第八十三話 見えそうで見えないお風呂回
扉を出ると、すぐにノルちゃんが話しかけてきた。
「ずいぶん、汚れましたね」
「はい、魔人の体液をかぶってしまいました」
わたしが答えると、後ろで、わたしの足跡を拭いていた幼いメイドさん達がびっくりして飛び上がった。
わたしの歩いた後は、魔人の体液の足跡が出来ていた。
それを、何か分からず幼いメイドさん達が、丁寧に拭いていたのだ。
幼いメイドさん達が、汚れた雑巾を見つめ震えている。
「ごめんなさい、汚してしまって、後でわたしがやりますのでそのままにしておいて下さい」
「わたしは、もう、頭からかぶったので魔人の体液など平気です」
にこりと笑い、幼いメイドさんを落ち着かせようとした。
「だ、大丈夫です」
「ちょっと、驚いただけです」
「そうですか」
「じゃあ、お願いしますね」
幼いメイドさん達が仕事に戻ると、ノルちゃんが話を続けた。
「まなちゃん、それで、城塞都市の様子ですが、人を直接移動させられますか」
「クーちゃんどうですか?」
わたしは直接答えず、クーちゃんに聞いてみた。
クーちゃんは消していた姿を現し、ヤパ国の女王に失礼の無いよう、うやうやしくお辞儀をすると発言する。
「おやめになった方がよろしいかと」
「それは、魔人が他にもいるということでしょうか」
「そうです、この国の最強戦力がペグ様なら、少人数では魔人は倒せません」
「地道に森を削って、大人数で進軍して街につなぐ方が安全です」
「わかりました」
「時間がかかりますが、仕方が無いですね」
「武術大会でも開きましょうか」
「えっ」
「くすくす、まなちゃん分かりませんか」
「あっはい、どうつながるのか分かりません」
「森を切り開くには人手が必要です」
「ヤパの国は、魔王軍との戦闘で大勢犠牲者がでました」
「人手不足なのです」
「そこで、武術大会を開き参加者から、兵士にふさわしい人を勧誘するのです」
「あー、なるほど」
そういえば、昔の日本でも相撲大会を開いて、兵士を現地調達していた偉人がいたわ。我、尾張県出身の、小田信長だったわね。
「決めました、一ヶ月後武術大会を開催します」
「まなちゃんも来て下さいね」
「楽しそう、絶対いきます」
「さあ、着きました」
「ここが、女王専用のお風呂です」
「女王以外が入るのは初めてです」
ノルちゃんが扉を開けると、薄い紫色のピカピカに磨かれた石の部屋が現れた。
日本なら総大理石という感じだ。
「ここで服を脱いで、浴室は奥です」
それを聞くやいなや、キキちゃんが服を脱いで、浴室へすっ飛んでいった。浴室は引き戸になっていて、キキちゃんが開けっぱなしにしたため、湯気が一杯入って来た。
「こ、これでは肝心なところが見えない可能性があるぞ」
わたしは、心配になった。
だが、心配は杞憂に終わった。全員の姿はわたしからは、ちゃんと見えている。
だが、他所から見ている人がもしいるようなら、湯気で肝心な所は見えないはずである。
「あっ、クロちゃんいるのでしょう」
「はい」
分体のクロちゃんが、消していた白い妖精の様な姿をあらわした。
「折角だから本体で一緒に入りましょう」
「はい」
こうして、今、美女が一人追加された。
ここで脱衣中なのは、ヤパの女王と、そのメイドさん、クーカイちゃん、クロちゃん、魔法使いさん三人、そしてわたしです。
※注:ここから先は、わたしの心の中の声、妄想です。
「ステータス」
「顔評価アーンド胸評価」
「そして、魔法変身」
「三十五歳男、引きニート童貞、トラックにひかれて異世界転生」
「転生したのは少女まなでしたになーれ」
「これでわたしは、転生おっさんです」
「ぐへへへ、じゅる」
「ヤパ国女王ノル」
「顔85、胸20」
