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生彩放つ無神世界  作者: 美緑
〜第二章〜❅٭豪雪に包まれし鳥獣町٭❅
13/89

︎五加護神の密談 ✴︎


月光さえ届かぬ古の神殿の奥――

崩れた柱の間を、淡い燐光が静かに漂っていた。


その中心、円卓を囲む五つの影が、祈りのような沈黙を保つ。

手にする杖の先には、それぞれ異なる光がかすかに揺らめいていた。


赤――深きワインの輝き。

蒼――澄み渡る水の滴。

金――祈りのように温かな輝き。

緑――大地に根ざす竜の光。

橙――刃の閃きにも似た残光。

彼らこそ、帝国を見守る五加護神。

だが、この國に その正体を知る者はいない。




最初に口を開いたのは、ワイン色の光を宿す影――聖獣神。

その声音は、雲の上のような穏やかさであった。


「おや……英雄たちは、あの聖獣を討たずに“宥めた”ようだね。

ふふ…あの子達も少しずつ、己の力を学んできたみたいだ」


すると、緑の光を放つ影――聖竜神が低く笑う。


「はっ、あの程度で成長などと笑わせる。

飛ぶだけの大獣ひとつ宥められぬ方がおかしいであろう。

…今後も“英雄”の名に恥じぬよう、精進してもらわねばならん」


その鋭い声音を、金の光…聖精神がそっとやわらげた。


「まぁ!そんな事ないわ!

まだ覚醒もしていないのに……心を通わせて聖獣を鎮めたのよ。

あの子達、本当に凄いわ」


その隣で、水色の光を放つ聖水神がきらきらと弾ける。


「そうそう!ボクもそう思う!

英雄じゃない子も凄かったね〜!!ボク感動したよ~!」


凄い!凄い!と椅子から立ち上がって声を上げる聖水神の弾ける声が、神殿の石壁を反射して静寂を少しだけ明るく照らした。

…しかし、その温かさをすっと断ち切るように、橙の光がふっと瞬く。


「……確かに凄いね。あの子達は頑張ってるよ。

でも…果たしてあれだけの力で帝国を守り抜けるのかな?

まぁ……彼等が無事なら、どんな結末でも構わないけどね」


最後の一人…聖釼神だ。

そのやる気のない声に、聖獣神が静かに答える。


「帝国が滅びれば、英雄たちも無傷では済まないだろうね。

彼らが本当に大切なら、我々がきちんと力を授けなければならないよ――そう思わないかい?」


聖獣神の言葉に、橙の光がわずかに揺れる。


「……彼らがそれを望むなら、ね。」


聖釼神はそう言うと口を噤んだ。

それを見て、聖獣神は立ち上がり、自分以外の四人を見渡し……静かに言った。


「どうやら、これ以上語ることもなさそうだね。

それでは――みんな…」


彼がそこまで言うと、五つの杖が掲げられる。

すると、忽ちそれぞれの光が絡み合い……天へ昇るように神殿を満たしていく。


『我ら、英霊の五加護神は誓う――

意思を継ぎし神域の五英雄に精魂を込め……それぞれに、

“封印”・“治癒”・“奇跡”・“共鳴”・“神獣”の力を授けん』


石壁が震え、崩れた天蓋の隙間から微光が差す。

五つの光の中で、それぞれの加護対象である英雄達の紋が……静かに浮かんだ。


誓いの唱え言葉を終えると、五つの影は踵を返す。

──その去り際、彼らはそれぞれの声で静かに囁いた。



「帝国を守る意志と覚悟……君の中には、どれほど眠っているかな」──橙の光が射す。


「なるべく怪我はしないでね。……けど、早くキミに会いたいな!」── 水色の光が照る。


「フフッ……貴女のこと、私も妖精たちも待っているわ」── 金の光が耀く。


「童よ――その未熟な身で構わぬ。我もとへ参れ」── 緑の光が煌めく。


「さて……では英雄くん。

どうか、すべての宝珠を取り戻しておくれ」── ワイン色の光が閃く。



……やがてその光が収まると、神殿には再び静寂が訪れる。




けれど、そこには確かに――

五色の残光が、祈りのように漂っていた。

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