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生彩放つ無神世界  作者: 美緑
〜第五章〜宝珠の行方
43/89

日の聖獣☀︎*.。

待ち合わせ場所に近づくにつれ、

空気がひんやりと変わった。


翠山特有の鋭い風が、

木々の枝を揺らして擦れ合う音を響かせている。


そして──


指定された場所に着いた私達は、

予定通り"案内役"と落ち合うことができた。



わぁ……!

かっこよくて綺麗な人だぁ…!


そこに立っていたのは、

頭にすらりとした二本角を生やす鬼族の女性だった。


艶めく黒髪は驚くほどまっすぐに腰まで流れ、

凜とした気配に自然と背筋が伸びる。

紅桔梗色の瞳は深く澄んでいて、

ただ立っているだけで威厳を感じさせた。


「……そなた等が、英雄か?」


その女性は開口一番、

静かだがよく通る声で私たちに問いかけた。


「はい、僕は神域の五英雄が一人……

コンド・クトールと申します」


「えっと……私は英雄じゃなくて、

付添っていうか……護衛役?です」


私たちがそれぞれ答えると、

鬼族の女性はゆっくり頷いた。


「うむ、よくぞ参った。英雄と、その連れの兵士よ。

そのように畏まらずともよい。

妾はただの"縁切り仙人、やよゐ"。

"加護神の補佐を務める者"じゃ。

故に、そなた等英雄の宝珠は……今後、妾が管理することになる」


「加護神の……補佐?!」

「然様…」


さらっと言うけれど……

“加護神の補佐”なんて、相当な肩書きじゃないの!?


「はぁ、まったく……。

悪用する不届き者さえおらねば、

妾の働きもいくらか楽になるものを。

嘆かわしいことじゃ……」


す、すごい人……じゃなくて、

すごい“仙人”さんだ!

……ところで縁切り仙人ってなんだろう?

縁結びとは違うのかな…?


私が首を傾げていると、

やよゐさんは踵を返して歩き出した。

歩幅こそゆっくりなのに、

その背中からは隙のない気配が漂っている。


「……今日は、小夜家の()の代わりに、妾がそなた等を祠まで案内しよう」


「お願いします──いや、よろしく!やよゐさん」

「よろしく!仙人さん!」


「……よろしい。では、二人とも──

 遅れずに妾の後に付いて来るのじゃぞ」


私とコンドが頭を下げると、

やよゐさんは満足げに一つ頷き、

苔むした山道へと軽やかに歩みを進めた。

私達は慌ててその後を追う。


翠山の深い緑に包まれながら……。


✿ ┈ ⋯ ┈ ✿ ┈ ⋯ ┈ ✿ ┈ ⋯ ┈ ✿



濃い霧が木々の隙間から漂い、

どこからともなく獣の気配がする。

危険な気配が……沢山、蠢いてる。



───ギュギャアァァアッ…ギィギィ…


その予感は的中し、

進むたびに魔物が飛び出してくる始末だった。

けれど──


『魔音作曲…火と水の精霊"レザー"よ。

僕…"コンド"は、君と共に譜面を辿る。

純水の刃よ、千の音を裂く調和なき衝撃を!

我が指揮のもと、蒼流は一点へ収束する。

砕け散れ、破水の音叉!

…第五詠唱、破断刃音

"ハイドロブレイク・レゾナンス"』


私に魔物が触れる前に、

コンドがすべて倒してしまう…。


魔法が空を切る音が一閃。

魔物の影が崩れる。

私の出番は……ほとんど無かった。


あっれぇ…おっかしいな……

さっきから、コンドのお荷物になってる気がする。

胸の奥がざわついて、私は思い切って声をかけた。


「ねぇコンド、私も多少は戦えるんだから

ちょっとは守らせてほしいよ。

そのために付いてきたのに……」


すると彼は、歩を緩め、

私の方へ優しい目を向けた。


「う〜ん……

探偵の気持ちは素直にすごく嬉しいよ?

