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《The Woken Era》  作者: なめこ
第一章 斧と鎌と虎
6/16

ep.5 後悔

PV200Thank you!      嬉しい……

有名作品とかに比べたら微々たる数字だけど映画館満席くらいの規模だよね……

これから投稿するのちょっと緊張しそう


少し書き溜めに余裕ができそうなので今日は2話投稿します。

あれから俺たち3人はコツコツとレベル上げをしていき、俺はレベル13、海里はレベル15、桜もレベル15へ上がった。2人と俺のレベル差があるのは、やはり今までVRゲームをあまりしてこなかったせいで、熟練者の2人に比べてレベル上げの効率が若干悪いからだろう。レベル12のフェロウウルフを倒すレベル上げをする際も、2人はうまく攻撃を避けているものの、俺は攻撃を食らってしまうことが多々あり、何度か死んでしまった。おそらくその影響で、2人よりも効率が悪くなってしまったのだろう……これからどうにか慣れていければ良いな……。


2040年5月10日―――――――――


今日もいつも通り海里と桜とレベル上げをするためにTWEにログインし、シュヴァルディアの噴水前で2人を待つ。数分待ったところで2人がやってきた。


「さーて、今日もレベル上げ行きますか!」


「うん、行こっk」


「キャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」


急に広場の中心から悲鳴が聞こえた。


「おい、どうしたんだ?!」


「ロ、ログアウトボタンが……無いの……」


「はぁ?そんなはずないだろ……って、本当にねぇじゃねえか……」


「おい、どうなってるんだよ!」


「バグなのか??」


広場がざわざわと騒がしくなり始めた。ログアウトボタンが無い?そんなVRゲームにおいて致命的なバグなんてあるはずがないだろう。


俺も急いでメニューを開き、いつもログアウトボタンがある位置へ指を動かす。しかし、無い。確かに昨日までそこにあったはずのログアウトボタンが、どこにも見当たらないのだ。


すると突然、メニュー画面に音声付きの動画が表示され、広場にいる全員へ男の声が響き渡った。


「プレイヤーの諸君、はじめまして。私はTWEの制作会社、ネックスの最高責任者及びこのゲームのゲームマスター『進藤修一郎』だ。今から君たちプレイヤーに大事な発表をする」


画面に映し出された男の姿を見た瞬間、俺は一瞬固まった。

――そうだ。以前、街ですれ違った、あの妙に目立つスーツ姿の男だ。あの時感じた独特な威圧感を、今もはっきりと思い出す。だが、まさかこのゲームの運営側の人間だったとは……。


「プレイヤーの諸君はもうお気づきかと思うが、現在このTWE内におけるログアウト機能は完全に消滅した。それと同時にリフギアのセーフティー機能も完全に停止したため、今からこのTWE内でプレイヤーが死亡した場合、リフギアから脳へ致死量の電気が流れ、君たちの現実の体も死亡する。


つまり、このTWEは今よりデスゲームとなったのだ!」


広場のざわめきが静まり返る。この発表を一瞬で理解できた者はおそらくいなかった。現実感の無い言葉が、ただ耳に響いてくる。


「このデスゲームから抜け出す方法はただ1つ。メインダンジョンの最上階、フロア100をクリアし、このゲームを終わらせることだけだ。生きるためにもがきたまえ」


この短くも濃密な発表によって、俺たちプレイヤーの運命は一瞬で変わった。


発表後、プレイヤーたちの行動は大きく3つに分かれた。


ゲームをクリアしようとパーティーを組むために動く者。


どうすればいいかわからずひたすらに迷い続ける者。


そして、俺のように絶望して膝を抱える者。


(いやだ……死にたくない……まだ大学も就職も結婚もできていない……彼女だって人生で1回もいたことがないまま死ぬなんていやだ……童貞だって捨てられてないのに……)


「ぉーぃ おーい おーーーーーーーーーい陽翔!」


「わっ!なんだよ海里……」


「βテスターをはじめとした上位勢の奴らが攻撃隊を組んで、明日フロア1のボスに挑むらしい。俺と桜ちゃんはその攻撃隊に参加してくる。さっさと、このふざけたゲームから抜け出さないとだからな」


「兄さんはどうする?」


「なっ!本気で言ってるのか?HPが無くなったら本当に死ぬんだぞ!」


「だからと言って、ここでうじうじしてても状況は変わらないだろ!」


「もういいよ海里さん。兄さんは放っておいて行きましょ」


そう言って2人は、俺の返事を聞かずに行ってしまった。


次の日の朝、40人ほどのプレイヤーで構成された攻撃隊はフロア1のボス攻略に向かった。その中には、海里と桜の姿もあった。メインダンジョンへ向かう前、2人は俺のところへ来て「すぐ攻略して帰ってくるから」と笑顔で言っていたが、昨日置いていかれた俺はどこかイラついていて、冷たく「あっそ」とだけ返した。


攻撃隊が帰還したのは、ゲーム内時刻で夕方の五時頃だった。


街にいたプレイヤーたちは皆、期待の眼差しでその帰還を待っていた。しかし、そこに現れたのは、朝見送った攻撃隊の半数にも満たない、ボロボロに傷ついた生存者たちだった。鎧は砕け、衣服は焼け焦げ、彼らの表情には勝利の喜びなど一切なく、ただ虚無と恐怖が刻まれていた。


その中に、海里と桜の姿は――無かった。


生きて帰った者の話によれば、ボスは身の丈20メートルを超える虎のような姿の〈狂躁の災獣バルグレム〉だったという。戦いは順調に進んでいた。少なくとも、HPを半分削るまでは。


だが、その瞬間――奴は変貌した。


背中から黒い炎を噴き上げ、咆哮とともに暴走を始めた。その動きはそれまでとは異次元の速さと獰猛さを見せ、誰も対応する間もなく衝撃波のような咆哮で吹き飛ばされた。前衛の盾役は圧倒的な力で踏み潰され、後衛の魔術師たちは遠距離でも安全ではないことを悟る間もなく、次々と炎に呑まれた。


気がつけば、辺りには仲間の悲鳴と、焼け焦げた大地が広がるのみ。隊列は完全に崩壊し、生き残った者たちは戦うことを放棄し、ただ必死に逃げることだけを考えた。それが、街に戻ってきた僅かな生存者たちだった。


――そして、1時間後。


運営から全プレイヤーへ、死んだ者たちのリストが送信された。


その中には、


「Cheb」


「Kairi」


2人の名前も、確かに記されていた。

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