ep.3 街へ
一週間で3本くらいならあげられそうです。
2025/02/23 若干修正しました。
キャラクリを完了し、ログインすると、何やら街の中心にスポーンした。目の前には大きな噴水があり、その右手にはこちらに向かって手を振っている二人組の姿が見える。遠目ではよくわからなかったが、近づいてみるとそこには海里と、ピンク髪の女性が立っていた。
「やっと来たか、陽翔!」
「お、おまたせ。それで、その人は……?」
「何言ってるの、兄さん。私よ、桜。こっちでは『Cheb』って名前にしたから、そう呼んでね」
「俺は『Kairi』だ。リアルと同じだから普通に呼んでくれていい」
「えっ……ちょっと待って、話についていけないんだけど……」
(確かに桜の声だけど……見た目がなんというかギャルっぽい印象だな)
桜(Cheb)は不満げに頬を膨らませながら言葉を続けた。
「それにしても、なんで海里さんも兄さんもキャラクリせずに現実の容姿そのままなわけ? これじゃあ私だけ見た目に自信がないから必死にキャラクリしてるみたいじゃない」
「そ、そんなことないよ、桜。桜は可愛いし、俺たちは単に面倒くさくてやらなかっただけだから」
「う、うん。陽翔の言う通りだよ」
「ふん、まぁいいわ。でも次から気をつけてよね!」
どうにか宥めることができたようだ。俺はその後、2人からこの世界について少しだけ説明を受けることになった。
――ここはフロア1の街、シュヴァルディアの中央広場。シュヴァルディアはNPCが運営する鍛冶屋やレストランがあり、序盤の装備を整えたり、レベル上げの準備をするための拠点となる街だ。
「とりあえず、初期費用の3000Gを使って武器や防具を揃え、レベル上げに行くのが基本だな」
と海里が説明してくれる。
そのまま鍛冶屋に向かう道中、俺たちはそれぞれのタレントについて話し始めた。
「俺のタレントは『エンチャント』で、スキルは『エンチャントF』ってやつだ」
「へぇ、エンチャントか。自分だけじゃなくて他人の装備にも効果を付けられるなら、金稼ぎにも使えそう
じゃないか?」
「スキルのグレードって上げられるの?」と俺が問いかけると、桜が答える。
「スキルは使い込むことでたいていは上がるわ。ただし、B以上のグレードにするには『グレードアップの
スクロール』っていうアイテムが必要なのよ」
「なるほどな。で、二人のタレントは何だったんだ?」
「俺は『鷹』だな。タレントスキルは『ホークアイF』。多分索敵系とか遠距離探索向きじゃないかな」
「私は『ローズ』で、スキルは『ローズスラッシュF』よ」
「お、三人とも役割が被らないタレントで良かったな」
「そうだな」と海里も頷く。
そんな会話をしていると、鍛冶屋の看板が見えてきた。その時、ふとすれ違った誰かの姿が妙に気になったが……。
(今すれ違ったあの人、どこかで見たことがある気がするな……)
「陽翔、早く来いよ!」
「あ、うん。今行く!」
このとき、あの人物の正体を思い出さなかったことが、後に大きな後悔を生むとは、この時点では知る由もなかった。
宥める は なだめるです