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ちょいと小話  作者: pitto
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ドラックブレイク

若者を中心に広まる、今話題の薬。

所持、使用による規制はなく、ただ用法を守ればなんら変哲のないものだが、同じく身近にある、あるものと一緒に接種するだけで凄まじい快楽を得ることができると一部の噂がきっかけになった。


「で、その身近にあるやつってなんだよ。薬の方は昨日、目薬買ったとき見たが、売り切れになってた風邪薬なんだろ?」

「そうそう薬は、ね。んで、問題の片割れなんだけど。」

一拍置く。小説としてはいいのだろうが、実際にやられるとムカッとするな。顔に出ていたのだろうか、慌てて口を動かす。

「僕の聞いて回った限りでは、誰も知らないんだ。」

新しいおもちゃを見つけたこどものような笑みを浮かべ、自身の調査結果を明かす。

「身近なものって言われているのに、誰も知らない...、つまりデマってことか?」

同じ事を思ったとでも言うように頷き、

「僕もそう考えた。時期が時期だからね。」

今は冬だ。そして僕らは受験生。ちょっとした息抜きに、とどこかの阿呆が考えたのか、それとも実際にあるのか。

「まだ僕らの知る限りで、使ったという話は聞かない。仮に中毒がなかったとしても、使用者がいれば、ある程度話には挙がってくるものさ。」

「使用していれば表面に見える...。例えば、精神的なダウン、アップとか、か。」

「その通り。だけど、デマにしてはちょっと行きすぎている現場を見たって人がいたんだよ。」

売り切れ、過度な需要と乏しい供給...。

「売買か...。」

「せーかい。しかも僕らくらいの学生じゃない。ある程度大人の、大学生くらいの人が売買していたそうだよ。」

これがまだ僕らくらいの売買なら、デマに踊らされている、で済ませられる。しかし、買っている側の年齢が上がると真実味を帯びてくるというものだ。だが、

「それでもデマ率が高い理由が最初の話に戻るわけだ。」

薬の存在は広まっているのに、身近な片方はまったく広まっていない。なおかつ、実際に使ったと言う話もまったくといっていいほど聞かない。デマの可能性が高い。

「そうなってくるとさ、気になってくるのが噂の出所だよねぇ。」

たしかに。広まり始めたのがたしか10月辺りだったか。俺が聞いたのが最近だから、実際はもっと早かったかもしれないが。

「快感、集中...アップ系、オーバードライブと考えるなら、抑制の入ってそうなものは消えそうだから、売りたいものを....、しかしものが広まっていないから売れない。」

「けれど、主原料になりそうな薬の方はなぜか割れている。故に薬自体は売れ行き好調。」

ということは、仮にもしデマでなければ...

「「薬を売ることが目的。」」

盤上一致か。この話をする前にそこに行き着いたのだろう。そして同じ結果に至るか俺で試したというところか。

「ま、いくら品切になっていようと、近い成分のものがたくさんあるし、それら全てが品切れということもないなら、関係ないことだけどねぇ。」

受験生だし、息抜きとしての時事にもならないネタ話だ。そういうことにしよう。

「ま、実害が出る前にこれが終わってくれればいいが。」

「出たら出たで延期には、ならないよねぇ。」

ならないだろうなぁ、受験はさすがに。


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