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生彩放つ無神世界  作者: 美緑
〜第四章〜帝国軍
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試験の結果

「はぁ……はぁ…え、えっと、これでいいかな?」


数十分後……。

私は扉の前で深呼吸してから、恐る恐る試験部屋の扉を開けた。

ギィ……と重たい音がして、待機していた皆の視線が一斉に集まる。


そして、視線が部屋の中に向いた瞬間――


「うわッ何だこれ…どうなってるんだキモ…」

「ッえぇ?!これ…全部…泥?!」


リハイトとコンドが同時に素っ頓狂な声を上げた。

…そりゃそうだ。

だって、あれだけ凶暴で殺る気満点だった試験用の魔物たちが……

"全部まとめて"、泥の塊にギッチギチに固められているのだ。


頭だけひょこっと飛び出してるやつ、

足だけ変な方向に突き刺さってるやつ、

魔物のくせに泣きそうになってるやつ…。


自分でやっておいてアレだけど、

うん……なかなかひどい光景だ。


「た、倒してないけど…これは、凄い…よね!」

ソフィアが呟くと、

アルテも固まった顔でこくりと頷く。


「はい…全ての魔物が戦闘不能状態なので、試験は問題無く合格ですが…複数の魔物を泥の中にまとめてしまうなんて……器用な戦闘法ですね…」


「ご、合格!良かったぁ!」


私は試験の結果を聞いてホッとした。

レインと特訓した“泥固め戦術”、こんなところで役立つなんて…。

……泥んこも、本気出すと強いな…。侮れない!

しみじみと自分の得意属性の可能性を感じていると、コンドがスッと手を差し出してきた。


「うん…何はともあれ、探偵は試験に合格したし…

今日から君は、"僕らの仲間"だ。

…これからは、仲間として頼ってくれ!」


「コンド…!ありがとう!

……いつか、皆も私に頼ってね!」


皆の仲間として正式に認められた事……

それがとてつもなく嬉しくて、私はコンドと力強く握手を交わす。


「気が早いぞ半人前」

するとすぐ、背後から冷水……いや、氷みたいに鋭い声が飛んできた。

振り返ると、リハイトが腕を組んだまま、どこか呆れたように片眉を上げている。


「こんな簡単な試験一つに時間がかかり過ぎだし、入隊する事自体は誰でも簡単にできるんだからな」

……はい、リハイト節いただきました〜。


私は両手で鍵を握りしめて、

リハイトに向かってぐっと胸を張った。


「合格は合格だからねッ!絶対取り消させないぞ!」

「ンな事しねぇよ めんどくせぇ」


すると彼は大きくため息をつき、

前髪を乱暴にかき上げる。

ふぅ…良かった。どうやら合格取り消しの心配は無さそうだ。


「……こんなにも優しくて強い子……私…

やっぱり戦場に出したくない……」


一先ず安心していると、次はソフィアが口を開く。

彼女は眉を下げながら、心底心配そうに私を見ていた。

……でも、


「ふふん!大丈夫!私、レインのおかげで少しは強くなったもん!そこら辺の魔物には負けないよ!」


私は自信満々に、もう一度大きく胸を張って言う。

数ヶ月とは言えど、彼女の魔法(スパルタ)授業を耐え抜いた根性と実力はある……つもりだからだ!


そうして、もう張れない!というところまで自信満々に胸を張っていると…


「あら皆、揃ってたのね。会場の準備、整ったわよ」

いつの間にか扉の脇に立っていたレインが、私達に声を掛けた。


「さぁ、ついてきてちょうだい」

「あ、待ってよレイン!

聞いて!聞いて!今ね──!」


私はレインの姿を確認すると、そのまま彼女の横まで駆け寄った。試験の結果を伝えると、レインは控えめに褒めてくれる。


「ふーん?もう試験に合格してたのね。

やるじゃない?特訓の成果が出たわね」

「うんッ!レインのおかげだよ!ありがとう!」


「……えぇ、どういたしまして」


レインは私の最っ高な先生だ。

感謝の気持ちを伝えると、彼女はそっぽを向きながらも、口元を緩ませていた。

彼女もだんだん…

私から感謝を伝えられる事に慣れてきている。


それが嬉しくて……私は勢いのまま、帝国軍に入る意気込みや、さっき皆に誓った言葉を一気に話す。


「あぁそう……。

帝国軍への志望理由も根拠も、とてつもなく単ッ純だけど……熱意は悪くないんじゃない?」

「たん…ッ?!」


しかし、かなり真剣に話していたのに笑われた。


「た、確かに単純かもだけどさぁ!

これでも命かけてるんだぞー!」


「……ふふっ。貴方が本気なのは分かってるのよ?

この数カ月間ずっと努力したものね。

まだまだ修行の足りないひよっ子ちゃんで、助けられる側に変わりはないけれど…。

……まぁ、貴方の好きなようにすればいいし、英雄(わたしたち)の助けになれるもんなら、なってみなさい?」


こっちは必死に気持ちを伝えてるのにッ!

いつまでも私を"ひよっ子"扱いして揶揄ってくるレインに、カーッと顔が熱くなる。


「なれるもん!絶対なってやるー!!」


「はいはい。さぁ行くわよ、ひよっ子」

「もーッ!レーイーンーッッッ!!」


ムキになって追いかける私を、

後ろで見ていた皆は顔を見合わせ、笑っていた。




━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━




探偵達は、会場へ向かって歩き出す。


……しかし、列の最後尾を歩いていたリハイトだけは、他の英雄達が探偵の後を追って進んで行くのを見届けると、そっと歩みを止めた。


先ほどまで浮かべていたわずかな笑みは、

ぬるい風にさらわれるように、すっと消え失せる。

代わりに残ったのは、

感情の色を一切読み取れない無表情……。


彼は静かに視線を上げ、遠く前方――

無邪気に他の英雄達と駆けていく探偵の背中を見つめた。


その瞳には、ほんの一瞬だけ……

渦の底に沈んだような影が宿る。


「死なない…とか、

何処までも追いかける…とか。

言葉でなら……どうとでも言えるよな」

それは誰にも聞かせるつもりのない、

小さな溜息のような呟きだった。


その声音の奥に潜む痛みと諦念に、

気づいた者はほとんどいない。

───ただ一人…。

列の少し後ろから彼を横目に“()ていた”アルテだけが、リハイトの胸の奥に沈む気配を正確に捉えていた。


けれど……

「……。」

彼女(アルテ)は振り返らず、歩幅も変えないまま、

唇だけをそっと引き結ぶ。


リハイトの抱える影が、

これからどんな未来をもたらすのか――

その答えはまだ、誰にも分からない。

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