第九十一話 二人の同行者
「あのー、すみません」
わたしの所に、担任の先生と委員長さんが、やってきました。
正確には、わたしの所では無く伍イ団の所へ来たのだけど。
「皆さんは、まなさんとは、どの様なご関係なのですか」
「お前達ごときが、まなさんをまなさん呼ばわりするな!」
「まな様とよべ!!」
な、何を言い出すんだーー。
この、女神のようなきれいなおねーさんは。
いいえ、まだ言い足りません、この超絶美女はー。
だめだー、この人には、美しさを褒める褒め言葉しか思い浮かばないー。
「そそそ、そんなことありません」
「さんで大丈夫です」
「あなた達は、何故まなちゃんを、一人で歩かせているのですか」
うわー、メイさんが氷の目です。
怒っています。
「あなたは、先生ですか」
「は、はい」
「私には、まなちゃんが孤立しているように見えますが」
「……」
先生は、図星だったのでうつむいてしまった。
「私も先生としては、失格者ですから、あまり言えませんが」
「生徒を、見放さないで上げて欲しい」
「生徒を、見て上げて欲しい」
「いこう、まなちゃん」
「えーー」
こんな空気にしておいて、付いてこいとおっしゃるのですか。
「まなちゃんがここにいる必要は無いですね」
「私たちと一緒の方がいいです」
「主に私たちが助かります」
だー、最後本音が出ていますよ。
「全く、部外者の私が見てもまなちゃんが、孤立しているのが分かるのに、先生が何をしているんだか」
メイさんがご立腹です。
「あ、あのー、先生は悪くないです」
「わたしが、距離を置いているのです」
「まなちゃんは、優しいですね」
「行きましょう、馬車があります」
「まって、ください」
「私も同行させてください」
「そ、そのー、まなさんを良く理解したいので」
「あ、私も」
先生と委員長さんが同行を申し出た。
「まあ、いいでしょう」
「まなちゃんがどういう人か理解した方がいいでしょう」
メイさんが勝手に了承してしまいました。
せめて、見たこと、聞いたことは秘密にしていただかないと。
「あのー、同行はいいですが、見たこと聞いたことを秘密にしてください」
「お願い出来ますか」
「はい!」
先生と委員長さんがそろっていい返事です。
不安しかありません。
先生は、他の先生に後のことを頼み、私に同行することになった。
少し歩くと、馬車が三台止まっていました。
伍い団が用意した馬車です。
「私とまなちゃん、キキちゃん、先生、……」
メイさんが委員長さんのところで止まりました。
「私は、委員長をしています、サエと申します」
「イナ国の前王サイの弟のササの娘です」
あーそういえば金貨十五枚持って来てるのこの人だ。
王族だったのかー。
「じゃあ、サエちゃんも一緒に乗ってくれ」
「えーー、なんで俺たちが降りなきゃならないんですか」
「ドイ、不満があるならメイさんに言え」
後ろから、先生と委員長さんの代わりに下ろされた人が、不平不満を言っています。
「すぐに、乗せてやるから文句をいうなー」
馬車の窓から、メイさんが怒鳴ります。
「クロさん、四人をヤパ王都近くの街道へ、移動してくれ」
「これで、馬車で移動するように見えるはず、偽装ってやつだ」
「はい、分かりました」
次の瞬間、ヤパの王城が、見える位置に移動しました。
「えーー、なんで、私はイナ国人ですよ、他国では移動出来ないはず」
「それは、北の魔女の眷属ガド様の結界魔法があるからだ」
「結界魔法を打ち破れる魔力があれば、何処でも移動出来る」
メイさんが、先生と委員長さんに説明していると、クロさんが耳元で
「えへへ、私、あいさんの眷属になって結界が破れる様になったんです」
嬉しそうに、自慢してくる。
遅れて、ハイさんと、レイさんも移動してきた。
ヤパの王城に近づくと、木造の大きな建物が出来ていた。
街道を見つめるように建っている大きな建物は異様だった。
そこから、大勢の兵士が飛び出してくる。
「止まれー」
兵士が槍を突きつけてきた。
全員に緊張が走る。
「ばか者―、丁重に扱えと言ってあるだろう」
「申し訳ありません、兵士が勝手に勘違いをしまして」
「まなさま、私です」
フードを取ると、パイナップルさんでした。
「ご案内します」
「付いてきてください」
「パ、パイ先生」
先生が、驚いた様子で、パイナップルさんを見ています。
はーこの人、先生の先生なの。
パイナップルさんの名前がパイさんって憶えやすすぎでしょう。
「うふふ、モモさん元気にしていましたか」
「はい」
「あのー、パイ先生とまなさんは、どの様なご関係なんですか」
「あー、えーと」
「はだかで」
「は、はだかで」
「からだを」
「か、からだを」
「ちょとまったー、パイさん」
「変なところで切りながら、変な言い方しないでください」
こ、この人こんなキャラなのかー。
「魔王の森で、一緒に調査の仕事をして」
「その後、皆で一緒にお風呂に入っただけです」
木造の建物の二階に案内されるとあの人がいました。
暇なのかー、この人。
「まなちゃーん、ずっと、待っていたよー」
「あのー、今日は先生と委員長さんが一緒なので」
「あら、まなちゃんの先生と委員長さんですか」
「ご挨拶が遅れました、まなちゃんの親友でこの国の……」
「待って、そこまでね」
わたしは、笑顔で挨拶をさえぎった。
「あのー、メイさんあの方は誰ですか」
委員長さんがメイさんに聞いています。
「あーヤパの女王ノルさんです」
だー、ノルさんですじゃねー、さえぎった意味―。
「ごえーー」
あらまー、先生と委員長さん驚きすぎて、ごえーってなってます。
ちっさいメイドさんが飛んできて掃除をしようとしています。
でも、大丈夫ですよ、戻す手前でした。
「はーー、まなさん監視する為に、こんな建物造ちゃったよー」
「この建物わたしの監視の為だけにー」
「そうですよー、まなちゃんの為だけー」
ノルちゃんがとても嬉しそうに、頬を赤くしています。
うーん、この人、わたしに、褒められようとしている気がします。
お金持ちは何を考えているのか分かりません。
「なんで、そんな、もったいないことをするのですかー」
「えー、だって、魔王の森で切った木が余っているから」
「取りあえず消費目的で造ったのですよ」
「見てないと、わたしの所に来るの絶対に、後回しにするでしょうし」
「まあ、後回しにはしますけど」
「やっぱり、やっぱり、やっぱり、監視していてよかったー」
ヤパに到着するなり、女王と合流した。
二人の同行者は、この段階で驚きすぎて涙目になっていた。