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北の魔女  作者: 覧都
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第八十五話 まなの回想

わたしは、北の魔女の城に帰ると、アドちゃんにクーカイちゃんを紹介して、日常に戻った。




わたしは、いつのまにか北の魔女になりつつある。

北の魔女の筆頭眷属アド様、この世界の神話的存在、普通なら会うことも出来ない圧倒的な存在。

そのアド様を最近は、アドちゃんと呼び、抱きしめたくなると呼び出して、ハグしています。


わたしは、特になんの取り柄も無い、どちらかと言えば駄目な部類の、単なる人間です。

日本という国で高校生をしていました。

けっして、交通事故にあったりして、転生や、転移をしたわけではありません。

なぜここにいるのかすら分かっていません。


この世界では、若返りの魔法の呪いにより、記憶喪失になった振りをして過ごしています。

本当は、日本人の時の記憶が、完全にあります。


この世界には、北の魔女の呪いがあり、これは法律を強制執行するような魔法です。

最大の呪いは、死者の復活の禁止です。

これは、北の魔女にも適用される程の強力な魔力の呪いです。


そして、次に強力な呪いが錬金魔法に対する呪いです。

魔法で、ざくざく金や銀を出せてしまっては、世の中が混乱してしまいます。

そのため、大量の魔力を消費しないと使えないように呪いがかかっています。


ですが、逆にこのおかげでわたしは、錬金魔法だけは普通に使用することが出来ます。

それ以外の魔法は、暴走して、強大な魔法になり、手に負えません。

ロウソクの火を出そうとすると、半径三百キロメートルを焼き尽くし、月を焦がしました。


これ以外にも細かく禁止魔法があり、わたしは北の魔女がとても細かいことに気の回る、頭の良い方だと思っています。

わたしとは、大違いです。


ただいま、わたしは絶賛授業中です。

イナ国、王都イネスの魔法学園で、魔法の使い方を学ぼうと授業を受けています。

わたしは、ここで魔法の制御、いかに小さく魔法を出すかを学ぼうとしています。


ですが、ここで学ぶ授業は、パチンコ玉位の火の魔法を、ビー玉位にして、次にピンポン球、ソフトボール、バスケットボールへと、小から大へ強化する為の授業。

そして、火以外の色々な種類の魔法を、使えるようになる為の授業をしています。


わたしのように、魔法を小さくしようなどという授業はありません。


魔法以外の授業もありますが、その授業は、日本人のわたしにとっては歴史以外は、小学生位の内容にしか思えないので、楽なものです。


わたしは、授業中、こんな事ばかり考えていて、授業を聞いていません。

落ちこぼれです。

当然お友達もいません。

まあ、日本の学校でも、あいちゃん以外の友達は、いませんでした。


あいちゃんとは、幼なじみで、なにがいいのかわたしをすごく気に入ってくれています。

とてもすごい子で、成績優秀、顔も良し、人当たり良し、運動神経良し。

とても、すごい人でした。


こっちの世界でも、別人のはずですが、日本のあいちゃんそっくりな人がいて親友になってくれました。

あいちゃんは、イナ国の最大の魔獣をやっつけたり、南トラン国との戦争で、南トランを伍イ団の人達と撤退させたり、ヤパ国では、魔王軍の幹部の魔人を倒して撤退させたり、北トラン国と、南トラン国では、お母上様と呼ばれて、尊敬されていたり、オリ国の、お姫様を養女にしたり。