でもね、英雄になってから、

護衛兵士に守ってもらう機会が少なくて…。

慣れてないんだ、守られることに。

……それに、君はもう僕にとって大切な友人だから。

僕の方こそ、君のことを個人的に守らせてほしいな」


「ゔっ……!!う、嬉しい……けど!ッも!!」


流石皇族というか、王子様というか……。

紳士的な仕草で少々カッコよすぎる台詞を返され、

私はしばらく悶えてしまった。

するとそんな私の反応を見たコンドが、ほんの少しだけ申し訳なさそうに続ける。


「……でも、そうだね。

聖獣事件の時とは違って、

今の君は帝国軍の特務隊員だ。

もしもの時は──背中を預けてもいいかな?」


「! ッ任せて……!」


頼りにされるのは嬉しい。

……たとえそれが気遣いだったとしても。


胸を張って返したその瞬間、

前を歩いていたやよゐさんが、ふいに振り返った。


「コホン…」


紅桔梗色の瞳がこちらを伺っていたらしく、

会話がひと段落したのを見計らったように、

彼女は小さく咳払いをする。


「…そなた等に教えておく。

日の聖獣フェニシアは神出鬼没で、常に祠におるわけではない。あやつは会うこと自体が難しい上、極度の内気者じゃからの。速やかに宝珠を回収できるかどうか……わからぬのじゃ」


霧の向こうから聞こえる鳥の声が、

一瞬だけ止んだ気がした。

やよゐさんの声音に、空気が少し重くなる。


「……フェニシアからの宝珠回収は高難易度任務と判断され、これは加護神からそなたへの“試練”の一部となった。……故に、妾はそなた等を祠まで案内する以外、手出しできぬ」


「なるほど……。でも、捜すべき相手がわかっていれば簡単なこと。うん!安心して、やよゐさん!

宝珠はすぐに手に入れるから」


自信に満ちたコンドの声は、霧の中でもよく響いた。

やよゐさんはその言葉にふっと表情を和らげる。


「ほう……流石は英雄よ。期待しておるぞ」


そう言うと、長い爪のついた指で

山肌の先をゆっくりと指差した。

霧の切れ間に、古びた小さな祠が姿を現す。


「ここから見えるあの祠こそ、日の聖獣フェニシアの住処…。まずは聖獣を見つけ出すのじゃ」


「「承知!」」


私とコンドは息を合わせて返事をし、

山風の吹き抜ける中、祠へ向かって駆け出した。


✿ ┈ ⋯ ┈ ✿ ┈ ⋯ ┈ ✿ ┈ ⋯ ┈ ✿


祠の中に踏み込んだ瞬間、暖かな空気が肌に触れた。


冷の聖獣ジーギスがいた迷路みたいな祠とは違い、

ここは大きな部屋がひとつあるだけの──

驚くほど殺風景な場所だった。

私は部屋の隅から隅まで視線を走らせたが、

そこに聖獣らしき気配はまったくない。


「祠の中……本当に聖獣がいないみたいだね」


「うん。やよゐさんの言っていた通りだね」


聖獣が不在なのを確認すると、コンドがぽつりと呟いた。


「普通に翠山中を探していたら埒が明かないね…。

……やっぱり、“アレ”を使おう」

 

「アレって?あ!もしかして異能力?」


何をしようとしているのか気になって、私は首をかしげた。

そういえばまだ彼の異能力を知らなかったので

期待を込めて尋ねたのだが……

コンドは腕を組み、少し難しそうな顔をする。


「う〜ん……異能力とはちょっと違うかな。

 探偵は“エコロケーション”って言葉、知ってる?」

 

「エコロケーション……?あ〜…目で見えない物も、音で場所がわかるっていう……あれ?」

 

「そう、それ。

僕は音楽の芸術に力を注いでいるんだけど、

その音の力でね──

普通の人より広範囲を探ることができるんだ。

宛てもなく探すより、効率がいいと思ってね」


「え……そんなことできるの!?すごい!!」


つい声が弾んでしまった。

アルテの“眼”も十分すごかったのに、

コンドまでそんな才能があるなんて……!


