼される。


「貴方の謝罪は受け取りましょう。

そして……遅くなりましたが、翠山へようこそ。

我が愛孫の友人。

領主として、心より歓迎します」


「ッ、光栄です! 領主様!」


アルテの友人として、正式に認められた――!!

ひゃ、ひゃぁ……嬉しい……!!

私は感激して、もう一度深々と頭を下げた。

すると翠雨様は穏やかに微笑み、静かに言葉を続けられる。


「どうかこれからも、あの()――

翠嵐をよろしくお願いします。

良き友として、傍にいてあげてください」


「! ……はい! います!ずっと!友達なので!!」


即答する私に、彼女は優しい目で小さく頷かれた。


「頼りにしていますよ……幼き勇士」


そう言い残して歩み去る姿は、

夕暮れの光を受けてなおいっそう美しかった。




───そしてその後も、

私の手には綺麗なままの候補リストが残り……

空は完全に夜へと沈みつつあった。

……うぅ、無念。

結局今日も料理、決められなかった……!






…というか、結局あの騒動については何ひとつ聞けないまま終わってしまった。


この日はそう思った私だったが、後日……

町で永護とソフィアにばったり出会ったことで、

ようやく騒動の真相を知ることができた。



なんでも……

あれはフェニシアに関わる事件だったらしい…。


永護に斬られかけていたあの男は、なんと

フェニシアの色鮮やかな羽を無理やりむしり取ろうとしていたという。

どうしてそんな愚行を…?と私が眉をひそめると、

ソフィアが静かに教えてくれた。


「単純に、聖獣の珍しい羽で

一儲けしようとしただけ…だって」


「いや、馬鹿なの?」

私の本音が思わず口をつく。


すると普段は穏やかなソフィアまで、

呆れと怒りを滲ませて言った。


「うんうん、だよね…。

聖獣を私欲の為に傷つけるなんて、

到底許せないよ……」


永護も黙ったまま、深く頷いていた。

物価がこんなにも安いこの国で、お金のために犯罪へ走るなんて……どれだけ欲深いんだろう最低すぎる。


永護があれほど怒っていた理由にも納得がいった。

今回の騒動で、この国には

とんでもなくしょうもない人間がいるのだと再確認した。




――でもまあ。


私が今回知れたことは、それだけではなかった。

初対面があんな状況だったのはどうかと思うけれど、

騒動のせいで外に出ていた翠雨様に、

私は結果的にきちんと挨拶することができたし、

あの人の人柄にも触れられた。


これは私の憶測にすぎないけれど……

あの時、翠雨様自らが対応しようとしたのは、

友人であるフェニシアを守りたい一心……だったのかもしれない。


そう思い返すと、穏やかに微笑む翠雨様の姿が

胸の奥をじんわりと温かくしてくれた。



「……あ、」

……そういえば、もう一つだけ…

不思議に思っていたことがある。


芸術心祭の準備で忙しいはずの

里の巫女・ソフィアが、なぜカテドールフェアリーではなく翠山にいるのか——

その理由を私は知らなかった。


……ので、

疑問を晴らすべく、そのまま彼女に尋ねてみた。


「ところで、ソフィアはどうしてここに?」


興味津々で見つめる私に、ソフィアは

どこか気恥ずかしそうに答えてくれる。


「実はね……芸術心祭の“逆さクラゲの舞”で、

不治の病を祓う薬を撒く“病祓者”の役を任されてるの。

でも私はまだ一人前じゃないから、前担当だった翠雨様の下で舞の稽古や楽器の練習を教わってるんだ。

毎年この時期は、こうしてお邪魔してるの」


そう言って、ソフィアはスケジュール帳を開いて見せてくれた。


…うわ、予定がぎっしり。

舞、作法、楽器、打ち合わせ——

祭りに向けた稽古がびっしり詰まっている。


「すごい…ソフィアの舞、楽しみだなぁ!」


私が心からそう言うと、ソフィアは

嬉しいのか照れているのか……複雑そうに肩をすくめた。


「そんなに期待されると緊張しちゃうな…。

デボティラの前で踊るのも初めてだし……」


「へ?……あの人もお祭りとか参加するんだ?」


私の“デボティラ=お祭り嫌いそう”という勝手なイメージに、ソフィアは苦笑しながら首を振った。


「参加というより…長年、お祭りの主催者だよ。

お祭りでは、私よりずっと重要な役割を担ってるの。

私も今までは儀式に参加してたけど、舞の披露は

ずっと翠雨様が担当してくれてたから……。

だから今回が初めてなの。

やっぱり不安だな…失敗したらどうしよう」


「ほへ〜…意外。

デボティラが主催者だったんだ……」


一応、民の為に仕事はしてるんだな…あの人。

ソフィアを振り回すあの態度さえなければ

もう少し好印象なんだけど……。


「でも大丈夫だよソフィア!

こんなに頑張ってるんだもん、絶対素敵な舞になるよ!

それに、もし本番で失敗してデボティラが

努力を全部バカにするようなこと言ってきても、

そんなの相手にしなくていいんだよ!

ソフィアは凄いし、偉いんだから!」


嫌味ったらしいイマジナリーデボティラをボコボコにしながら言うと、ソフィアはぽかんと目を丸くした。

我ながら語彙力のない励ましだった気がして少し不安になるが、その時ソフィアがぽつりと言った。


「相手に……しなくてもいいの?」

「いいの!」


私はその呟きを聞き逃さず、大きく頷く。


「ソフィアのことは、ソフィアにしかわからないの!

毎回毎回デボティラにどうこう言われる筋合いなんてないよ!

自分のことは、いッちばんの理解者である自分が!評価してあげなきゃ!……ね?」


デボティラはソフィアに過干渉が過ぎると思う。

選択肢を与えられた時、彼女が他者よりも優柔不断になってしまうのは、きっとデボティラの影響が大きいんだ…。

……なんて思い切って、こんな事言ってみたんだけど…

いきなりこんな事言って、ソフィアを困らせていないかと…急に心配になってきた。



「自分が…私が、私のいちばんの理解者…?」


恐る恐る彼女の様子を伺うと、意外にも……

ソフィアは新しい発見をした子どものように目を輝かせていた。


「自分のことは、一番の理解者である自分が……」


慎重に、何度も噛みしめるようにつぶやき、

そして顔を上げると——


「うん…うん!ありがとう、探偵さん!

なんだかね、心が軽くなった気がするよ!

そうだよね……私のことは私自身が一番、わかってるはずだもん。

本番は不安だけど、自分が納得できる舞を目指してみる!

なんか、やる気が湧いてきた!

翠雨様に稽古つけてもらわなきゃ!」


彼女は私の返事を待たず、軽やかな足取りで走って行った。


「え…?あ、待たれよ!ソフィア嬢!」


そして永護は置いていかれた…。


おそらく今日は、ソフィアの護衛を していたのだろう…。

永護は私に一礼だけすると、 慌ててソフィアを追って行った。



う〜ん……永護にはちょびっとだけ苦労させちゃったけど……でも、やっぱり


「ソフィアが元気になって良かった!」


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