表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/77

第19話 花形リング

 サーノには辛い思い出がある。


 この3番リングでの戦いもその一つである。

 3番リングには、第1組のトップレベルと、第2~4組の実力者、第5組の最下層が並ぶように訓練所側が組み合わせを考えている。

 訓練所が収入を得る数少ない機会が、この御前試合だ。そこにはある種のエンターテイメントが求められる。


 第3番リングは花形リングだ。ここに集まるのはどの組でもエース級だ。しかし、第5組の選出者に求められる役割は、コミックリリーフである。息もつけないような激しい戦闘の前に、いかに無様に負けるか。それだけの存在だ。

 去年、サーノは第1組の奴から、みぞおちに一発決められ、嘔吐して這いつくばった。そして、『犬の散歩だ!』と尻を蹴られながら這いずり回る。他の組の連中にも足蹴にされ、最後は、盛大に蹴り飛ばされ、場外負け。

 会場がドッと沸き、観衆の紳士淑女たちの嗜虐心を満足させる。

 人間とは業深い生き物だ。


「畜生めぃ!だーいきらいだい!」


 くそったれ。

 だが、今年の俺、サーノは一味違う。かなりの修行をしてきたからな。


「ルッソ、行くぞ!」

「うん。」


 正面の広場には、全員の男子訓練生の名前を書いた試合表が掲示されていた。


「じぇじぇじぇ!」

 俺は3番リングでの最終試合、それもアレンとの組み合わせだった。

 

 あいつが仕込んだのか?

 まぁ、因縁があるし、二度とベーラに近づけないよう、ぶっ飛ばしてやるぜ!

 

「ルッソ。今年は開始一番の降参はナシだぞ。」

「うん。いつもそれで、サーノが痛めつけられるもんね。」

「…。と、とにかく、アレン以外の組の奴は、油断してくると思うから、ビクトリー大作戦を決行するぞ。」

「…いや、たぶん無理だと思うよ。」


 説明しよう!

 ビクトリー大作戦とは、相手をそそのかし、同士討ちを行わせることで、漁夫の利を得ようという、全く他力本願な作戦である!


 だってさ、無理だべ。リング上の敵8人を相手にするのは。


「イケる。ルッソなら大丈夫だ。お前にはなんとなく説得力がある。」

「意味わからないけど…まぁやれるだけやるよ。」


 ここはルッソを使って相手の情に訴える。『よってたかって弱いものいじめから始めるなんて、お前の技が泣いておるぞ。』的な感じでやれば大丈夫だと思う。だって、あの三つ目さんも説得されていたんだから。たぶんね。


「久しぶりだな!サーノ!」


 そう呼び掛けられて、後ろを振り向くと、コスプレ犬マッチョがいた。


「ワンダ軍曹!いらしていたんですか!」

「元気そうだな。それに少し凛々しくなったのではないか?」

「いえ、滅相もありません。」


 いやいや、なんで俺に話しかけてくるの?

 俺、あんたに腹蹴り飛ばされただけの貧弱男子だよ。全然印象残ってないでしょ。


 すると、ワンダ軍曹の後ろに隠れていた子がひょっこり顔を出した。

 なんと。可愛いモフモフ犬っ子ではないか。


「ワンダ軍曹、そちらのお子様は?」

「ああ、私の倅のフンドだ。フンド、挨拶しなさい。」

「…フンドです。よ、よろしくお願いします。」


 そう言ってフンドは、またワンダ軍曹の後ろに隠れてしまった。


 なんだろう。なんと言ったらいいのだろう。


 萌え。


「すまんな。人見知りというか、軟弱というか。こうした戦いの場を見て、経験を積めればと思ってやってきたのだ。」

「そうだったんですね。フンド君、俺はサーノ。よろしくね。」

「僕はルッソだよ。フンド君、よろしく。」


 おそらく人間の子どもであれば10歳届かない位か。まぁ父親が軍曹みたいだと子どもも大変だろうな。

 というか、こんな可愛い子に戦士の才能あるわけない。


「お前たちはいつ出番なのだ?」

「今日最後の時間帯です。3番リングです。」

「花形だな。健闘を祈る。」

「ありがとうございます!」


 ワンダ軍曹とフンドが去っていく。いや、全くあの父親からどうしてあの子が。お母さん似なのかな。


 とにかくだ。軍曹も見てるし、ベーラも見ているということで、ますます無様な格好で負けることが難しくなってきた。負けたらまた、腹蹴られて腕立て伏せさせられそうだしな。



