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生彩放つ無神世界  作者: 美緑
〜第二章〜❅٭豪雪に包まれし鳥獣町٭❅
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꧁雪の化け物꧂⑵

「まずい……このままだと体力的に負ける…」

あの後……私達は角を曲がり続け、何度も何度も化け物を撤こうとしたが、全く成果が表れず…。

何度(うし)ろを見ても、そこにはバッチリ化け物がいて泣きたくなる。


私に魔法が使えていれば、この状況も少しはマシになっただろうに…と現実逃避しかけたその時だ、

「見て!お客さん!」「リハイトさんだ!」

不意に子ども達が建物の上を見上げて声を上げた。


「え?!」

「三人共、動くなよ!」

私がリハイトの姿を捉える前に、彼は建物から地面へと飛び降りてきた。…そして、化け物の進路を妨げるほど巨大な氷の壁を創り上げる。


───ヒュガアァァッッ!!


「この壁はすぐに壊される。今のうちに隠れるぞ!」

思いっきり氷壁に激突した化け物が唸り、空気が揺れると、リハイトは私達をその場から連れ出す。


逃げ切れるか心配だったが、氷壁の足止めは私達を見失わせるには充分だったようだ。

私はようやく息を整えてから直ぐリハイトに聞く。


「リハイト!コンドは?!なんで一緒にいないの…?!あの(あと)何があったの?!すっごい音したし、怪物出てきてるし…!」

彼と一緒にいた筈のコンドの姿が見えない不安を隠しきれずに私が畳み掛けると、リハイトは至って落ち着いた様子で答えた。

「……上を見てみろ」


また上……?

と思いながら彼の指差す方向に顔を上げると、空中には、翼を広げたコンドの姿が見えた。

…あぁ…どこも怪我してない……よ、良かったぁ…。

「コンドおぉ…!」

私が彼の名を呼ぶと、コンドは地面に降り立つ。

鳥族は空を飛ぶ時だけ腕から羽が生えるようで、彼が地面に降り立つと、羽は静かに消えていった。


「探偵……良かった…。子ども達を守ってくれてありがとう……遅くなってごめん」

コンドは私に頭を下げながら、子ども達の様子を確認した。それを見て、私は首を横に振る。

二人が無事ならそれでいい……いいんだ。


二人の無事を確認できて安心した途端……溜まっていた不安が溢れてしまう。

「う"ぅ"…よ"、良"がった"あぁ"ァ……! 化け物が祠から出てきてたから……私、てっきり…てっきり二人が化け物に殺られちゃったのかとぉ "……!!!」

涙声でそう言うと、リハイトには呆れられ、コンドには別れた(あと)の出来事を伝えられた。

「勝手に殺すな…」

「……あの後、実は二人とも化け物の放った猛吹雪で吹き飛ばされちゃって……結局、町に化け物を侵入させちゃったんだ…」

「そっか……とにかく本当に二人が無事で良かった……けど、町の人達は……大丈夫かな?」

私が住宅地の方を見てそう言うと、リハイトは頷きながら口を開いた。

「うん大丈夫……ではないな、普通にヤバい」

「えぇどおすんの……」


私達を助け出したはいいものの……二人にも化け物を倒す策は見つかっていないようだ。

どうしよう……このまま逃げ続ける訳にもいかないし…。

「あれ……?」

そうして頭を抱えていると、不意に……左手の包帯が目に入った。


おかしいな……傷が…ない?

ほつれた包帯の隙間から見える肌には、裂かれた傷が全く残っていなかった。

「うそ……痛くないと思ったら…私の怪我、無くなってる?!」

包帯を取った手は、なんなら怪我した時よりも健康的に見えた。


「怪我……?誰かに治してもらったのか?」

私が綺麗になった左手を見せると、リハイトは首を傾げる。

「うん!アルテに"おまじない"かけてもらったの!」

私はアルテにしてもらった"おまじない"の事を彼に教える。彼女は治癒魔法ではないと言っていたけど…きっとこれは治癒魔法と同じような術に違いない。

だって実際、怪我(けが)治ってるし!


しかし私が自分の怪我やアルテのおまじないについて語ると、リハイトは不敵な笑みを浮かべた。

……それはそれは今日一番の悪い顔で。

「ふぅん…?瘴気の傷に、お(まじな)い……ね。

……今度から会うたびに手袋を引っぺがして確認する必要があるな」

「……?」

どうして彼が笑っているのか分からなくて首を傾げると、コンドもどこか気まずそうに口を開く。


「リハイト、説教は化け物を退治した後だよ。

今はとにかく作戦を立てよう」

「そうだな」

……説教?誰に?なにゆえ?

