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ちょいと小話  作者: pitto
13/16

繋がりは一本の電話から(仮題)

以前投稿していたものをこちらに動かしました。

 世間でいう夏休みのなか、少年が一人、歩いていた。

少年視点

 落ちていたけいたい電話をみつけた。どうしよう。電話がかかってきた。ひとまず出る。

「もしもーし、どなたー?」

 軽快な女性の声が響いた。このけいたいの持ち主だろうか。

「落ちていたけいたいを拾ったものですけど。」

「ん、あれ?君がかけてきたんじゃないの?」

ん?

「いえ、かかってきた電話にでただけですが・・・。」

「こっちもね、かかってきたんだよ。」

 おかしなこともあるものだ。両方の電話にかかってきて、その電話同士がつながるなんて。まあ、とにかく

「ぼくのけいたいではないので、切りますね?」

 そして交番に届けなければ。

「あ、ちょっと待ってよ。今暇?」

 聞く耳を持たない人らしい。

「・・・お姉さんは暇なんですか?」

「だいぶねぇー。ねぇ、暇だったらちょっと話し相手になってよ。おねがーい?」

 ぼくのけいたいじゃないって言ったのをわすれているのだろうか。

「頼むよー。30分、いや15分でいいからさぁ、ね?」

 ・・・まあ落とし主がもどってくるかもしれないし、

「・・・そのくらいなら。」

「よっしゃ。じゃあお互いに自己紹介といこうか。偽名と実年齢はー?」

 ・・・この人、さらっとぎめいといったけど、スパイ映画でもみたのかな。まぁ名前を言わなくてすむのはありがたいけど。

「じゃあαで。」

「α線γ線の?」

「数学でつかうαβのαです。」

「あぁ、そっちね。」

 α線γ線・・・あとでしらべてみよう。

「それで、お姉さんのぎめいは?」

「その前に君の年齢をまだ聞いてないよ?」

 こじんじょうほうはできるだけ少なくしたかったんだけど、わすれていなかったらしい。

「小学4年生です。」

「おお、めっちゃ下じゃない!中学生あたりを想像してたよ。」

「ということは、お姉さんはだいぶ年上ってことですね。」

「わたしは高校生だよ。確かに年上だが、おばさんではないからね。お姉さんのままでいい。」

 だいぶ年上だった。まあ、声からして同じくらいには聞こえなかったし、お姉さんのほうもそうはんだんしたのだろう。

「それで、お姉さんのぎめいは?」

「お姉さんは、お姉さんでいいじゃないか。」

 ん、それもそうか。って、

「それだったら、ぼくもきみでよかったんじゃないですか。」

「黄身はねぇ、あまり好きじゃないんだよ。白身は好きだけど。」

「・・・、たまごのきみじゃないですよ?」

「あー、このネタは小学生にはまだ早かったか・・・。」

 これはしらべなくてよさそうだ。

「あーっと、コホン。わたしは、イイダ ミトだ。お姉さんか、みっちゃんと呼ぶといい。」

 ・・・ぎめいとこのお姉さんは言っていたけど、そんなにさらさらとフルネームを作れるものなのだろうか。あやしい。

「フルネームでいったけど、ちゃんとした偽名だから気にしないでねー。」

 あやしさがふくれあがる。

「あのそろそろこのけいたいを交番に届けたいんですけど。」

「えー、まだ時間あるぞー?」

それもそうなのだが、

「んー、近くに公衆電話とか、ない?それか、君の番号。」

 ・・・家の番号は教えたくなかった。だからといって近年そのすがたが見えなくなりつつあるこうしゅう電話をさがすのはめんどうだ、とも思った。ひとまずこうばんにいこう。そうすれば大体だいじょうぶだと彼は思った。

 こうしゅう電話は思いのほか、すぐにみつかってしまった。見つかったというより、その、なんだ。近場にあった交番のすぐとなりに立っている、電柱のわきに電話ボックスがあったのだ。だれかが定期的にそうじしているのか、ひかく的きれいな電話帳もあった。

ドラマとかで、犯人から警察にこうしゅう電話からかかってくるのを見たことがあるけど、あれってだれがお金をはらうのだろうと、ふとそんなことを気にしつつ、電話番号を伝えた。

「んじゃ、またすぐねー」という返事のあと、ぷつりと切れたけいたいを先に届けてしまおうか、どうしようか迷っているうちに、電話がかかってきてしまった。さっきまで、犯人が警察にーということを考えていたせいか、本当にこれにでてしまっていいのだろうか...、と少し不安になりつつ、受話器をあげると

「はいはーい、さっきぶりだね。」

先程とかわらない声が受話器から聞こえた。

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