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生彩放つ無神世界  作者: 美緑
〜第二章〜❅٭豪雪に包まれし鳥獣町٭❅
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二度目の旅立ち



『ユーゴ様のご冥福をお祈りして――』


町の人々が一斉に頭を垂れ、祈りの声が重なった。

昨日の夜の出来事を知るのは、今この場では私とコンド、そして英雄のリハイトとレインだけだ。


二人は私達の話を聞くと、まるで血の気が引いたような顔をしていた。


「聖獣だけでなく、元町長までも……くっ」

「……そう。ユーゴ様が、そんなことに……」

リハイトはこめかみを押さえ、レインも苦しげに表情を歪めている。


「ごめん、三人とも…。

まさか、ユーゴおじさんが……」

隣で、コンドが小さく息を漏らしたのが聞こえて、私は彼を見る。


すると、

「…やっと、認めてもらえたばかりだったのに……」

震える声で紡がれた言葉がそこで途切れ、コンドは俯いてしまった。


昨日は泣く暇もなかったもんね……。

一晩ですっかり窶れてしまった彼を見ていられなくて、私はそっとコンドの背中をさすった。

「ねぇコンド…今日は休もう?無理しちゃだめだよ」

今はとにかく心を休めてもらいたい。その一心で声をかけたのだが、彼は首を横に振る。


「ありがとう、探偵。

そうしたいけど…ユーゴおじさんの葬儀だけは、きちんと見届けたいんだ。それに…」

コンドはそれだけ言って軽く目元を擦ると、 キッ…!と鋭い目付きをした。


「…ここまでされて黙ってなんていられないからね。

少し、僕の方で犯人の情報を集めてみるよ」


続けて出てきた彼の言葉は、あまりにも力強い決意に満ちていて……私は驚く。

そして、改めて感じた。


あぁそうだ…この子達は強い。

強くなくてはならなかったから。

今までもこれからも、きっとそれは変わらないし、変えられないだろう。

…なら、そんな彼らを支える為にも……私はこのままではいられない。



「私たちも手伝いましょう」

「あぁ、そうだな」

コンドに続いて私も私の決意を固めていると、レインとリハイトが二人で今後の事について相談していた。


「レイン、リハイト。気持ちは嬉しいけど……今日は三人で、“カテドールフェアリー”に向かってくれる?」

だがコンドは、そんな二人を制した。


「えっ……?」


私達三人はそれを聞いて同時に声を上げる。

私の用事なんて、今優先することじゃないのに……どうして…?

そう思ってコンドを見つめると、彼は続けた。


「二回も約束を破るのは“彼女”に悪いから。

それに、僕にも考えがあるんだ。

二人とも、探偵を頼める?」


「……よくわからんが、お前に考えがあるなら従おう。だが気をつけろよ?相手が何をしてくるかわからないからな」

「…もちろん」


リハイトの忠告に、コンドは軽く手を振って微笑む。

「……最後まで油断はしないよ」

そう言い残し、彼は人々の待つ葬儀の場へ歩を進める。


「コンド……」

遠ざかっていく背中が、どうしようもなく遠く感じられて───私の心の奥には、不安が広がった。



✿ ┈ ⋯ ┈ ✿ ┈ ⋯ ┈ ✿ ┈ ⋯ ┈ ✿


コンドが去った後、私達は町の出入口である大門を目指して歩いていた。


「探偵。今から行く“カテドールフェアリー”は、森の奥にある集落だ」

その途中で、リハイトが今から向かう場所について教えてくれる。


「そこには主に、レインのようなエルフが住んでいてな…」

「えっ、レインって……エルフだったの?」


「あら、今さらね」


私の問いに、レインはぱちりと瞬きして、少し呆れたように笑った。言われてみれば確かに…彼女の耳は人間よりも長く尖っているし、種族が違うのは明確だ。


「羽をしまってるから気づかれにくいけど……これでも立派なエルフよ」


そう言って、彼女は自身の羽を広げると、私に見せてくれた。

わぁ……綺麗……これがエルフの羽……!

