表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
北の魔女  作者: 覧都
82/180

第八十二話 女王の裁定

クーちゃんは正確に私の指示を実行した。

ノルちゃんこと、ヤパ国女王の前にわたし達を移動した。


両手をネジネジにして今は、意識を取り戻しうなっている勇者。

両手両足を折られた魔法使いの女三人。

全身を魔人の体液でべちゃべちゃにしたわたし。

そして子供のキキちゃん。

クーちゃんは姿を消している。


こんな不審者が、謁見の間でお仕事中の、女王の前に現れれば、場違い感は半端ない。


衛兵は武器を、この不審者に向けた。


「まなちゃんですか、驚きました」


ヤパ国の女王がびっくりしている。


「すみません、お仕事中」


わたしは、苦笑いをして、謝った。


「ここは、強い結界が張ってあるのですが、簡単に移動出来てしまうのですね」

「流石です」

「しかし、この状況は」

「許せませんね」

「この者達を捕らえなさい」


女王が手のひらを、わたし達の方へ向けた。


衛兵は武器を手にわたしの回りを包囲した。

包囲されたのはわたしとキキちゃんの二人だけだった。

キキちゃんは歯をむき出し、回りを警戒している。

わたしに何かあれば、全員を生かしてはおかない感じがする。


やっぱり、勇者様がこんな状態じゃあ、わたしは牢屋行きかな。


勇者様と、魔法使いのおねーさんがこっちを見て、ニタニタ嫌な笑いを浮かべています。

性格がトコトン悪いですね。

こんなのが、強くて、勇者とは、人間の恥ではないでしょうか。


「な、何をしているのですか」

「やめなさい!」


女王の叫びを聞き衛兵は何がなんだか分からない様子だが、数歩下がり武器を下ろした。


女王が少し狼狽しているように見えます。

女王はヨロヨロ玉座から降りて、わたしの前に来ました。

そして、ひざまずいた。


「えーーっ」

「な、何をしているのですか」


「まなちゃん、いいえまな様、重ね重ね、配下が失礼を致しました」


女王は深々と頭を下げると、表情を険しくし回りを見渡した。

この部屋には今、この国の重臣がほとんど揃い、各国の使者も集まっている。

全員に分かるよう、ゆっくり話し始めた。


「まな様は、救国の恩人、貧民のあい様のご友人で、この世界の至宝のような御方です」


「クーちゃん、あいちゃんって救国の恩人なんですか」


わたしは、姿を消して小さくなり、肩の上にいるクーちゃんに小声で聞いてみた。


「はい、魔王軍がこの王都を攻め落としかけていた時」

「その魔王軍の幹部を一人で全部やっつけて、引き上げさせました」


「す、すごいですね」


「はい、すごいです」


うん、見えないけど、クーちゃんのどや顔が思い浮かびます。




「まずは、治癒の魔法使いを呼び、けが人の治癒を」


二十人以上の魔法使いが呼ばれ、治癒を始めた。

勇者ペグに全員の魔法使いが手を伸ばし手のひらを向けた。

どの魔法使いも真剣な表情で汗をかき始めた。

そんな魔法使いとは裏腹にケガが治らない。


「これが、私の国での最高の治癒です」

「あなた達、もういいですよ」

「まな様、治癒をお願いしてもよろしいですか」


女王がこちらに笑顔を向ける。


「クーちゃん、お願いしてもよろしいですか」


「嫌です」


「えーーっ」

「な、何故ですか」


「威厳を持って命令して下さい」


「アドちゃんと同じ事を言っているよ」

「クーちゃん、治癒をして!」


「かしこまりました、まな様」


クーちゃんが言い終わると、勇者と魔法使いのケガが治ってしまった。

ねじねじだった、勇者の腕が何事もなかった様に治ってしまったのだ。


「おおおーーおおっ」


回りから地鳴りのような声が上がった。


「ありがとうございます、まな様」


「あのー、ノルちゃん、様はやめて下さい」


「そうですね、まなちゃん、私とまなちゃんは親友でしたね」


うわーこの人ちゃっかり親友宣言しちゃったよ。


「皆さん見て頂けましたか」

「まなちゃんの魔法は偉大です」

「そして、何故その魔法をかけて貰えなかったか」


ノルちゃんは勇者の目を見た。

勇者は、ノルちゃんの言いたいことが分かったのか正座をし、頭を下げた。


「あなた達には失望しました」

「最初に、私は言いました、私の親友ですと」

「粗相のないようにと」

「その様に接していたら、現地で治癒が終わり、今頃は二つめの城塞都市の調査に向かっているはずです」


「……」


勇者は返す言葉がないのか、うつむいたままだった。


「まなちゃん、不快な思いをさせて申し訳ありません」

「この者達は、明日いえ即刻、死罪に致します」

「ヤパの国をお見捨てにならないで下さい」


その言葉を聞くと勇者も魔法使いも驚き飛び上がった。

そして顔面蒼白になり、涙ぐみ、震えながらノルちゃんの顔を見つめた。

ノルちゃんは冷たい目を勇者と魔法使いに向けていた。


「待って下さい、死罪は望んでいません」


わたしはあせって声を出した。


「では、やめます」


「はっやっ」


わたしは、つい口に出してしまった。


「まなちゃん、お体が汚れています、お風呂に入りましょう」

「お風呂の後は、食事をしましょう」

「と、言うことなので、休憩に入ります」


ノルちゃんは、くすくす笑いながら、わたしを見てきた。

最初から勇者を死罪にする気はなかった様だ。

しかも、わたしをだしにして、休憩をするつもりだ。


「お風呂への案内は私がします」

「問題ありませんね」


メイドさんに、ノルちゃんが問いかけた。


「はい、その代わり私もお供します」


ちゃっかり、メイドさんまでお風呂に入るつもりだ。


「あのー、魔法使いさんも一緒は駄目ですか」


「まなちゃんが望むなら、何でも我が儘言い放題です」


ノルちゃんが嬉しそうだ。


「私、大勢でお風呂入るの初めてかも」


ノルちゃんが超ご機嫌である。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