「そう。アルテの目と同じで、僕にも“少し変わった体質”があるんだ。

でもね、奇特な体質を持ってるのは僕とアルテだけじゃないよ。

リハイトやレイン、ソフィアにも、それぞれ不思議な特徴がある」


「えっ、他のみんなも!?」


思わず目を丸くしてしまう。

英雄力があって、魔法も異能力も使えて……

さらに奇特な体質まで?

あ、頭がこんがらがってきた……。


情報量に眩暈しかけていたら、

コンドが苦笑しながら続けた。


「例えば、リハイトは“神足”って言ってね。

とても素早く移動できる足を持ってるんだ」


「し、神足……!

確かに……カッドレグルントで聖獣を追ってた時、

リハイトすっごく早かった……!」


あの夜、彼と一緒に必死で走った記憶がよみがえる。

……あれは今思い返しても人間の動きではなかった。


「あれでも僕たちに合わせて、かなり加減してたよ。それから……あと二人、

レインとソフィアの体質は……実際に見たほうがわかりやすいかも」


…なるほど。

コンドはそこで一旦説明を止めた。

一気に説明すると私の頭がパンクする、と判断したのかもしれない。


実際に見る、か……。それは楽しみかも。

そんな呑気なことを考えながら、私はもうひとつ疑問を口にした。


「ねぇ、英雄(みんな)は生まれつき……

そういう奇特な体質を持ってたの?」


「ううん」


コンドはすぐに首を横に振った。


「奇特な体質は英雄(僕たち)だけが持つものではないんだ。

自分が力を入れている“芸術”の影響で修行して身につける人もいるし、アルテみたいに生まれつき持っている人もいる。

実際、僕はエコロケーションを習得するために、

“音だけで広い空間構造を把握する修行”をした。

……まぁ個人的な意見になるけど、

生まれつきの方が色々と…大変そうだよ」

 

「へぇ〜……異能力と似てるんだね…」


私は手帳を開き、メモを取りながら考える。

もし……私も“力を入れたい芸術”を見つけられたら、新しい能力とか、体質とか……手に入れられるのかな……?