二人が誰の事を話しているのかは理解できなかったが……多分、説教対象は私じゃ無いと思うので置いておく事にした。




雪の化け物との戦闘に加え、住民達の避難も同時進行で行わなければならないという厳しい状況下(ゆえ)に、作戦会議は難航した。


…そういえばリハイト、魔物を召喚する力があるとか言ってたな…。

それを思い出しながら、私は彼に尋ねる。

「ねぇ、仲間の魔物に倒してもらえたりしない?」

しかし、すぐに首を横に振られた。

「流石にあの化け物と対等に戦えるようなやつは召喚できない。それに、全ての魔物が強いってわけでもないしな…。召喚できる中で一番強い奴も、戦いより移動時に使うことが多いし……」

「うーん……そっか…」


リハイトの召喚魔を戦闘に使うことが得策ではない事を知り、私は頭を抱えて唸る。

すると次はコンドが呟いた。

「戦いには使えなくても、移動に使えるんだよね?

なら、町民の避難を促すのに役立てられるかな?」

リハイトはそれを聞いて考えるように腕を組むが…

「なるほどな……でも、魔物は人の言葉を話せない。

誰かが乗って町中連れ回すしかないぞ」

残念、どうやらこれも難しいようだ。


化け物を抑える為に英雄である二人はここを離れられない……かと言って私はこの町に詳しくないので、すぐに迷う未来が見える。

「精霊や使い魔を飛ばす手もあるけど……それだと魔法が使えなくなるし…」

コンドは眉を下げてそう言う。

……うーん…どうしたら町の人達に声をかけて避難させるかなぁ…。


私達は暫くそうやって頭を抱えていた。

もうこうなったら私が闇雲に町の中回るしかないのかなぁ……。

なんて、私が最終手段を考え出した…その時だ、


「ねえねぇ!ぴーちゃん達に任せて!」

「うん!任せて!町の人みーんなヒナンさせるよ!」

そこまで私達の会話を大人しく聞いていた子ども達が、元気良く手を挙げた。


「あ!そっか!二人はこの町の道に詳しいし、大丈夫かもしれない!」

子ども達の提案に、私はすぐに賛成した。

化け物から逃げている時も、二人の正確な道案内にはかなり助けられたからだ。


「……心配だけど仕方ないね。 被害を抑える為にも二人に任せるよ。リハイト、魔物の召喚を」

「…わかった、コイツは指で道を指示すれば、勝手に走る。……気をつけろよ二人とも」

リハイトは魔物を手速く召喚して、二人を大きな体の魔物に丁寧に乗せる。


「でも……今走ったら化け物に気づかれるよな…。

アイツを足止めできれば……」

「うーん……何か気を引けるものがあればいいんだけど」

リハイトとコンドは離れた場所から聞こえる化け物の声を聞いて、またも悩みだした。


足止め…気を引く……っは!そういえば!

私は二人の言葉を聞き、今までの事を思い返しながら口を開いた。

「ねぇ!リハイト、魔物用の罠作ってたよね?

あれで足止めできるかな?」

「え、あぁ…。お前達が持ってきた呪縛紐のおかげで完成したし、足止めはできるが……どうやって罠まで連れて行くんだ?」


リハイトにそう聞かれて、私はニマッと笑う。

そして彼の隣にいるコンドを見た。

「ねぇコンド、空を飛ぶ魔物の目に入りやすいのって、地面だけじゃなくて、魔物の視点と同じぐらい高いとこにいるときだと思わない?」

「え…?そうだね目の前にいたら見えやす……あれ?

もしかして、僕が誘導する感じかな?」

「うん!空は隠れるところが無いから標的にされやすいよね!」

私は勢いよく頷いた。

すると透かさずリハイトが口を挟む。

「おいおい……お前さっきまで不敬がどうとか言ってたの忘れてないか?コンドは皇族だぞ?

空にいればいいなら俺が飛行術で…」

「大丈夫だよリハイト。それに、罠は君にしか用意できない。だからこれは僕がやらなきゃ」

しかしコンド本人はそう言って快く引き受けてくれた。

…よし、これならいけるかも!

私は考えた作戦をもう一度頭の中に思い浮かべながら頷く。

「不敬覚悟だよ。

雪の化け物を何とかする為に、私考えたんだ」


二人はこの策に不満は抱かずとも不安そうだ。

私はそれでも笑顔で胸を張る。

「作戦名は名付けて……

"朝日で冷たい氷を溶かそう"作戦!」

「そのまんまじゃねぇか」

しかしリハイトの鋭いツッコミを受けてしまい、私は「あれ?良い名前だと思ったのにな」と首を傾げた。


……いい名前だよね?

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