「ヤパ国メイド」
「顔80、胸30」
「魔王軍幹部にして魔女あいの眷属クロ」
「顔85、胸15」
「北の魔女眷属、クーカイ」
「顔85、胸15」
魔法使いのおねーさんが黒い魔法使いの服を脱ぎました。
いままで顔が、フードに隠れて、口元しか見えませんでしたが、やっとお目見えです。
「魔法使いA」
「顔75、胸20」
「魔法使いB」
「顔80、胸15」
くそーなんで、みんな顔のステータス高いんだ。
だが、胸のステータスはそろって低スペックだ。
ちなみに
「わたし」
「顔50,胸 5」
「キキちゃん」
「顔85、胸 1」
平均値はわたしが最低ジャーー。
しかも、皆、胸ちっさ。
魔力が多いと胸が縮むのか。
おっ、最後の魔法使いさんが脱いでいますぞ。
「ぐへへへ」
「魔法使いC」
「顔50」
「ついにわたしと同じ位の顔じゃー、平均点じゃー」
「よかった」
「んっ」
「なー、なんじゃーあれはー」
「むっ」
「胸にパイナップルが付いとるではないかー」
「顔50、胸100」
「胸が呂布じゃー」
※注;妄想終わり。
わたしが、こころの中で泣いていると魔法使いさんが三人集まって来た。
「あのう、まな様、申し訳ありませんでした」
「このままでは、心が晴れません、処罰をお願いします」
「そうですね、その方がいいでしょう」
「まなちゃん、何かこの者達に罰を与えて下さい」
ノルちゃんが厳しい顔で魔法使いを見る。
「もういいですよ、済んだことです」
「そう言われましても、この心苦しさが解放されません」
「わたしに名案がありますよ」
後ろから、クーカイことクーちゃんがニコニコ顔で割り込む。
「皆さん、気をつけをしてください」
「そして、お尻後ろ、胸前の姿勢をして下さい」
「はい、いいですね」
三人の魔法使いが、胸を突き出した姿勢になった。
「どうぞ、まな様」
クーちゃんが超得意顔です。
「はー、意味がわかりません」
「あっ」
横目でクーちゃんを見ると、手をわしわし、しています。
まさか、それをやれと。
ここで、それを。
わたしは、汗が出て来た。
魔法使いさんは、何をされるのか分からず、目を閉じて、震え出しました。
「な、中でわたしの体を洗うのを手伝うことを罰にします」
さすがに、これだけの人の前では出来ません。
ただ、パイナップルは触りたかった、ううっ。
「クーちゃん、こういうのは、大勢の前では出来ませんよ」
「そうなんですか、分かりました」
クーちゃんがすごい笑顔です。
これは、絶対なにか間違っていますね。
不安です。
全員美しい裸体で浴室に入りました。
当然、わたしを含め全員すごい湯気のため、肝心な所は隠れていますが、大体見えてますので、ご安心下さい。
わたしのでよければ、全部お見せします。
と、思ったら、湯気がまとわりついて、払っても、払っても隠れてしまいます。御免遊ばせ。
わたしは、浴室で、三人の美しい魔法使いさんに体を洗ってもらっています。
意外とご褒美です。
パイナップルがときどき、ぷるんるるんとちらちら、視界に入ります。
わたしだけ見てしまって済みません。
わたしが、湯の中に入るのが最後でした。わたしがお湯に入ると、そのタイミングで湯気が引き、皆の顔がよく見えるようになりました。
わたしは、そっと、パイナップルさんの横に並びました。
顔ステータスが同じ位なので並んでみました。
なにかがぷかぷか浮いています。
わたしの視線に気が付いたパイナップルさんが話しかけてきました。
「お湯の中だと浮くんです、一番楽になるんですよ」
うん、わたしにはなにを言っているのか分かりません。
結局、わたしは、全員と反対側にまわり、美女の入浴シーンを楽しんだ。
美しいものは、同性でもやっぱり美しいのでありました。