表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/77

第34話 黒い笛

2021年最後というのに、序盤最大の欝展開です。この先には、ココロオドル展開があるはず…。

ちょっと残酷な表現もあるので、苦手な方はお気を付けください。

 ワンダ軍曹が、キャラ通りの脳筋で、魔物の群れに突撃を指示するので、俺とルッソも剣を抜き、ワンダ軍曹に続くという無理ゲーが始まった。


「ブレイブハート!」

 ワンダ軍曹がそう叫ぶと、俺の体をぼんやりとした光が包んだ。


(これは!)

 

 訓練所で初めてワンダ軍曹の前で、片手腕立て伏せした時と同じ光だ。

 そっか、ワンダ軍曹のスキルだったんだ。


 体に力が湧いてくる。イケる気がしてきた。

 出し惜しみなしだ!


「獣王無尽拳弐式、多斬!」

 ワンダ軍曹は、先陣を切り、すれ違う魔物をみじん切りにしていく。

 相変わらず、すごい迫力だ。


(ダーク、ダーク、ダーク、そこにもダーク!)

 俺とルッソは、鑑別で見抜いた魔石の位置を共有し、時々黒魔法を交えながら、一匹ずつ葬っていく。魔物とのレベルの差やワンダ軍曹のバフ効果もあるので、他愛もないことだった。


「リジェネーター」

 そこで、ヒーちゃんが、体力を徐々に回復させるスキルを発動する。


 回復術って凄いんだね!


 そうして、ワンダ軍曹が前衛、俺とルッソが中衛、レナ教官とヒーちゃんが後衛という布陣で、テノワルの城壁際までやってきた。


(まだ、残党がいるな…)


 鑑別スキルを用いると、まだ城壁内に赤く光る魔石反応がある。

 悪臭を少しでも緩和しようと、俺たちは布で口元を覆い、壁内へ侵入しようとしたその時である。


「チョット、マッテ」

 ヒーちゃんが呼び止めるので、一旦後方に下がり、周囲を伺いつつヒーちゃんの話に耳を傾ける。


 たどたどしいながらに、ヒーちゃんが言うのは、『かなり悲惨な現場だから、気をしっかり持ってほしい』ということだった。

 偵察の時、思わず魔物を殺してしまったから、見つかってしまったことを説明してくれた。

 最後に『ゴメンナサイ』と言った。ルッソはその様子を見て、『大丈夫だよ』と声をかけている。


 今にも泣き出しそうな曇天の中、意を決して、城壁内に入ると、そこは破壊された家々などが並んでいた。また、人の死骸に小さい魔物の幼生が密集していて、死肉を貪っていた。


 レナ教官が何も言わずに、魔物ごと死骸を焼き清める。


 ヒーちゃんは、まずこの死肉を貪る魔物が多くいたことに逆上し、殺してしまったのだという。そりゃそうだ。この状況は、正直救いがたい。もうルッソの顔は青ざめているからな。


 こんな悲惨な光景は医療現場でもまずなかった。精神疾患を患っていて、自分の乳房が自壊するまで放置していた乳がん患者を、俺は診たことがあるが、あの臭いと少し似ている。

 まぁこっちの方がひどいものだが。


 ブッブッブッ


 壊れた家屋の中から物音がした。


 俺とワンダ軍曹を先頭に中に入っていく。

 物音が大きくなってくる。

 ガッと扉をワンダ軍曹が押し開く。


 そこには…


 腹がパックリ割れた女の死骸にオークがまだ突き入れていた。


「入ってくるな!」

 ワンダ軍曹が叫ぶと、一閃。オークの首を刎ねた。


「ギャーーーーー!!!」

 ヒーちゃんがこの光景を見てしまったらしく卒倒する。それをルッソが支えた。


「レナ、頼む。」

「分かったわ。」

 レナ教官は、その死骸も焼き清めた。俺たちは家屋の外へ出ると、家屋ごとレナ教官が焼き払っていく。


「サーノ、ルッソ。あれがオークの繁殖だ。女を蹂躙し、オークの子種を植え付けると、子種は、一気に成長し、女の腹を割いて出てくる。そして飽きるまで死んだ女を犯し続ける。」

 ワンダ軍曹が、プッと唾を地面に吐く。


「ルッソの力は魔物を仲間にする異様な技だ。しかし、人間と魔物は絶対に共存できない。それだけはよく覚えておけ。」


 俺とルッソは頷いた。



 俺たちは、魔物を殲滅しながら、町の中心にある屋敷で足を止めた。


(妙だな…なぜ、ここだけ形をとどめている?)


 俺は、屋敷の中に魔物がいないか鑑別スキルをかけた時である。


 ゾクリ…


 背筋に悪寒が走った。

 これは嫌な予感がする。


「ワンダ軍曹。この建物の調査はワンダ軍曹と俺だけにしましょう。」

「うん?」

 ワンダ軍曹は俺の表情を見て、ルッソとレナ教官に指示する。


「…分かった。レナとルッソは、城壁外で待機していてくれ。日暮れになっても、俺とサーノが帰ってこなければ、そのまま訓練所に報告するようにしてほしい。ルッソは、まだヒーちゃんを背負えるか?」


 ルッソとレナ教官は、ワンダ軍曹の雰囲気を感じ取り

「もちろんです。二人とも無理をしないように…」

「ワンダ、サーノ、無事に帰ってきなさいよ。」

 城壁外へ向かっていった。



「ヤバいのか?」

「おそらく…」


 どうヤバいのか説明できない。しかし鑑別スキルが感覚的に危険を伝えてくる。


 屋敷の外門を開く。大きくはないが整備された庭があり、進んでいくと建物に入る立派な扉がある。

 建物の中は息詰まるような空気が漂っている。


(あっちだ…)


 鑑別スキルを使うと、正面にある二階へ階段のその先に黒く光る何かがある。

 魔物の気配ではない。こんな黒い光は初めてだ。


 俺とワンダ軍曹は、歩を進め、寝室と思しき部屋に入る。部屋全体にチンさむのような圧力を感じる。


「あそこだ…」

 ベッドをずらし、その下を探してみる。すると…


「笛だな。」


 そう、笛だ。


 鑑別スキルでも、これが黒く光っている。直接触っていいものかどうか?何か結界的なものを用意しないといけないのか?俺は顎に手をやり、熟考の構えをとった時、


「奇麗な装飾だな。」


 おーい!脳筋!もう、笛、持っとるやんけ!

 こういう物を触ると建物が急に崩れたり、おどろおどろしいラスボスが出てきたりするやん!軽率すぎるやろ!


 しかし、あたりを警戒して見渡すも、何も起きない。


(何も起きなくていいのか?)


「ほらっ。」


 えー、ワンダ軍曹、俺に笛当ててくるんだけど。触れってか。嫌だな。呪われたらどうしよう。おそるおそる、口元に巻いていた布で包み、笛を持ってみる。

 すると、明かり窓から光が差し込み、俺たちと笛が明るく照らされる。


(大丈夫なのかな…)

 

 鑑別スキルを使うも、この笛はレントゲンでもエコーでも問題なかった。鑑別で見ると黒く光ったままで、しばらく様子をみていたが、何も起こらない。結局、ワンダ軍曹の『高値で売れそうだ』という言葉に惹かれ、持ち帰ることにした。


 屋敷を出ると、青空が広がっている。

 たしかに、腐臭もあるが、もう慣れてしまった。

 これから、どのように訓練所に報告するべきかを考えていると、背中に刃物の感触があった。


「…どういうつもりですか?ワンダ軍曹。」

「サーノ、お前はいったい何者だ?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