死神と天使
暗い森の中、私は血の流れる頭を抑えながら、力無く木陰に身を寄せた。
口元は、卑しくべとべとに汚して。私からは、鼻を劈く様な暴食の香りがしただろう。
……首元に、”暴食の烙印”が押されていたからだ。
そんな、地獄からの使徒に追われ、風前の灯火であった私であったが……。突如として、横槍が入れられる。
目線を上目にすると、目の前に、先程まで私を嘲笑っていた豚と髑髏(しゃれこうべ)の、地面へ突っ伏した姿が見えた。
そして、其奴らに大鎌を刺す、一人の男の姿も……。
黒い外套、ローブを見に纏い、生気の無い灰色の少女を胸元に抱いた彼の姿を見て、私は驚愕した。天界に有るまじき……”天使の輪が無かった”からである。
「……っと、自己紹介が遅れたな。──俺の名前は、ファウスト。第一区のセフィラ、ケテルに着く、思考と創造を司る神であり。……巷では、死神と呼ばれる端くれ者さ」
「メフィは、メフィ。メフィストフェレス。あたしゃ、メフィストフェレスなのら」
そんな、彼等の自己紹介と共に、突如として、私の首元へ奴の大鎌が捧げられる……。
相当鋭いのだろう。少し当てられただけで、私の首からは血が滴ったからだ。
「……お前からは、暴食の烙印の臭いがする。そしてお前、天使を喰ったろう?──はっ、下品な奴だな。口と手を汚しながらそのザマか?実に滑稽で……天界には、不必要だ」
殺されるのだろう。私は、全てを諦めて。
……目を閉じた。が、黒ローブの男改め死神は、「”天界には”な」と補足をつけ。
「さあ、再度言おう。天使喰らいのバアル・ゼブブよ。──このまま、罪を抱きながら死ぬか。それとも……俺の弟子になるか」
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この物語は『フィクション』です。作品や登場人物達は、実在する宗教や現実の出来事には一切関係ありません。
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口元は、卑しくべとべとに汚して。私からは、鼻を劈く様な暴食の香りがしただろう。
……首元に、”暴食の烙印”が押されていたからだ。
そんな、地獄からの使徒に追われ、風前の灯火であった私であったが……。突如として、横槍が入れられる。
目線を上目にすると、目の前に、先程まで私を嘲笑っていた豚と髑髏(しゃれこうべ)の、地面へ突っ伏した姿が見えた。
そして、其奴らに大鎌を刺す、一人の男の姿も……。
黒い外套、ローブを見に纏い、生気の無い灰色の少女を胸元に抱いた彼の姿を見て、私は驚愕した。天界に有るまじき……”天使の輪が無かった”からである。
「……っと、自己紹介が遅れたな。──俺の名前は、ファウスト。第一区のセフィラ、ケテルに着く、思考と創造を司る神であり。……巷では、死神と呼ばれる端くれ者さ」
「メフィは、メフィ。メフィストフェレス。あたしゃ、メフィストフェレスなのら」
そんな、彼等の自己紹介と共に、突如として、私の首元へ奴の大鎌が捧げられる……。
相当鋭いのだろう。少し当てられただけで、私の首からは血が滴ったからだ。
「……お前からは、暴食の烙印の臭いがする。そしてお前、天使を喰ったろう?──はっ、下品な奴だな。口と手を汚しながらそのザマか?実に滑稽で……天界には、不必要だ」
殺されるのだろう。私は、全てを諦めて。
……目を閉じた。が、黒ローブの男改め死神は、「”天界には”な」と補足をつけ。
「さあ、再度言おう。天使喰らいのバアル・ゼブブよ。──このまま、罪を抱きながら死ぬか。それとも……俺の弟子になるか」
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この物語は『フィクション』です。作品や登場人物達は、実在する宗教や現実の出来事には一切関係ありません。
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第一章 白鯨、モービィー・ディック
000_天使喰いのバアル・ゼブブ。
2025/08/19 06:00
(改)
001_天界と楽園の違いについて。
2025/08/31 08:46
002_彼等の望む、崇高な目的について。
2025/08/19 06:00
003_全てを識る者は、白痴へ声を掛ける。
2025/08/20 06:00
(改)
004_見透かしたその瞳。
2025/08/31 08:49
005_白鯨と天使、そして紐。
2025/08/21 06:00
(改)
006_漆黒の大海原を泳ぎ続けようと。
2025/08/22 06:00
(改)
007_ 我が骨の骨、我が肉の肉なれ。
2025/08/23 06:00
(改)
008_まだ、可能性のある未来に賭けて。
2025/08/24 06:00
(改)
009_優雅な休憩と、葛藤の刹那。
2025/08/25 06:00
(改)
010_「ああ、世界はこんなにも美しい!」
2025/08/26 06:00
(改)
011_海のお友達が営む、喫茶店にて。
2025/08/27 06:00
(改)
012_嫉妬の魔王と共にする食事。
2025/08/28 06:00
(改)
013_毎日の様に、麦芽飴を舐め続ける日々だった。
2025/08/29 06:00
(改)
014_知恵の実が成した錬金術について。
2025/08/30 06:00
(改)
015_白鯨に届かぬ手。
2025/08/31 06:00
(改)
016_成り代わろうとする何か。
2025/09/01 06:00
017_不完全ながらの、光への共鳴。
2025/09/02 06:00
018_甘い香りに誘われて。
2025/09/03 06:00