表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
日本一のコンサルタントの異世界転生記  作者: Hiro
序章~出会い、別れ、旅立ち~
3/9

クマモン

「こりゃ、参ったなぁ」


人間、本当にどうしようもない事態に遭遇したとき、こんなマヌケなことしか言えなくなるもんだ。

今の僕が、まさにそれ。


目の前に、クマ型のモンスター。


これまで、様々なモンスターと出会い、中には有難く食させてもらったものもいるが…


コイツはやばい。


クマの見た目だけど、身体はクマの倍くらいある。

それに、クマであれば簡単に追い払えるけど、コイツはなぜか超好戦的。

目に付く動くものは、すべて殺してるんじゃないかと勘ぐってしまうレベル。


そんで、コイツの現在のターゲットが僕。

勘弁してくれよ、まったく。



そんなことを思っているうちに、早速そのクマ型モンスター(面倒なので、以下クマモンとしよう。熊本県に怒られそうだけど、今だけはご容赦を。)が僕を襲ってくる。


一撃目をギリギリで避ける。


クマモンの右前足の攻撃が、僕を通り越して、僕の右手側の木に直撃する。

その瞬間、その木が根こそぎ吹っ飛んでった。


「うわ、えげつな。」


こんなん、一発でも食らえば即死やん。


ひとまず、逃げないと。

でも、背を向けて逃げるのは危険だ。

クマモンを正面に、少しずつ後ずさりをする。それと同時に、頭をフル回転させ、対処法を考える。



どうすればいい?

大抵の動物は火でどうにかなる。ただ、コイツに火が通用しないのは検証済みだ。

松明をまったく恐れなかったし、それをアイツに向かって投げても、地面に叩きつけ、踏みつけて火を消した。

まるで、タバコの火を消すかのように手際よく。

クソ、どうすりゃ、コイツに決定的なダメージを与えられる?



そんなことを考えているうちにも、クマモンの攻撃は止まない。

前足を振り回しくるだけだから、なんとか避けられているけどさ…。


と思っていたら、急に嚙みつき攻撃も組み込んできやがった。

おい、ちょっと待て。

そんなん聞いてないぞ。

完全に予想外だぞ。

ヤバい、この噛みつきは避けられん!


それでも、致命傷だけは避けるべく、無理やり身体を動かす。


その甲斐あって、なんとか急所は守れたが、右腕に噛みつかれ、持ち上げられた。


「この、離せ!!」


離してくれるわけないのは自明だが、もうこんな言葉しか出てこない。


コイツ、このまま僕を地面に叩きつけるつもりだ。

心なしか、目が笑っているようだった。

なんだよ、身体能力に加えて、煽りスキルもあるのかよ、コイツ。


「なに笑ってやがる!」


そう言いながら、僕は身体を動かした。

僕の本能的な反撃だった。

身体を捻り、ヤツの眼球に、思いっきり後ろ回し蹴りを入れた。

空手なんてやったことないけど、直撃だ。


クマモンは僕を離した。

さすがに効いたのか、痛そうに目をつぶっている。

へへ、案外強いじゃん、僕。


ただ、僕も無傷ではない。

嚙まれた状態で無理やり身体を動かした結果、右腕がお釈迦になった。

あのバカでかい顎で嚙まれたのに、もはや痛みも感じない。

力も入らない。

利き腕が使えなくなったのは、代償として大きすぎる。

失策だっただろうか。

しかし、あのままでは死は避けられなかった。

それに比べれば、右腕がお釈迦になるくらい安いものか。


これから、どう戦おうか。





そんなことを考えていると、急にクマモンが動きを止めた。

僕は距離をとり、クマモンを観察した。

攻撃が止まり、本来なら安心するところだが、嫌な予感がする。

コイツ、何をする気だ?


クマモンは、両目を見開いた。


僕が蹴りを入れた左目、元通りじゃん。

僕の渾身の一撃も、ヤツにとってはすぐに回復する程度のものだったらしい。

理不尽にも程があるぞ、まったく。


そして。


「グオォォォォォォォォォォ!」


クマモンは雄叫びをあげた。

地面を振るわせるほどの雄叫びであった。


一瞬だけ、森全体が静まり返った。


そして次の瞬間、僕を睨み、猛スピードで追いかけてきた。


「はぁ? 速すぎだろ! あの巨体でこのスピードかよ!!」


大型トラックに全速力で追いかけられている感覚だ。

マジでやばい。

コイツ、目が本気だ。


周りの木々をなぎ倒しながら、一直線に僕を襲う。

手負いの僕がスピードで敵うはずもないので、右に左に曲がりながら、なんとか逃げる。

後ろを振り返り、ヤツの様子を確認する余裕などない。

とにかく必死に逃げ回った。


(スタミナ勝負だと、確実に僕が負ける。なんとかしないと…。)


疲れ果てて止まりそうな足を、気力と勢いで前へ前へと運ぶ。

そして、考える。

なんとかクマモンを振り払う方法を。

何か、何か方法はないだろうか。




ふと、自分が見知った場所を走っていることに気が付いた。


この場所は以前、探索した場所だ。

この先にあるのはたしか……


崖だ。


一か八か、試してみるか。

しかし、リスクが高すぎる。

いや、今は賭けるしかない。


僕は最後の力を振り絞り、走りに走った。

もうすでにスタミナは底をついていた。

すぐ後ろには、なおもあり得ないスピードで追いかけてくるクマモン。

手を伸ばせば、届く距離にもう来ている。

それでも、そこに辿り着きさえすれば、生き残れる可能性がある。

それだけを心と身体の支えとして、必死に走った。








ついに辿り着いた。

そして、一瞬も迷うことなく、僕は崖から飛び降りた。


頼む。

これでもう、終わってくれ…。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