そう考えると、

少しだけ……歩む未来が明るく見えた気がした。


·̩͙꒰ঌ୨__.・*’’┈┈·········┈┈’’*・.__୧໒꒱·̩

《コンド視点》


僕はそっと目を閉じ、呼吸を整えた。


魔法から派生した音の力──

“魔音”を使い、空気に細かな振動を放つ。


魔音の響きは訓練を積んでいない者の耳には届かないほど繊細な音だが、僕の耳には山の奥底から上空まで、広がる空間の形がゆっくりと浮かび上がっていく。


…事前に調べたけど、確か"日の聖獣フェニシア"は

鳥の聖獣でもあるんだよね……。

冷の聖獣ジーギスのような巨体でも、上空を自在に飛んでいたし……先ずは空を中心に捜すべきか。


僕は思考を整え、意識を上空に集中させると、

音波の向きを切り替える。


余分なノイズを削るように、

徐々に徐々に範囲を狭めていくと──

色々な音が耳に入ってきた。


羽音……これは普通の鳥。

……このざわつきは魔物だな。

……ん? 今のは…かなり大きい……。

聞いたことがない羽音だ…。




─────ファサバサッファサバサバサッッッ…


胸の奥がわずかに震えた。

これは、間違いない。


「……見つけた」


思わず短く呟いた僕に、

近くで待機していた探偵が勢いよく詰め寄ってくる。


教えて教えて!…と、彼女は

なんとも分かりやすく目を輝かせていて……


「──ふふっ」

思わず笑ってしまった。


「……行こう、探偵。

口頭で説明するより、実際に見たほうが早いよ。

フェニシアは移動がとても速いみたいだし」


「うん! わかった!!」


元気よく返事をして、探偵は僕の後ろにつく。

その気配に励まされながら、フェニシアのいる場所を目指して駆け出した。



✿ ┈ ⋯ ┈ ✿ ┈ ⋯ ┈ ✿ ┈ ⋯ ┈ ✿

《探偵視点》


コンドの背中を追いかけて辿り着いたのは、

森の中にぽっかりと空いた広場だった。


不思議とそこだけ木が生えていなくて、

空が丸見えになっている。

風が通り抜けるたび、周りの木々がざわりと揺れて、ひんやりした空気が頬を撫でた。


「……。」


広場に入るなり、コンドは立ち止まってじっと空を見上げている。

私もその真似をして、無言で澄んだ空を眺めた。


「……?」

空に何か手がかりがあるのかな…?

しばらく見つめてみたけれど、

もちろん何も起こらない…。


私は段々と首が疲れてきて、とうとう我慢できず声をかけた。


「ねぇコンド…次は、何してるの?」


するとコンドは、唇に人差し指を当てながら、

息を漏らすような小さな声で囁いた。


「静かに。フェニシアが近くにいる。

大きな音を立てたら、驚かせてしまう」


「! わ、わかった…でも空には、何も──」


そう言いかけた瞬間、

私は動けなくなった。

 

ついさっきまで何もいなかったはずの空に、

恐ろしく大きな影が浮かんでいたのだ。


「ッ───!!」

ッいつからいたの?!

と、叫びそうになった私は、慌てて口を塞ぐ。


「羽音……というか、フェニシアが出す音で行動パターンを予測してたんだ。この広場に来ると思ってね」


コンドは小さな声で説明すると、

私の手をそっと引き、近くの茂みに身を隠した。


すごい…そこまで正確に分かるなんて……。

感心している間にも、聖獣フェニシアは大きな影となって広場に降り立つ。

巨大な翼が風を巻き起こし、周囲の木々がばさばさと揺れた。


フェニシアの姿は、大きな鳥──というより、

神話から抜け出してきた怪鳥みたいだった。

顔には複雑な模様が浮かび、七色に輝く羽根は、内気者には派手すぎるくらい神々しい…。


「あれが……フェニシア…」


私は息を飲んで、茂みの陰から盗み見る。


こんな何もない場所で何してるんだろ…?

なんて不思議に思っていると、隣のコンドが何かを指差した。


「探偵、あれ見える?」

「え……宝珠?!」


コンドが示した先、フェニシアの足には、

確かに宝珠が握られていた。


あ、あんなところに…。

どうやって取り返せばいいんだろう……。

話し合いとか、絶対できないよね…?



フェニシアが突然、甲高い鳴き声──

というより奇声を上げ始めた。


『ピギャイイイアァ! ピギィッ!!』


何これ聖獣の独り言…?

もしかして重要な話してる?

いや、リハイトじゃないから分かんないけど!


フェニシアはしばらく同じような奇声を繰り返していた。

……ので、その隙に、

私とコンドは音を立てないよう背後へと回り込む。


「宝珠は、あそこか…」

「待ってコンド、私が取ってくる」


コンドが動こうとしたのを、私は小声で制した。

ここまで何の活躍もできていないから、

少しは彼の役に立ちたかったのだ。


「危ないから僕が行くよ…」

「ううん!コンドはここにいて。

私の方が小さくて見つかりにくいから適任!」


軽く自虐を混ぜると、コンドが反応に困った顔をした。その隙に私は、さらに聖獣の傍へと忍び寄る。


よし…あの隙間から……

宝珠を……う、あとちょっと…ッ!


