我が家のなきごえ
風が強くなり、台風が近づいているとニュースでやっていたことを思い出した。
そこまで古くはないが、風が強いせいか少し家がぎしぎし鳴っている。
夜中、まだ小さい息子が怯えそうだなぁと考えつつ、ご飯の支度をしていると、その息子が私のところに来た。
「おかあさん。」
「ん、なあに?」
表情は普通だ。特に恐怖は感じていないようだ。
「あのね、あのね。おうちがね。」
「うん。」
急かさないように、続きを促す。
「おうちがね、ないてるの」
そう息子はいった。
ないている。
泣いてるのか、鳴いてるのか。とっさに泣いていると思ったが、物に生き物と同じような対応を度々とる息子のことだ、両方かもしれない。
ただ、そのように考えたことはなかった。私がこの子くらいの頃は、なにか別の、姿の見えない生き物が家に侵入してきた、と怖がったものだ。
家鳴りをこう表現するのは、幼いからこその感じ方なのだろうか。
ひとまず怖がっている様子がないことに安堵しつつ、私は、「明後日になったら元気になるわよ」と、家鳴りの説明を省くのであった。
その後、夕食に満足し、寝かけている息子を風呂に入れさせ、水没しかける息子を布団まで掬い上げ、この年にしては静かに、眠るのであった。