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北の魔女  作者: 覧都
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第九十二話 イホウギの判断

この異常に大きな木造の建物は、魔王の森を切り開いているときに出た、廃材だそうです。

この廃材で、街道監視用に小屋を建てたのが始まりで、廃材が多すぎるので増築増築を繰り返し、こうなったのだそうだ

広さが、お城の大広間二つ分ぐらいある。


二階部分は、監視用に物見台が張り出し、一階のひさしのようになり、二階部分は、花見の宴会場の様になっている。


そこからの見晴らしは良く街道を遙か遠くまで見ることが出来る。

街道の西には、今回の武術大会の舞台が造られていて、舞台までよく見える。

手前の舞台なら特等席では無いだろうか。


「ここで、まなちゃんの料理を食べながら、決勝を見られるかと思うとわくわくします」


はー、ここはわたしの監視用に造ったと言いながら、そんなことまで考えていたのかー。

流石だ。って、わたしがまた、料理用意するのかーい。


「あー、イホウギ様だ!」


ハイさんが声をだした。


「まさか、南トラン国の大将軍が来るわけが無いと思いますが」


「いや、あれは、間違いが無い」


メイさんが言うと、レイさんもうなずいた。

みんな、面識があるようだ。


「パイ、ここへ、来てもらってください」


「はい、わかりました」


ノルさんに命じられて、パイさんが一階に降りていった。

その間に、衝立を造り面識の有る、メイさんとハイさんとレイさんに隠れてもらった。




連れてこられたのは、がっしりとした、大男だった。

兵士に囲まれて連れてこられたが、表情は余裕の表情である。


「わしに、なんのようじゃ」

「この国は、ただ歩くだけで犯罪者になるのかな」


「武術大会とは、仕官の場だ」

「他国の国軍に属しているものが参加することは」

「属している国を裏切ることになる」

「大会に参加もしないなら、今度は間者ということになる」

「まあ、間者もある程度、容認しなくては」

「大会は開けないが、大将軍は流石に容認できぬ」

「いかがかな」


ノルちゃんが、大男に問いかけると、大男は少し驚いた顔になった。

だが、直ぐに顔を元に戻し、平静を装った。


「誰と、勘違いしているのか分からんが」

「わしは、後イ団のギホウイと申す」

「登録者じゃ! 問題なかろう」


うわーー、ギホウイって、バレバレの偽名じゃん。


「では、南トラン大将軍イホウギ殿では無いとおっしゃるのですね」


「その通りです」


「まなちゃーん」


「ノ、ノルちゃん、困ってわたしを呼ばないでください」

「でも、ちょっと余裕がありすぎですね」

「名奉行、まなちゃんが裁いて見せましょう」


わたしは腕まくりをする真似をする。

わたしは、半袖のセーラー服なので、腕まくりは真似しか出来ない。

まわりの人は、わたしが何を言って、何をやっているのか分からないようだ。


「クロちゃん、出なさい!」


わたしが命令口調で言ったら、クロちゃんの白い妖精の様な分体が、全部現れた。

ここにいる人の肩に、全部クロちゃんが出て来ました。

当然、ギホウイと名乗る大男の肩にも、ピコピコ羽ばたく可愛いクロちゃんがいます。

そのクロちゃんに近づき、話しかけます。


「ねークロちゃん、この人の名前を教えてください」


「はい、この方のお名前は……」


「ちょっと、まった、クロ殿言わないと約束したではないか」


少し大男が慌て出しました。いい気味です。


「し、仕方がないです、あい様とまな様にはクロは逆らえません」


「イホウギ師匠ですー!」


ぎゃははー

後ろから、隠れてこの茶番を見ていた、三人が大受けです。


「はっ、メイ殿、ハイ殿、レイ殿」

「いたのですか」

「では、最初から……」


「ところで、何故、偽名まで使ってこの国に来たのですか」

「まさか、武術大会を楽しみに来たわけでは、ないのでしょう」


メイさんが真面目な顔をして問いかける。


「ふむ、ちと、厄介な問題が発生しましてな」

「伍イ団に相談したかったのです」

「ここでは、少し話しづらい……」


ノルちゃんが、手を挙げます。

すると、兵士が、ゾロゾロ階段の下へ降りていきました。


「ここにいるものは、信頼できるものばかりです」


ノルちゃんがメイさんに伝えます。


「うむ、こっちも大丈夫だ」

「イホウギ殿、すべて信頼できるものばかりになりました」

「どうですか、お話いただけますか?」


「わかりました」

「だが、知らない顔もあります、ご紹介願えませんか」


「まなちゃん、机と椅子を出して貰えませんか」


わたしは、昔の映画を思い浮かべ、帝国海軍の会議室の様な、机と椅子をだした。

わたしは、東西に長く出したら、皆で南北に直していた。

この世界では、共通して北が上座なのだ。


一番の上座にノルちゃんが座り、


「私がノル、この国の王です」

「まなちゃん、私の横へ」


えーー、わたしが王様の横って、冷や汗が止まりません。


「後ろに控えるのが、パイ、私の護衛です、この国最高の魔法使いです」

「まなちゃんの後ろがキキちゃん、まなちゃんの護衛です」


「次は、伍イ団の皆さん、紹介は、要りませんね」


メイさん、レイさん、ハイさんの順で座りました。


「わしは、ここで良いですか」


イホウギさんが、メイちゃんの前に座った。


「イホウギです、いまは、登録者後イ団のギホウイと名乗っております」


「先生、委員長、その横に座ってください」


ノルちゃんが手招きすると、二人は顔面蒼白で、足をガクガクして椅子に向かって歩き出します。

何も無いのに、何度もつまずきながら、やっと席に着きました。

イホウギ大将軍の横の席です。


「こちらの二人は、まなちゃんの先生と委員長さんです」


二人は、うつむいてしまっている。


「で、厄介ごととは」


メイさんが、イホウギさんに問いかける。


「ふむ、南トランが、イナ国を攻めようとしておる」


「なんですって!」

「ほ、本当ですか」


委員長が急に大声になった。

そういえばこの人イナ国の王族でした。


「むー、そなたはイナ国人じゃったか」

「本当じゃ、その事で王と喧嘩をして、わしはここにいる」


「詳しく話してください」


ノルちゃんが突っ込みを入れる。

確かにそれだけじゃあよく分からん。


「うむ、トラン国王が、わしにイナ国侵攻を相談してきおった」

「わしは、大反対をした、もし侵攻をするなら大敗をすると反対したのじゃ」

「だが、他の主戦派の将軍にそそのかされ、イナ国侵攻をすると決定しおった」

「国王の命令だから参加せよ、とのことじゃ」

「国軍の大将軍では拒否出来ぬので、隠居し、大将軍も軍も辞しこうして、登録者になり、国籍まで捨てた」


「と、いうわけじゃ」

「ついでに後イ団に入りたかったので、名前までギホウイと改めた」

「だから、ギホウイは偽名ではなくわしの今の正式名だ」

「入団はオリ国ですませた」

「ちゃんと試験を受けてヅイという支団長を、一ひねりして合格したぞ」


「でしょうね、ヅイの奴大丈夫か」


メイさんが顔をしかめた。

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