淡く光る羽は美しく、蝶や花のように鮮やかな色彩が素敵で……思わず見惚れていると、リハイトが軽く咳払いした。


此処(カッドレグルント)からカテドールフェアリーへ行くには長い砂漠を越えないといけないんだ。でも、その砂漠が厄介でな……」


「ええ。貴方がアルテと出会った草原から此処に来るまでのルートなら、問題無いのだけど…カテドールフェアリーへ向かう道には、連なる砂嵐が待っているのよ」


砂嵐か……砂が目に入ったら絶対痛いやつだ…。

二人の話を聞いて私が内心ぼやいていると、リハイトは無言で魔獣を召喚した。

地面が震え、砂上を渡るための巨大な獣が一匹姿を現す。


「砂の上ではこいつに乗って行く。

……ああ、それと探偵」

リハイトは魔獣をもう一匹召喚しながら、私に声をかけてきた。


「今回、お前には随分と世話になったな。

異国の人間であるお前に頼ることが二度とないよう祈りたいが……もしまた巻き込んでしまった時のために、俺達英雄の力を少し説明しておく。探偵の作戦立ての早さは、大きな戦力になりそうだしな。」

「えっ、私も? ……まぁ、探偵なら悪用しなさそうだし、いいけど…」


"私に英雄の力を伝える"というのは、 リハイトの独断だったのか、 レインはまたも目を見開いて驚いた。


「し、知りたいけどさ…

あんな事件があった後なのに、いいの?」

私も勿論驚いた。だって実際レインの言う通り、英雄に関わる情報が悪用されているのだから。


しかし、リハイトはそんな事気に止めていないのか、

「隠すほどのものでもないさ」

と言ってから、溜息混じりに言葉を続けた。


「そもそもアルテが“瞳の力”をお前に明かした時点で、俺達全員、お前を特別視している。

下心もないし、頭も切れる。……はぁ、帝国軍にお前みたいなのがもっといれば、どれほど助かるか」


「……。」

それを聞いて、私は思わず俯いた。


…アルテの心を救えたのは、私だけの力じゃない。

あの“誰か”からもらった異能のおかげ……。

それでも、私が彼らの力を知る資格、あるのかな…。

…なんて、

そんな考えが浮かんでしまい、どんどん暗くなる思考に慌てて首を振った。


……違う。これは"私"に託された力なんだ。

なら、迷わず使えばいい――英雄たちを救うために。


そうして私が"自分の力"と向き合って、受け入れていると…

「じゃあ、私からね」

と、レインが英雄の力を明かした。


「私の英雄の力は“奇跡の力”。 仲間の魔力量を上げたり、魔力を回復させたり…物理では治せない“魔力”の治癒や調整ができるの」


「魔力…無くなると大変だから、凄く重要な力だね…」


私は自分が魔力不足になった時の事を思い出してそう言った。できればもう二度となりたくはないけど、あの症状を治してもらえるのは凄く助かる…。

レインの力に感嘆していると、リハイトも口を開く。


「前も言ったが、俺の力は“共鳴の力”。

魔物や魔獣、聖獣、神獣を操る事ができるが、操れるのは一度倒した魔物か、人々の味方である聖獣・神獣だけだ。 それと…“手を当てている時”だけ、こいつらと会話もできる」


リハイトが召喚した魔物の頭に手を置くと、静かな共鳴の音が響いた。


「コンドの力は“封印の力”だが……まぁ、あいつの力は後で説明する。どうせ今日、嫌でも知ることになるしな」

彼はそのままコンドの力も説明しようとしたが、何故か途中でやめた。


「そうね……さ、そろそろ行きましょう。

砂嵐が強くなる前に出発した方がいいわ」


そうして二人は会話を中断すると、 町の外へ歩き出す。


…コンド、ユーゴさん……行ってきます。


私は二人のあとを追うように門を出てから町を振り返って、 心の中でそう呟いた。




✿ ┈ ⋯ ┈ ✿ ┈ ⋯ ┈ ✿ ┈ ⋯ ┈ ✿

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