準備
俺たちは第一試練をクリアするために大量の人を殺した。もちろんクリアするのに必要な最低時間なんて無視だ。そもそも稼げば大量にコインを貰えるのだから気にする必要性がない。そして24時間が経過した。
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貴方は残虐な試練を突破した
クリア報酬:残り時間分のコイン
112090コインを獲得しました
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その後、俺は知覚者がLv10になり、とあるスキルを100000コインを使って購入する。
『これだ…これが第二試練突破…いや、仲間を作る上で必須のスキル』
購入したのは、スキル共有Lv1だ。スキル内容はその名の通り、仲間に自分のスキルを共有させることができる。これにより俺が今までの周回で手に入れたスキルを味方、今回でいうと澄玲と共有することができる。だが、このスキルには弱点もある。
1.共有時スキルの弱体化
2.共有されているスキルを2個以上同時使用は不可
3.共有時間は30分、クールタイムは1時間
4.使用者は使用中体力を消耗し続ける
他にもいくつか弱点はあるがこの四つが致命的だ。だがそれをひっくるめても強い。理由は俺がスキルを大量に所持しているからだ。
そしてついに鬼門、第二の試練、業火の試練が始まった。俺と澄玲は全速力で駆け回る。
「本当にこれでいいの?」
「ああ、問題ない。まずは東京から離れる。」
業火の龍が現れるのは日本の中心部である東京だ。討伐したい奴は近づき、生き残りたい奴は逃げるだろう。だが、逃げるのは本来得策ではない。業火の龍の攻撃は一瞬だ。反応どうこうでできる次元じゃない。だが俺の知覚者はそれを可能にする。それでも近距離となると半分ぐらい勘になってしまう。だから初手は近づかず澄玲のコイン集めに徹する。中心部のモンスターを狩った方がコインは稼げるが、強いし龍の攻撃も同時に避けるとなると現実的ではない。だから最初は離れてコインを稼ぐ。それに残会と違って俺は共有を覚えている。狩るスピードだって上げていける。
「この迅速ってスキルいいね」
「ああ、そうだな。だが、お前の身体強化と比べると霞むがな」
「そんなことないと思うけどなぁ」
迅速はその名の通り、足を速くするだけのスキルだ。身体強化は足だけじゃない、腕、握力、その他ありとあらゆる箇所を強化できる。全力を出せば迅速より速く移動できるはずだ。それほどまでに強力…
「でも、意外と稼げるものだね」
「そうだな」
俺は稼ぐたびにスキルをドンドン購入して行く。それを見て澄玲は不思議そうに聞いてくる。
「なんでコイン貯めないの?貯めたらもっと上位のスキル手に入れられるでしょう?」
「俺は質より量を取る派だからな」
「ふーん…そう言うもんなんだ」
質より量…これもあるが1番は次の周回の俺に託すためでもある。いわゆる保険だ。コインは周回時に0になってしまう。だから使える時に使っていかないと意味がない。やられるつもりはないがそれでも念には念をだ。過信は時に己に牙を剥いてくる。
それから数時間が経過した。安全に俺たちはコインを稼げているが、そろそろ体力の限界が近づいてきていた。
「こんなに疲れたのは久しぶり…」
「そうか…」
「私はこれでも殺し屋だから息切れが少ない。でもなんであなたは息切れどころか疲れた様子もないの?」
「スキルのおかげだ」
俺のスキルである疲労回復Lv15を使えば、ここ付近のモンスター程度には疲労することはない。だがそれは体力面の話だ。精神面では結構疲れてる。
「少し休むか」
「賛成…このままじゃジリ貧…私もその疲労回復取ろうかな…」
「それはありかもな」
俺のスキルを共有することはできるが疲労回復のためだけに使うのは避けたい。いわばこれは切り札だ。いざという時にクールタイムで使えないなんて笑い話にもなりやしない。
「流石に大半の日本人は死んだだろうな。」
この数時間、5分おきに攻撃が飛んできている。だが、この1時間程度、俺たちの方向には1発も来なかった。つまり、俺たちの方向にはほとんど人が残っていないと言うことだ。そして逆に別のところには複数人が固まっているとも言える。そっちはかなり地獄絵図だろうがな…コインを使って飲食も買うことができる。だが、このタイミングでコインを稼ぐためにはモンスターを狩るか人間を殺すしかない。しかしそれが可能なのはスキルが戦闘系か、元々武術などを習っていた人物に限られる。そうなると集団で動くと言うのは現実味がない。できても4人程度が限界な気がする。俺がそんなことを考えていると澄玲が声をかけてくる。
「で、ここからどうするの?」
「そうだな。ある程度、俺も澄玲も熱耐性と炎耐性のレベルが高くなったし、身体強化も結構レベルが上がったはずだ。」
「うん…今はこんな感じ」
そう言って澄玲は自分のウィンドウを見せてくる。俺と澄玲はパーティーという機能を使ってお互いのウィンドウを見せ合えるようになった。俺もウィンドウを見せたが澄玲には俺がこの周回で獲得した分のスキルしか見えていないらしい。
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《スキル:身体強化》Lv6
《スキル:熱耐性》Lv7
《スキル:炎耐性》Lv6
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「こんな感じでいい?」
「ああ、その程度あればなんとかなるはずだ。」
俺の方もかなり強くなっていた。
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《特殊スキル:痛覚遮断》Lv14
《特殊スキル:恐怖耐性》Lv20(LvMAX)
《スキル:知覚者》Lv10
《スキル:迅速》Lv11
《スキル:疲労回復》Lv15
《スキル:熱耐性》Lv9
《スキル:炎耐性》Lv9
《スキル:スキル共有》Lv1
《スキル:身体強化》Lv2
《スキル:読心》Lv3
《スキル:危機察知》
《スキル:タイムリープ》Lv1(LvMAX)
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今の人類の中では最強と言ってもいいかもしれない。それほどまでに強くなっていた。だがこれでも確実に勝てるとは言えない。そこで俺は違和感を持った。第一の試練で弱い者を篩にかけ、第二の試練でも同じようにするのか?そもそも難易度が違いすぎる。これで試練と言えるのか?
「まさか…」
一つの仮説が現れる。もし、これが第一の試練と繋がっているなら?第一の試練は他者を殺すことではなく、強い者を最大限残す試練だったのでは?
「いや…ありえないか…」
これが仮に本当だったとしてもほぼ不可能、それにこの考えに至れる奴は俺のような周回できる人間か、ケイリの仲間だけだ…本当だったとしても回避不可能なら考える必要性はない。考えるべきは、可能性としてあり得る範疇で俺の力で解決できるものだけだ。
「澄玲…そろそろ移動して業火の龍を討伐しに行く。」
「うん…わかった」
「今のままでもいけそうだが…念には念をだ。行きながらモンスターも倒す」
「了解」
そして俺たちは近くのバイクを盗み東京へ向かった。