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第20話 ハイレベルな戦い

 御前試合の花形と言われる、3番リングの最終試合。見守る観衆がどよめいた。

 なんと、ザコでしかない第5組の連中が第4組を打ち破ったからだ。

 しかし、そのダーティーなやり方に、ブーイングがはじまる。


 ユバル団長も試合を見守っていたが、一人神妙な面持ちで、サーノとルッソの動きを見ていた。もちろん、鬼気迫る戦いを繰り広げる第3組と第1組の戦況を把握しつつだ。


「下らない連中が残りましたね。」

「そうだな…」

 

 部下に相槌を打ちつつも、ユバル団長は、サーノとルッソの戦いに単純に興味が湧いた。

 見たこともない体術、熟練のタッグプレイ。

 ユバル団長の目に喜色が浮かんだ。

「面白い連中だ。」



**



 第4組を離脱させ、俺は周りの様子を伺った。

 

 第1組のアレン&ジギのペアは第3組のゴウト&ザックのペアと交戦中。

 第2組のリム&ガランは、動かず経過を見守っている。

 もちろん、どの組の連中も、俺たちを警戒しており、時々視線がぶつかる。


「ルッソ、ビクトリー大作戦継続だ。」

 ルッソが頷き、今度は第2組の二人に呼びかけた。


「リムさん、ガランさん。今戦うべきは第1組です。みんなで第3組に加勢しましょう!」

「…」


 第2組のリムとガランは、慎重かつ現実主義者だ。


 ルッソの情報によると、魔物との戦いでも、撤退の判断は完璧で、戦いの嗅覚が優れている。

 第2組の連中にとって、序列を上げるには第1組を倒すしかないのだが、後ろから刺されることにも警戒しないといけない。

 こういう状況では、動かないというのも手である。


 実際俺たちが動かないと、第2組は動かないだろうな。


 ルッソに目で合図を送ると、俺たちは、猛然と第1組の後ろに走り込み、第3組と挟撃する形をとった。


「ゴミどもが!何のつもりだ?」

 アレンが、俺たちに背中を向けたまま、挑発してくる。


「お前の前に立つと、イカ臭くてやりきれないからな。」

 ひとまず、挑発で返してみる。


「お前だけは時間をかけて殺してやるから待ってろ!ジギ、ちょっと時間を稼げ!」


 アレンはジギに指示した後

「うおおおお!!」

 と唸り始めた。


(うんこでも漏らすのかな。)


 ジギは、アレンの前に出て、第3組のゴウトとザックの連撃を一人でさばき、互角の戦いを繰り広げていく。


 俺とルッソはジギの気迫に押されて、動けない。ちなみに、アレンのうんこボイスも迫力があって、なおのこと動けない。


「ジギ離れろ!」

 アレンがそう言ったかと思うと、ゴウトとザックに向かって急に距離を詰め、拳を繰り出す。


(分かりやすい正拳突きだな。適当にいなしてカウンターを狙えばいい。)

 そう思ったが、


「ゴウト、よけろ!」

 ザックが叫ぶ。その声を聞いてゴウトが右に跳ねる。

 拳をかわしたところで、ゴウトの体に、無数の切り傷が出現し、血が吹き出した。


空斬拳くうざんけん…」

 ゴウトが目を見開きつぶやく。


(えぇぇ、空斬拳って何?防御できないの?ヤバくない?)

