-第十話-【星の欠片(スター・シャドー)争奪戦、開幕】
エントランスホールには舞台が設置され、そこに演劇部の劇団員たちが集まっていた。
開始のブザーが鳴り、舞台周りに置かれた椅子は、ほぼ満席の状態だった。
ホールが暗くなると、パッとスポットライトに照らされた『星の巫女・セラフィナ』が現れる。
演じているのは演劇部の部長で音楽の魔法を固有魔法とする第四学年のカミラ・ノクターンだ。
「――遥か昔、星の加護を受けた王国と、闇に堕ちた魔導師の国との戦いがありました……」
銀色のウィッグに宝石をちりばめたヴェールをかぶり、セシルが「ちょちょっと」手を加えた繊細な衣装がさらりと舞台の上を舞う。
カミラの声は透き通り、よく響く声をしていた。
そして星の巫女・セラフィナは精霊と心を交わし、戦いの行方を左右する預言者であった。
しかし、光の精霊と恋に落ちてしまう。
戦争が激化する中、どちらかを勝利へと導かねばならないセラフィナ。
恋という私情で星の加護を受けた王国を勝利に導いてしまい、セラフィナは闇に落ちた魔導士の国の者たちに命を奪われてしまう。
息も絶え絶えになりながら、光の精霊が舞い降り、セラフィナを抱き上げる。
「愛してるわ……けれど、私に『世界』を選ぶことは難しすぎた……それは……恋を知ってしまったからよ……」
一拍の静寂ののち、セラフィナの頬に一筋の涙がこぼれる。
「……それでも、あなたに出逢えて、私は幸せでした……」
「ああ。セラフィナ。……人間とは、かくも脆い生き物なのか……」
光りの精霊は自身を選んでくれたセラフィナが命を落としたことに涙する。
観客席からも鼻をすする音が聞こえてきていた。
そうして物語の幕は閉じ、大喝采を浴びながら演劇は終幕した。
「わあ……すごい……感動しちゃった……ヴィクター兄様、セラフィナさん、悲しい結末だったね」
「ああ、そうだな……」
「愛を貫くって、難しいことなんだね……」
(――そうだな。愛を貫くには強さが必要なんだ……)
舞台を見ながらも、ヴィクターはどこか昔に父に教えられた「優しさだけでは救えない」という言葉を思い出していた。
そして演劇の感動が冷めやらぬうちに、ミレイの元気な声が再び会場内に響き渡る。
「それではーっ! 正午から我が学園祭恒例のメインイベント『星の欠片争奪戦』が開始されますっ!! 参加希望者は控室にお集まりくださーい! 観覧希望の方は学園外コロシアム『グリモワール・アカデミア大演習闘技場』にお集まりくださーい! 今年はどんな戦いが見られるのか! 今からワクワクが止まりませんっ!」
「ヴィクター兄様!」
「ああ、行こう!」
2人は席を立つと、『星の欠片争奪戦』選手控室へと足を運んだ。
控室には見知った顔もあった。
「オーッホッホッホッ! エミール・アレンフォード、あなた、お兄様と一緒に出場なさるのね? 負けませんわよ!」
「あ、イザベラさん! うん、僕も頑張るよ! お互いいい試合にしようね!」
「……まったく、調子が狂いますわ……」
「まあまあ、イザベラ様。エミール様、ヴィクター様、よろしくお願いいたしますね」
イザベラの取り巻きにして寮では相部屋のシャルロット・オルネラがおっとりとした様子で2人に静かに宣戦布告した。
『星の欠片争奪戦』の選手たちがそれぞれ控室で待機している間に、ミレイがその大会の趣旨を説明する声が響く。
「ご存知の方も初めての方もわかりやすいように説明をいたします! 『星の欠片争奪戦』は、まず出場選手たちは全員一斉に亜空間のフィールド『星の欠片』探索フィールドへランダムに転送されます! 『星の欠片』はその辺に転がっていたり、隠れていたりします。しかし亜空間ですので魔力の乱れもあり、判断力・連携・魔力制御の力が試される場所となっておりまーす! 集めた『星の欠片』が一番多い者が優勝となりますが、もちろん、ただひたすらに集めるもよし、他人が集めたものを戦って奪うもよし! たくさん集めてぜひ優勝を目指して頑張ってくださーい! ルールはいたって簡単ですよー! 星の欠片を集める! それだけです!」
「始まるね、ヴィクター兄様」
「ああ。狙うなら優勝だな」
「うん!」
「おっと、一つ言い忘れていました!」
ミレイが『星の欠片争奪戦』のルールブックを見ながら解説を続ける。
「あくまで学園祭のイベントということですので、命を奪う行為、禁呪魔法の使用は禁止となっておりまーす! 命大事に! それでは各選手、準備はよろしいですか? 亜空間フィールドへいざ転送!!」
コロシアムに集まった観客たちは、コロシアムの真ん中に設置された魔法鏡でリアルタイム中継されているものを観戦することになる。
そして亜空間には「魔法カメラ」と呼ばれる装置が点在しており、それは蝶や鳥の形をしており、選手たちを追いながら魔法鏡へとその映像を転送する。
そして重要なのは、この魔法カメラと魔法鏡は共鳴していて、観客の声が魔法カメラを通して選手たちにも届く仕組みになっているのだ。
ヴィクターとエミールが転送された場所は、森の中だった。
「森……か」
「森なら僕、得意かも!」
エミールは以前「ぽてた」と名乗った妖精のことを思い出していた。
魔法の森でなければ迷うことはまずないだろう。
2人はまず、森を抜けることを目標に、どこかに星の欠片が落ちていたり木の上に引っかかっていないかを探しながら森の中を探索した。




