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-閑話休題-【記録(レコード)の罠】
「うぅ~~~っっっ……」
女子寮のとある一室。
枕を抱えながらクラリスが1人唸っていた。
ルームメイトのミレイは不思議そうにその様子を見ながら、
「どうしました? 大丈夫ですか? お腹痛いんですか?」
と声をかけた。
「違うのよ……」
クラリスは真っ赤にした顔を枕の間から覗かせる。
「え、もしかして王子にダンスに誘われたことで……?!」
「……それも違うわよ」
そこははっきりと断言したクラリス。
しかし脳内では、エミールのまばゆいばかりの笑顔と「クラリスお姉様!」と呼ばれた声が何度もリピートされ続けていた。
「……こんなに記録の魔法を恨めしく思った日はないわ……」
「へぇー。珍しいですね。クラリスがそこまで感情を動かす相手が現れるなんて」
(――絶対に許さないわ、エミール・アレンフォード……何がお姉様よ……お姉)
「あああああ! うううううううう!!!」
ベッドの上でゴロゴロバタバタと悶えるクラリスを、最終的にはBGMとして普段通りに過ごしているミレイの姿があった。




