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生彩放つ無神世界  作者: 美緑
〜第五章〜宝珠の行方
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二つ目の神殿

『……依代』


「ンあ〜……はいはい、どうも。

毎日よく飽きないね、アンタ」


ぼんやりとした薄明かりの中、

昨夜はアルテの異能力の影響か夢に干渉できなかった“あの人”が、まるで一昨日の続きでも始めるように、いつもの調子で声をかけてきた。


夢の空間は、相変わらず

形の定まらない霧みたいな……“どこでもないどこか”。


そこに“声”だけが鮮明だ。


「…今日は要件あるの?それとも雑談する?」


慣れた口調でそう尋ねると、

相手は少しの間を置いて、ぽつりと短い警告を落とした。


『…明日は……いつも以上に気を抜くな』


「……なんか、あるの?」


『……』

ッ黙秘かよ!


またこれだ。

肝心な部分は毎回言わない。教えてくれない。


フッ……まぁいい。

中途半端な警告やお告げには、もう慣れっこだ。


「はぁ……わかった、覚えておくよ」


素直に頷きはしたものの、

やっぱり不満は残る。だから溜息が漏れた。


「いつも、いつも…

重要なとこ伏せるの、ほんとやめてほしい」


『……そうだな』

「え……」


すると意外にも、その言葉が効いたのか、

相手の声がわずかに沈んだ。


『……すまない』


「うッ…むぐ……きゅ、急に萎れないでよ。

寡黙なアンタの助言に助けられる事もあるし…

別にいいよ。……というか」


この人に謝られると、逆に調子狂う。

私はそんな事を考えながら、

前から気になっていた疑問を投げた。


「初めて会った時も聞いた気がするけどさ……

アンタ、私とか英雄達(みんな)の事、なんでこんなに気にかけてくれるの?……一体何者なの?」


『……。』


すると夢の空間に、

一拍の静寂が落ちる。



『……今のお前に、余の正体はまだ言えん。

少なくとも、敵対するような存在ではないが……』


「ふぅん…?」


やっぱり答えない。

夢に無断で入り込むのもまあ失礼だが、正体を明かさず名乗らないのもじゅうぶん失礼だ。と思う。


けど…もう今更か。


「なら、いつか教えてくれるって意味で捉えておくよ。

……そういえばアンタ、この世界に詳しいよね?

英雄とか、加護神とか……なにか有益な情報、

持ってたりしない?」


『……お前よりかはな』


おぉ悪かったな無知で。






「ッ……」

ッとあぶない。


私はいつもこんな調子ですぐ腹立ってしまい、

毎回、毎回……時間を無駄にしてしまうのだ。

…情報や知恵はきっと、力になる。

私が英雄にしてあげられる事は限られているのだから、少しでも役立つ情報を聞き出しておきたいところ……。


帝国……いや、なんならこの星全ての事をわかりきったような態度で接してくるこの人は只者(ただもの)ではない………筈。

……そうじゃないなら、ただの高慢な人だし。


「…じゃあ、今日はこれだけ聞かせてほしい。

英雄の力で、邪神に対抗することは可能なの?」


この人が知っている事を

一から百まで答える気がないのはわかってる。

だからこそ、質問を絞る事にした。


『あぁ、可能だ』


再び……夢の空気がわずかに揺れた。


『……だが邪神も、

以前より確実に力をつけているはず……。

今はただ……英雄(みな)の成長を祈るしかない』


「そう……」

なんてこった。


英雄だけじゃなく邪神まで強くなるのか……。

瘴廃国のあの地獄みたいな光景が蘇り、身体が震えた。

あんな惨状を作った神が、更にパワーアップしてきたとしたら……うん、勘弁してほしい。たまったもんじゃないよ。


まぁ……不利な事に変わりなくとも対抗できる可能性があるだけマシか。

英雄達(みんな)だって、覚醒すればもっと強くなる。

勝てる……と信じたい。

彼らも、十年前の悲劇を繰り返すまいと動くはず……。




『…やはり……夢だけでは……』


私があれこれ考えていると、相手が何か呟いた気がしたけど……ぼんやりしてよく聞こえなかったので、スルーした。


どうせ重要なことを話してくれるのは、

もっと……ずうーーーっと先だろう。

むしろ聞けるかどうかすら怪しい…。


そんなことを考えているうちに、

夢の世界の光がゆっくり薄れはじめ────


今日もまた、

私の………いや、"私達"の夜は明けていった。



✿ ┈ ⋯ ┈ ✿ ┈ ⋯ ┈ ✿ ┈ ⋯ ┈ ✿


夢の世界から抜け出した私は、

すぐにリハイトの家へ向かった。

昨夜の件で、

ちゃんと感謝を伝えておきたかったのだ。



まぁ実際伝えたら…


「……あれはお前への“恩賞”なんだから、

礼を言われる筋合いは無い」


……なんて可愛げのない返答が返ってきたけど、

なんとも彼らしいと思った。


私は苦笑しながらも考える。


やっぱり英雄達は感謝される事に免疫がない。

……なさすぎる。

ここ数ヶ月欠かさず感謝をぶつけまくってきたけど、まだ“感謝を素直に受け取る”事に小さな戸惑いが見られる。



……でも、


「ほらさっさと行け、今日も仕事が山積みなんだ」


なんて軽口で悪態をつきながらも、ほんの少しだけ…彼の眉が緩んだのを私は見逃さなかった。


「ふへへっ……うん!行ってくる!」

……少しは感謝を受け取ってもらえたのだと、

そう思うと、口元が緩んだ。


✿ ┈ ⋯ ┈ ✿ ┈ ⋯ ┈ ✿ ┈ ⋯ ┈ ✿



「おはよ〜コンド」

「おはよう探偵。早いね」


早いね…なんて言ってる本人の方が準備万端で、

髪も装備もきっちり整っているあたり、

さすがコンドというか……。


「じゃあ行こうか。

少し遠いから、昨日みたいに飛んで行こう」


「!わかった、よろしくねコンド」


彼は当然のように私を背負い、

そのまま羽を広げて空へ舞い上がった。

これで飛行移動は三回目だ。

私は飛行経験が少ないわりに、

高いところでもわりと平常心でいられる方だと思う。

…まぁ、全部“自分の飛行術”じゃなくて、

人の力を借りてるだけなんだけど……。


空の近さや雲の白さも、風の冷たさも、

地上よりずっと鮮明だ。

だからだろうか……

怖さより、心地よさが勝つ。


……怖いのはホラー系だ。あれだけは無理。

でも魔物に対する耐性は、

前よりずいぶんついた気がする。

戦える力があるからだろうか…。

だとしたら、熱心に魔法を教えてくれたレインのおかげだ。ありがとうレイン。



そんなことを考えながら、

コンドの背中で密かに

“感謝リスト”を更新していたら──


「着いたよ、探偵」


いつの間にか目的の神殿に到着していた。

短時間で遠方に行ける飛行術は、本当に便利だ。

しかも、レイン曰く、

この飛行術は“私でも習得できる”らしい。


……それを聞いた瞬間、

私の中のやる気スイッチが完全にONになった。


だって便利だし……

あ、いや。違う。

“誰かの手を煩わせたくない”が一番の理由だ。

移動が楽だから……なんて、怠惰な理由じゃない。

うん。



でも実際、

飛行移動の快適さを知ってしまった私は……


「レインから次に教えてもらう魔法は飛行術だな」


神殿の前で、やる気に満ちた目になっていた。

完全に味をしめている。

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