すでに超有名人になっています、流石です。


「まなさん、ちゃんと聞いていますか」


先生に、上の空を気づかれました。


「あ、はい、あっ、いいえ」

「すみません、聞いていませんでした」


ぎゃはははー

他の生徒におおうけです。

わたしは、こんな感じでクラスの笑いものです。

あいちゃんとは大違いです。

情けないです。


「大事なことなのでもう一度いいます」

「一ヶ月後に、ヤパ国で、武術大会があります」

「この学園の高等部の生徒全員で見学に行きます」

「場合によっては、他国の魔法学園の生徒とも交流出来るかもしれません」

「いまから準備を怠らないようにして下さいと説明していました」

「よろしいですか」


「はい分かりました」


すでに、昨日の今日でノルちゃんの計画がこの国まで届いているのには驚きです。

毎日、退屈な授業の繰り返しですが、一つ楽しみが出来ました。

早く来ないか武術大会。






まなが退屈な毎日を送って、数日がすぎたミッド商会。


「コウさん、少し顔色が悪いですね」

「お貴族様の対応も落ち着いたし、休日でも取ったらどうですか」


白い服を着た美少女姿の、メイがコウを気遣い話しかけた。

コウはミッド商会の代表で、顔に沢山の傷痕のある、凶悪な人相の大男である。


「では、お言葉に甘えて二日程休ませてもらいます」


「うん、何かあればクロちゃん経由で連絡をしてください」


「わかりました」

「じゃあ、クロさん、タムの町まで移動をお願いします」


コウが、肩の上にいる白い妖精の様な、今は姿を消しているクロに、移動を依頼した。




オリ国、最北の町タム、


コウは町を抜け、どんどん北に向かう。

この先は、移動符ではいけない範囲で、クロも初めての土地なので直接移動魔法で移動出来ない。

そのためコウは、北に向かい徒歩で進んでいく。

この先は、小さな村が散在するだけである。


「コウさん、どこへいくのですか」


「ふふっ、魔女の森で昆虫採集です」


「えー、そんな趣味があるのですか」


「もう何度も、来ています」

「俺の趣味です」

「とくにカブトムシとクワガタムシが好きです」


コウが少年のような顔をして目をキラキラ輝かせている。


「そんな、食べれもしない物、取ってどうするのですか」


「眺めるんですよ」

「あの漆黒の輝きがたまりません」

「形もすごいです」


すでに捕まえている昆虫を想像してか、うっとりしている。

しばらく歩いていると、村が見えてきた。


「あの村には、宿屋があるんですよ」

「これより北にはもう寂れた村があるだけです」


「この村も相当寂れていますよ」


「ははは、そうですね」


コウは、普段たいして笑わないが、今日は上機嫌なのか良く笑う。


「まずは、宿屋に部屋を取ります」

「まあ、こんな所あまり人は、来ませんので、いつも空いています」




宿屋のドアを開けると、正面に受付があり、人の良さそうなおばさんが立っている。

受付の左は、食事スペースになっており、六席用意されている


ここで、十人の男が食事をしている。

十人全員、人相が悪く、怖そうな顔をしている。

入って来たコウをジロジロ見ている。


「やあ、おばさん、又来たよ」


「ああ、コウさん毎度」


「じゃあこれ」


コウは、ポケットから少し大きめの袋を渡した。

おばさんは、少し中を見るとにこりと微笑み


「いつも、ありがとう、この宿はコウさんのおかげで、やっていけているようなもんだよ」


「ここが、無くなっては、俺が困るからね」

「いつもの部屋は、空いているかい」


「ずっと、貸し切りで開けてあるよ」


「じゃあ、邪魔するよ」

「いつものように夜中に出て、昼くらいには戻るよ」


「ああ、わかった、好きにしておくれ」


手を上げてコウはすたすた、階段を上っていった。


「いやー、クロさん怖い顔の奴らが一杯いたねー」


クロは、一番怖い顔は、コウさんだったけど、と言いたかったが我慢した。


「いったい、何者なのでしょう」


「ありゃー、人買いだ」

「この先の村で、食えない村人から、娘を買い取るのさ」

「買われた娘はどー転んでも、良い人生は送れねーだろうな」

「可哀想なもんだ」


「助けて上げないのですか」


「こんなのは、どこでも行われている」

「一つ二つ助けてもしょうがねーのさ」


コウは、言葉とは裏腹に、暗い表情になった。

クロは、言っては見たが、人間のことには、本当はあまり関心がなかった。


「さて、明日、夜中に出るから、もう休ませてもらうよ」


クロに言い終わると、コウはぐーすか眠ってしまった。


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