試練
俺は柳雪。平凡なサラリーマンだ。その日は休日で、街を歩いていた。いつも通りの街並み、いつも通りの子供たちの騒ぎ声、うるさいなと感じつつ俺は今日の夕食を買いに行く。そんな時だった。街の中心の空間が避けた。周りの人々がざわつく。すると中から黒いマスコットのような姿の生物が現れた。
「あー、あー、聞こえますか?」
その生物がしゃべりだすとスピーカーでもあるのかと思うほどの音量で街全体に響き渡る。
「私は下級ケイリ、悩夢と申します。」
急な自己紹介に周りは唖然とする。するとその悩夢の近くにいた男性が喋りだす。
「あんたは何なんだ!何をするつもりなんだ!」
「ふむ、至極当然の質問ですね。私は日本中央試練会場の運営することとなっています。」
「試練会場?」
聞きなれない単語が現れた。試練会場なんて聞いたことがない。
「世界はいろんな生物であふれています。ここ地球だけではありません。無数の星に無数の生物がいます。ですが、世界にも許容量というものがあります。そしてそれがそろそろ超えそうということで、あなた方をふるいにかけることになりました。それが試練です。」
「具体的に試練とは何なんですか?」
「質問が多いですね…まあいいでしょう。初回サービスです。試練とはあなた方生命体を減らすモノです。今からあなたたちはいくつもの試練を受けてもらいます。わかりましたか?」
「なんでそんなことをしないといけないのよ!」
誰かがそう言うとそうだそうだとみんなが言い始める。
「うるさいですね…そんなに試練が嫌なら先に消えてください。」
悩夢がそう言うと指を構え一人の女性を指差した。その瞬間、女性の頭が破裂した。血しぶきが飛び、周りの人たちが叫び始める。するとその叫んだ人たちも頭が破裂していく。そして数十人が死に静寂が訪れた。
「やっと静かになりましたね。あまり試練以外で減らすことはよろしくないんですがね。しょうがないですよね。」
俺は必死に吐きそうになる自分を押さえつける。あくまで平常心を保つ。吐いたらその瞬間、自分も殺される。そんな気がするからだ。
「では、さっそく第一の試練をはじめましょうか。」
悩夢がそう言うと全員の頭上に数字が現れた。それは全員同じで、徐々に数値が減っていっている。
「それはタイマーです。0になると問答無用で死にます。ですがそれではふるいにかけられない。だから死を避ける方法もあります。それは他人を殺すこと。」
瞬間、辺りの空気が重くなるのを感じた。全員が周りの人間を見渡す。いや、頭上を数値を見ているのかもしれない。
「他人を殺すとその者が所持していた時間を手に入れられます。初期設定は一時間です。さて誰が生き残ろうのか、とても楽しみです。」
悩夢がそう言うと俺たちの目の前にゲームのウィンドウのようなものが現れた。
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第一の試練《残虐の試練》
クリア条件:特定の時間まで生き残る
報酬:終了時の時間分のコイン
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「では始めてください。」
そう言って悩夢は再び裂けめに入っていった。
数秒世界が止まったように音がなくなった。その静寂を突き破ったのは一人の男だった。男はどこから見つけたのか、ナイフを使って近くの老人を殺した。すると男の数値は増え再び減り始める。
「ふ…ふふ…フハハハハハ!こんな楽しいことはねぇよな!合法的に人を殺せるなんてよ!」
「やめろ!人を殺すなんて!」
「じゃあ、死ねって言うのか?」
反論した男性が押し黙る。そりゃそうだ。今となってはそれが正論なのだ。
「もうここは正義が救われ、悪党が負けるなんて世界じゃねぇんだよ。生きるために全力の奴だけが生き残る世界だ。」
男はそう言って男性の腹をナイフで刺す。そして引き抜くとその場所から大量の血が流れてくる。そして数秒後男の数値は再び増えていた。
「お前らも早く殺し合え!それとも犬死にがお望みか?なら俺に殺されろよ。」
そのセリフは炎のように熱く、それが燃え広がるかのようにみんな人殺しを始めた。かくいう俺も何人も殺めた。そして24時間経過、再び空間が裂け、悩夢が現れた。
「ふむ、結構生き残りましたね。事前情報ではこの国は他者を助けたがると聞いていたので、時間切れでもっと死んでいるものかと思いましたが…」
悩夢は嫌な笑みを浮かべながら…
「意外とこういう国の人たちの方が狂っているんですかね?」
と吐き捨てるのだった。