第九十五話 キキの対戦相手
わたしは、カツサンド、ハムと野菜のサンドイッチ、玉子サンドとアイスティーを机一杯に出した。
それを見ると、ノルちゃんが口一杯に頬張り、説明どころでは無くなった。
急遽パイさんが呼ばれ説明を始めてくれました。
「では、陛下に変わりまして私から説明いたします」
「まず、賞金からです、一位金貨三万枚、二位二万枚、三位一万枚です」
これを聞くと、コウさんの目が輝いた。
コウさんは、不幸な少女を助ける為、今はお金を大量に必要としています。
「参加条件は、特にありませんが、一度負ければ終わりの真剣勝負です」
「勝敗条件は、相手の敗北宣言、相手の戦闘不能、場外です」
「相手を殺してしまった場合は反則負けです」
「武器は、こちらで用意した木製の物のみを使用可とします」
「最後に優勝者は、我が国最強の勇者ペグ様に挑戦できます」
「勝てば金貨五万枚を手にできます」
「もう、予選は始まっています」
「奮ってご参加ください」
ノルちゃんが説明を締めくくった。
「参加される方、いらっしゃいますか-」
パイさんが声を掛けます。
コウさんと、ギホウイさんが手を挙げました。
この二人は大きい、顔の恐ろしさでは、コウさんが勝っていますね。
少し恥ずかしそうに、うつむきながら、ハイさんも手を挙げました。
「あのー年齢制限はありますか」
「いいえ、まさかまな様が参加されるのですか」
パイさんがビックリしています。
「いいえ、参加するのはキキちゃんです」
わたしが、言った瞬間、ミミちゃんと、六人のメイドちゃんのところにいた、キキちゃんがすっ飛んできました。
きっと、関心が有ったのでしょう。
でも、我慢していたのだと思います。
目をキラキラさして、嬉しそうにわたしを見つめています。
「でしょうね」
パイさんは、当たり前の様に答えますが、回りの人達は皆驚いています。
「だ、大丈夫ですか」
ノルちゃんが、心配そうに問いかけます。
「大丈夫です」
「キキちゃん、殺さないように手加減出来るよね」
わたしがキキちゃんに話しかけると、キキちゃんが大きくうなずきます。
「ちゃんと、殺さないであげてくださいね」
パイさんが少し心配そうに、キキちゃんに話しかけます。
これにもキキちゃんは大きくうなずきました。
「ちがう、ちがう、相手の心配なんかしていませんよ」
「キキちゃんの心配をしているのです!」
ノルちゃんの目が吊り上がっています。
「えっ」
わたしと、パイさんが驚くと、ノルちゃんが何かを察したのか、そういうことかっていう表情になりました。
「キキちゃんは、まなちゃんの護衛ですものね」
メイさんは気が付いたようですが、コウさんもギホウイさんもまだ、驚いたままです。
「四人でよろしいですか」
「じゃあ、パイさん案内してください」
ノルちゃんがパイさんに指示をしました。
「まってください、わたしも行きます」
慌ててわたしも行く事を伝えた。
わたしが行く場合には準備が要ります。
アドバーガーと飲み物のストックです。
部屋中に机を出して、その上に乗せられるだけのアドバーガーと、飲み物を用意しました。もちろん、照り焼き味を多い目に。
これを十セット、クロちゃんに消去してもらい、ようやく予選に出掛けました。
峠の茶屋を出て外から見ると、お客さんでごった返しています。
すごい繁盛です。
後を見ると、先生と委員長も付いてきていました。
受付に近づくと、パイさんが説明しています。
本当は、登録しないといけないようですが、わたし達は特別扱いのようです。
試合場の脇では、大勢の人が試合相手を真剣に探しています。
当然、勝てそうな相手を探しています。
「じゃあ、コウさんやろうか」
ギホウイさんが、笑顔でコウさんを誘います。
「よし、やろう!」
「ぎゃーーあ、何がやろうですか」
パイさんが大慌てです。
「皆さんは、本戦まで戦っては駄目ですよ」
「今戦ったら、どちらかが敗退ですからね」
「ほんとーに何考えているんだか」
「誰か、弱そうな相手を探してください」
「じゃあ、私とどうでしょう」
ハイさんが、大男二人に声をかけます。
「だめですって、今、言いましたよね」
「もーー、まなさんなんとかしてください」
なんで、わたしにふるんだー。
あっ、でも大丈夫みたいです。
ギホウイさんもコウさんも、首をブンブンふっています。
てことは、ハイさんってこの二人より強いの?
「あんたら、対戦相手探しているのか?」
横から、三人の男が声をかけてきました。
二人は小柄で一人は、ギホウイさんやコウさんより体が大きいです。
「俺たちはザンの国の者だ、丁度相手を探していたところだ」
この三人は、ギホウイさん達に勝つ自信があるのでしょう。
「俺は、素早さが売りでな、あんたら見てーな、でかいだけの男が、相性がいいんだ」
「それだけの体をしていて、こんな小さな男の挑戦を断りはしねーだろうな」
「まあ、怖けりゃあ、他を当たるがよー」
やっすい挑発だなー。
こんな挑発、誰ものらんだろー。
小さな男とは、ギホウイさんもコウさんも戦いにくいでしょうから。
「よかろう、相手になってやる」
ギホウイさんが、挑発に乗ってしまいました。
あー、コウさんもうなずいています。
「おでは、その女ど、たたかう」
ちょーでかい男がハイさんを指名しました。
ハイさんは、にこりと笑顔です。
はーー、まじ女神。
って大丈夫か、相手めちゃめちゃでかいぞー。
三人は、対戦するため、パイさんと受付の所へ行ってしまいました。
「あとは、キキちゃんの相手かー」
「よー、あんたら、対戦相手を探しているのか」
うわー、珍しくいい男だけど、こんな女の子に対戦を申し込むなんて、クズ野郎だー。
「おれはファンの国のロボと言うもんだ」
「ロ、ロボット」
「ちがーう、ロボだー」
「あー、仮面ロボダーさんね」
まあ、こんなのこっちの世界では、誰もわからないかー。
と、思ったら、先生と委員長が肩をガタガタ震わせています。
「てめー、舐めてんのかー」
ロボダーさんがわたしのセーラー服の、リボンをつかんですごんで来ます。
「キキちゃん、この人で良いですか」
キキちゃんが、怒った顔で私を見上げてきました。
でも、目はキラキラしています。
大丈夫そうです。
これで、キキちゃんの対戦相手も決まりました。