 俺が、一人テンパっていると、アレンの気持ち悪い声が響いた。


「ヒャハー!次は死ね!」

 アレンはゴウトに連続の空斬拳を繰り出していく。


 アレンの迫力に、ザックが息を飲むと、「お前の相手は俺だ。」という声とともに、ジギのハイキックがザックを襲う。


「…っ」

 かろうじてその蹴りをザックがよけると、ジギは、蹴り技のラッシュをザックに浴びせかける。

 目にも止まらない蹴り技、最大集中しても防戦一方だったザックの首元に、避け切れない鋭い蹴りが迫る。

 その瞬間だった。


「…何の真似だ?」

 蹴りを浴びせていたジギが後ろに飛びのき、驚いたように言った。


 その必殺の延髄斬えんずいぎりはザックに当たることはなく、ジギの前には、第2組のガランが、ザックを守るように立っていた。


「ジギ。お前の蹴り技は見ていてあくびが出る。本物を教えてやろうと思ってな。」

「ほう。寝ぼけてしまって、俺の技がよく見えないようだな。」

 第3組のザックと第2組のガランがタッグを組み、第1組のジギに対峙する。



 ガランがザックの助けに入ったように、第2組のリムは、第3組のゴウトの助太刀に入っていた。


 アレンが口を開く。

「俺に歯向かおうなんて、頭おかしくなったんじゃないか?へっぽこリムさん。」

「黙れ、アレン。ゴウトとか言ったな。あいつの空斬拳は、ある程度時間が経てば使えなくなる。」

 リムは、目線をアレンから外さず、ゴウトに話しかける。


「なるほどな。」

 ゴウトは、フンと鼻を鳴らした。



(やったね!)

 俺は、ほくそえんだ。


 狙った構図になった。

 第2組と第3組が協力して、第1組と戦っている。

 このままお互いに体力を大いに削ってほしい。

 これが、漁夫の利、いや、ビクトリー大作戦の真髄なのだ!!


 しかし、俺とルッソは、戦闘の気迫に押されて体が自由に動かなかった。


(ここにいれば、とばっちりを受けて、偶発的に死ぬ。)


 連中から見えないように、ソロリソロリと後ろに下がろうとしたその時である。


 アレンがこちらに手刀を切るマネをしたので、急いで飛びのいた。風が目の前を通り過ぎ、足元のリングが、切り裂かれ、粉々になった石が散らばった。


(いつでも殺せるってことね。口で言えよ、イカ野郎。)


 三つ巴の戦いは激しさを極めた。


 アレンの空斬拳を使える時間は限られているので、その時間をやり過ごそうと、第2組のリムと第3組のゴウトは逃げ、アレンは二人を追いかけるという、壮大な鬼ごっこをしている。


 第2組のガランと第3組のザック、そして第1組のジギの戦いは、全員が素早い足技得意とするところもあって、その蹴り技がぶつかる波動をモロに感じる。


 アレンの繰り出す空斬拳のとばっちりもあるので、結局、俺とルッソは、リングの片隅で肩を寄せ合う形で避難していた。

 俺たちに一番近いところにいる観衆が、「お前ら!チ◯コついてんのか?!戦えよ!」と罵声を浴びせてくる。

 訓練所の女子諜報員たちだ。

 女の子がそんな乱暴な言葉使いしてはいけませんよ。


 その時である。


 ジギが、ガランとザックから距離を取り、『うおお!』と叫びながら、リングコーナーに潜んでいた俺たちに走り向かってくる。



(えっ、やばい!)

 これは、さっきのアレンがやった、うんこの唸りだ。おそらく必殺技が出る!


「ルッソ、アレンへ向かって走れ!」


 ジギはこちらを見やり、『チッ!』と舌打ちし、俺たちの元居たリングコーナーに位置取る。そして、追いかけてくるザックとガランへ振り返った。


「ジギ!これで終わりだ!真蹴撃しんしゅうげき!」

 ガランは、ものすごい速さのドロップキックで、ジギとの距離を詰めていく。そして、ジギの顔面に、ガランのキックがめり込もうかというその瞬間…


空斬脚くうざんきゃく!」


 ザックとガランは、もろにかまいたちを伴う蹴りを受けて、血しぶきを上げながらリング外へ吹っ飛ぶ。

 そしてその余波は、アレンと対峙していたリムとゴウトをも襲い、二人から鮮血がほとばしった。


「ジギ!」

 アレンが叫ぶ。

 ジギはリングコーナーで、手をつき、息も絶え絶えの様子であったが、うつむいたまま、アレンにサムズアップした。


 俺とルッソは、ジギの必殺技が来ることを見抜き、アレンと距離を詰めていたので、空斬脚のダメージをもらうことはなかった。おそらく、ジギはアレンにダメージを与えるようなマネをしないと思ったからな。

 というか、今から、リングコーナーで必殺技を出して弱っているジギを、ドスコイ。寄り切ろうかしら。

 いや、手負いの虎は侮れないというし…


 結局、俺とルッソは、こっそり別のリングコーナーに、肩を寄せ合い避難した。


 ふと、アレンを見ると、目が合った。

 アレンは拳を握りしめ、言った。

「忘れてた…ゴミ掃除をしないとな!」


 じぇじぇじぇ!

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