 試合はジャイアントキリングなどなく、順当に終わっていく。第1組と第5組がそのままの序列を維持し、時々第2、3、4組で序列が時々変わることがあるかなという感じだった。

 ルッソはあまり試合を見ず、俺たちの対戦相手の情報を得るため、いろんなクラスに聞き込みに言っている。あいつ、地味に顔が広いからな。


 やや、夕刻に近づいてきた頃、ついに俺たちの出番が来た。


(ちょっと緊張するな。)


 リングに上がる。

 対戦相手にざっと鑑別スキルを使うと、アレンたち第1組が、やはり俺たちよりもレベルは高い。次にレベルが高いのは、意外に第3組の奴らで、その次は、第2組の奴らだった。第4組の連中と、俺とルッソは拮抗しているが、そこまでのレベルの開きはない。


 第1組だけが頭一つ抜けている。


 一応、対戦相手に怪我や病気がないかスクリーニングをしたが、黄色く光る部位はなかった。


 ちっ。弱点があれば、そこをネチネチ突いてやろうと思ったのに。


(ルッソ、まずは第3組の奴らを説得して、アレンたち1組の奴らに仕向けよう。できれば、第1組の奴らにヘイトを向けてくれ。)

(簡単に言ってくれるね。)

(頼むぞ。)


 俺たちは、それぞれの組と等間隔に距離をとり、ちょうど20m四方のリングで、五角形のような形になった。

 もちろん同じ組内で、戦闘してもいいのだが、野外訓練の時のペアでもあるために結束は硬い。となると必然的にタッグで他の組を倒していくことになる。


 そして、ついに戦いのゴングが鳴らされた。


「ゴウトさん!正々堂々とやりましょう!」

 ルッソが開口一番口火を切った。

「なんだ、どういう意味だ?」

 第3組のゴウトがルッソに問いかける。


 ルッソは、すでに情報収集で、相手の名前、特技なども掴んでいる。あの4組のポンチとタルトが意外と情報通で、いい情報が得られたらしい。

 そして、ルッソの話しかけた相手が第3組のゴウトだ。典型的な熱血漢で仲間からの信頼も厚い。


「そのままの意味です。『弱きを助け、強きを挫く』を信念として努力してきたと聞いてます。それなら、今こそ巨大な敵に向かう時でしょう!」

「……。ザック、やっぱり作戦変更だ。やりたいときにやらないと、結局最高の力で戦えんだろうが!」

「…ったく。好きにしろ。」

 そういって、ゴウトは、アレンと対峙し、思い描いた通りに、第1組と第3組のタッグファイトが始まった。


「ルッソ、ナイス!」

 小声で言い、俺は第4組の奴に近づいていく。


「なんだ?」

 第4組の奴が俺に警戒して、構えをとる。

  

「俺たちも一緒に戦わないか?第1組を倒せば、序列が上がるぞ。」

 そう言いながら、俺は、爽やかスマイルで歩き続ける。


 相手が怪訝な顔をしている。

 スッと手を出し握手を求める。相手が何となく手を出してきたところで、そのまま手を取り、胸倉をつかみ、勢いよく大外刈りを決めてやった。

 俺みたいな素人の大外刈りは、勢い任せのため、相手の後頭部が地面に直撃し、ノックアウトとなった。


「ってめ!この野郎!」

 ペアの第4組の奴が、俺に、殴りかかってくる。


 俺は後ろに飛びのき、

「ギョエーー!!」

 と身の毛もよだつ絶叫を浴びせてやった。


 相手が少しまごついたところに、後ろからルッソが、

「トウッ!」

 と、そいつの股間を蹴り上げた。

 悶絶して倒れ込んだ所に、俺が腕ひしぎ十字固めを決める。


「右腕をへし折るぞ!降参しろ!」

「こ、降参だ!」


 訓練所は、打撃中心の体術体系であるから、こうした関節技の返し方は知られていないし、初めて関節技をかけられると、腕を折られる恐怖感に駆られる。


 心を折るには十分なのだ。


 俺とルッソは周囲を見渡した。


(さてと…残った連中をどうしてやるかな。)

ポイント評価、ブクマしてくれた皆様、ありがとうございます!

いいね、★★★★★評価&ご感想、ブクマで応援いただけると、創作活動の励みになります。

よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