フェニシアの大きな足のすき間から手を伸ばし、

何度も空を掴んでようやく宝珠の感触を捉えた。

そのままゆっくり、そっと……握り締める。


すると少し離れた場所で見ていたコンドが、

安堵したように肩を落とすのが見えた。


よしッ!やった! あとは引き抜くだけ──


しかし、そう思って力を入れた瞬間、

私の指先がフェニシアの足をかすめてしまった。

ほんの……ほんの少しだけだったのに…。


『キッ……?!』


「あ、まずい……」

「ッ探偵、避けて!!」


『ピィギイ"ーーァァァァ"!!!』


フェニシアは驚いて暴れ、

足をバタつかせながら巨大な翼を広げて飛び上がった。


「ッ……!」


勢いのまま踏み潰されそうになった私を、

コンドが瞬時に引き寄せ、宝珠ごと広場の外まで連れ出す。


「コンド、ごめん…! 私、気を抜いちゃって…」


「ううん。僕も気が緩んでたから。

探偵が無事でよかったよ。

危なかったけど、宝珠も取り戻せたし…任務は完了だね!」


何度も頭を下げる私の頭をそっと押し上げながら、

コンドは優しく言った。


「あ…でも、次は一人で行かないでね?

離れてると、守りづらいから」


「守られないくらい強くなります!」

()()()()、軽率に前に出ないでね??」


「は、はい……ごめんなさい…」


今のはちょっと圧を感じた。



「……どれだけ強くても、危険は危険だから」



私はその後もコンドに注意されながら……

やよゐさんのもとへ戻った。



✿ ┈ ⋯ ┈ ✿ ┈ ⋯ ┈ ✿ ┈ ⋯ ┈ ✿



「ふむ……なかなか、やるのう……」


フェニシアの祠へ戻ると、

やよゐさんが腕を組んで待っていた。


あっけないほどすんなり試練が終わったことを話すと、彼女は目を丸くしながらも素直に褒めてくれた。


「えぇと…フェニシアから横取りしたみたいになっちゃったけど……いいの?」


そう聞いて首を傾げると、やよゐさんは宝珠を手のひらで転がしながら、ゆっくり頷く。


「うむ、よろしい。

特に指定はなかったからの」


お、おぉ…なんというか……

合格ラインが低すぎて、こっちが驚く。


アロマルム様の試練を受けたあとだからかな?

簡単すぎて拍子抜け、というか何というか……。


「これは紛い物ではなく、確かに本物じゃ。

二人共、ようやった……ん?」


しかしそこで、

宝珠を眺めながら称賛していたやよゐさんの声が、ふいに止まった。

どうやら宝珠の内部に浮かんだ模様のような文字に気づいたらしい…。

彼女は宝珠を光に透かし、じっくり読み解き始める。


私も気になって覗き込んだけど……

うん、知らない字。難しすぎて早々に戦線離脱だ。

ここは大人しくやよゐさんに任せる。


「なるほど……英雄、コンドよ。

お主に、加護神が新たな試練を与えられるそうじゃ」


「新たな試練……」


やよゐさんの言葉を聞いたコンドは短く息を呑み、身構えた。


さっきのは、フェニシアを刺激しなければ比較的安全だったけど……次はどうだろう。

安全とも、簡単とも限らない……。

そんなことを考えていたら、私までつられて喉が鳴った。

……ゴクリ、と大げさな音で。


「アロマルム様とは違って……

コンドの加護神は複数の試練を出すんだね」


そう問うと、

やよゐさんは宝珠をそっとコンドの手に乗せた。


「然様。加護神は、その者に見合った試練を与えるからの。……じゃが、その前に、お主と少々――

談笑を交わしたいそうじゃ。

疾く神殿へ向かい、この宝珠で封印を解くと良い」


「か、神様と談笑……?

なんだか、恐れ多いな……」


コンドが戸惑ったように呟く。

神と気軽に世間話する自分なんて、

想像できないのだろう。……まあ、私もだけど。


「……此処にいても試練は始まらぬ。

さ、疾く行くのじゃ」


やよゐさんはコンドが返事をする間も与えず、

背中をぽんぽんと押した。

そうして私達はそのまま、

半ば強制的に神殿へと送り出されていく。


――さて、これはまた波乱の予感。


「次の加護神様は大変な試練出してきませんようにッ」


私は心からそう願った。

もうボロボロになるのは懲り懲りだ。


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