第九十話 ヤパへの道中記
空は青く、風が気持ちいい。
石油を燃やさないこの世界は、空気が濃い気がします。
イナ国からヤパ国への道は、草原だけを通って行く事が出来ます。
つまり安全と言うことです。
ヤパへ向かうということは、武術大会の見学に、向かっているということです。
学校の行事として、見学するということで、学年ごとで集団移動しています。
わたしは、学園の隊列の最後尾をキキちゃんとクーちゃんの三人で歩いています。
正確にはクーちゃんは、私の肩の上で姿を消しています。
日本でも、あいちゃん以外の友達がいなかったわたしは、こちらの学園でも、もちろん友達がいません。
でも、同級生の会話は気になるので盗み聞きです。
なんで、学校なんか行かなくては、いけないのかと思っていましたが、それは、学校で同級生の話を聞くためにいくのだと最近わかりました。
必要な情報の多くを生徒同士の会話で学ぶことができます。
「ねー今回いくら持ってきた」
早速始まりました。
わたしは、コウさんから金貨五枚もらったので、全部持ってきました。
これは、私の初めての給料です。
たぶん一番多いのでは無いでしょうか。
「わたしは金貨十枚です」
「私は金貨十五枚、月のお小遣いが金貨十枚なので、お父様に、このために十五枚いただきました」
な、なんですとー、お小遣いが金貨十枚ってありえない。
貴族というのは、どんだけ金持ちなんだー。
お金持ちというのはすごいです。
わたしの常識が通用しません。
わたしの通う学園は国一番の学園なので、貴族が多く通っています。
今回のヤパ行きに参加しているのは、お金持ちだけで他の生徒は辞退して、学園で自習しています。
「今日の護衛って、伍イ団でしょ?」
「そう、そう、私、会ったこと無いんですのよ」
「わたしもー」
「私もー」
わたしの学園でも伍イ団の噂は広がっています。
でも、話が大きすぎて、本当かよーって、疑う話も多いです。
しかし、伍イ団って名前がダサいですよね。
誰がつけたんだ。
命名センスなさ過ぎ。
まあ、自分の造った刀に、アド正って付けている段階で、人の命名センスをどうこうは言えませんよね。
まあ、自慢じゃあありませんが、わたしには人より優れた才能など皆無です。
努力して、人並みです。
「ヤパ国って、魔王軍と戦っているんだろ」
「魔王軍ってなんか怖そう」
「ヤパの王様も怖い人らしいぜ」
そういえば、わたしは、いろんな人に会ったけど、魔王って会ってないんだよなー。
会ったら殺されちゃうのかなー。
見てみたいけど、会いたくないわー。
「そういえばさー、今回、勇者ペグ様も参加するって聞いたけど」
「本当?」
「世界一つえーんだろ」
「憧れるよなー」
「イホウギ将軍とかシュウ将軍とかとはどうなってるんだ」
「ヤパの国民は北の魔女の加護があるから」
「ヤパ国内では、イホウギ将軍やシュウ将軍よりつえーんじゃねーの」
「ヤパ以外で戦えば、イホウギ将軍か、シュウ将軍って事になるのか」
「じゃあ、実質つえーのは、イホウギ将軍かシュウ将軍か」
「そういえば、イホウギ将軍、大将軍に出世したんだろ」
まあ、見たことの無い人のことは、実際どーでもいいけど、ペグ様って有名なんだ。
知らなかった。
わたしの印象では、クズ野郎なんですけどね。
「おーーい」
「まなちゃーん」
わたしの名前を呼ぶ人がいます。
肩に伍の刺繍が大きく付いています。
これだけ大きな刺繍なら誰でも伍イ団だって分かりますよね。
「メ、メイさんですか」
「やー、探しちゃったよー」
「なんで、こんな所を歩いているんだい」
うわーー、まわりの人が皆見ていますよ。
わたしは、すごーく目立ちたくないのですが。
「メイさんが護衛をしてくれるのですか」
「そうですよ、ほら、レイちゃんもハイさんも一緒です」
「こんにちは、まなさん」
「こんにちは、まなちゃん」
ハイさんと、レイさんが挨拶をしてくれました。
会話はあまりしていませんが、お食事会やコオリのグエン商会で顔を見ています。
伝説の人達から気安く声をかけられたら、目立ちまくりですよ。
「こ、こんにちは、皆さん」
「本当に探しちゃったんだよ」
「まなちゃんのことだから先頭を歩いていると思ったから、前から順に見てきたら、まさかの一番後ろとは」
「ごめんなさい、わたし、学校ではあまり目立ちたくなくて」
わたしは、理解して貰おうと小さい声で言ってみた。
「ぎゃーはっはーー」
「そりゃー無理でしょう」
「ヤパじゃあノルさんが首を長くして待ってるよきっと」
「えーーっ」
そうだった、ヤパじゃあ、わたしは、結構有名人だった。
しまったー自習にしておけば良かったー。
誘惑に負けてしまったんだよ。
武術大会なんてわくわくが止まらなかったー。
だって、リアル、てんか○ちぶとうかい、って事でしょ。
行かない選択肢が浮かばなかったー。
「これで、ご飯の心配をしなくて済んだ」
なんだとー、そのために探していたのかー。
わたしは、食堂かー。
「いやー、護衛の依頼が来たときは、安いから断ろうと思ったんだけどね、学園に問い合わせたら、まなちゃんが来るって聞いてね」
「そっから、誰が行くか取り合いになったよ」
「我々、女性陣が勝ちました」
そこからは、伍イ団の護衛は、わたしの専属みたいになり、ただでさえ浮いているわたしの存在が、違う意味で、超浮き出しました。
とうとう、二十万字達成。
次は、百話を目指します。
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