第七十五話 消去先にて
食事が終われば、次はお風呂タイムです。
そう思ったら、皆、お腹が膨れすぎて動けないとのことで、お風呂はまた今度です。
「あいちゃん、あれをお願いします」
「消去ですか」
「はい、今回は少し長めでお願いします」
「一時間でお願いします」
「わかりました」
「消去」
わたしは、久しぶりにあいちゃん宇宙にきました。
今、わたしが作った地球の上にたっています。
「ななな、何ですかここは」
「あらあら、クロさんですか」
「付いてきちゃったんですね」
「あ、はい」
「かわいい、白い妖精さんみたいですね」
「ありがとうございます」
「それより、ここは?」
「ここは、あいちゃんに消去された先です」
「わたし専用の空間なんですよ」
「太陽が出ていますが」
「わたしが作りました」
「この大地、地球もわたしが作りました」
「月もあるのですよ」
「すごすぎです」
「まな様っていったい」
「……」
どうしよう、隠してもばれるし、クロさんには話しておきますか。
「クロさん、驚かないでください」
「わたしは、北の魔女です」
「やっぱり、薄々わかっていました」
「えーーえーっ」
あー、あほなのか、わたしは。
わたしが驚いてどうするんだ。
「ここで、何をされるんですか」
「魔法の練習です」
「えっ」
「北の魔女様が魔法の練習?」
「ここから先は誰にも言わないでほしいのですが」
「約束して下さいますか」
「大丈夫です、私はあい様の眷属です」
「あい様とまな様は魔女の契約をされていますよね」
「はい」
「でしたら、間接的ですが私もまな様の眷属みたいなものです」
「じゃあ、わたしにも眷属として忠誠を誓うと」
「もちろんです、忠誠を誓います」
「ありがとうございます」
わたしは、クロさんの頭を撫でた。
クロさんの体が光り輝き、どんどん大きくなった。
「な、なんですかこれはー」
「で、でっかくなっちゃった」
「はっ、し、しまった魔女の契約だ」
「しかし、すごい、クロさんの顔が見えない」
「富士山より高いよねこれ」
「まな様、どうなっているのですか」
クロさんは一瞬で元の大きさに戻った。
「あ、クロさん元に戻ったんですね」
「よかった」
「まな様これは?」
「魔女の契約ですね」
「そうですか、今、私は本体と切り離されています」
「だから、契約出来てしまったのでしょうか」
「そ、そうですね」
そうですねと言ったものの、わたしにはわかりません。
「私は分体なのに、北の魔女様の眷属」
「もうこれは新しい本体ですね」
「クロさん」
「……」
「クロさんが二人かー」
「ややこしいので名前を付けちゃいましょう」
「えっ」
「だめですか?」
「いいえ、光栄です」
「北の魔女様に名前を頂けるのですから」
「じゃあ、クロ改、略して、クーカイ」
「クーカイです」
あー、あんまり略せてないかー。
「はい、ありがとうございます」
「あい様と同じイが付いています」
クロさんは、笑顔で、本当に嬉しそうです。
「えっ、いいのですか」
「はい、良い名前をありがとうございます」
「じゃあ、クーちゃんよろしく」
「はい、まな様よろしくお願いします」
「じゃあ、練習が必要な訳を説明しましょう」
ポトリ、小石を目の前にだす。
「消去」
ズガガガガーー、恐ろしい大穴が開いた。
「宇宙から見たら、地球がへっこんでいるでしょうね」
「これが、小石一つ消そうと思って出した消去魔法です」
「凄まじいですね」
「腰掛けられる石なら、大地が全部なくなりますね」
「そうなの、私の魔法は、世界を滅ぼします」
「だから、使えないのです」
「いま、北の魔女は魔法が使えないのです」
「これが、北の魔女の秘密ですか」
「はい、クーちゃんわかって頂けましたか」
「わかりました」
「さて、この小石を想像して、治癒」
ごおおおおおー、地球が元通りに治った。
「今日は、まだ試したいことがあるのよ」
「何ですか」
「自分に強化魔法がかけられないかと思って」
「まず、自分の胸に手を当てて、肉体強化」
「まな、パーンチ」
地球を叩いた。
ごおおおおーごごごおおおっおっ
地球にひびが入り割れていく。
「やばい、やばい、小石の大きさ治癒」
ごおおおおお
「やばー、スーパー野菜人かーーわたしは」
「使えませんね」
クーちゃんが笑いをこらえて冷静に言う。
「これもだめかー」
「打つ手無しだー」
「まな様、面白くて良いではないですか」
「北の魔女様らしいです」
「笑い事じゃないですよ」
「このままじゃあ、楽しくないもの」
「チート、無双が遠のくもの」
「最期にあと一つ試しましょ」
うーーん、クーちゃんがめちゃめちゃ、わくわくしているわ。
「防御壁」
「これで、太陽、月、地球を防御壁で包みました」
「クーちゃん、私を連れて飛べますか」
「はい、大丈夫です」
「でも、わざわざ飛ばなくても、私は移動魔法が使えます」
「えーーえっ」
「すごい」
「そうですか」
クーちゃんが顔を赤くして気を良くしているようです。
なんか、わかりやすくてかわいい。
「じゃあ、防御壁の外まで移動して欲しいです」
「具体的には、地球が小さく見えるあたりまで」
「はい、移動」
「……」
「す、すごいです」
「一度にこんなに移動出来るとは思いませんでした」
クーちゃんは自分の魔法に驚いていた。
わたし達は宇宙に飛び出していた。
地球がピンポン球位に見える。
「うん、丁度よさそう」
「クーちゃんは防御壁の中へ」
「爆発魔法を使います」
「爆発が終わるまで防御壁から出ないで下さい」
「はい」
クーちゃんがいなくなったのを確認して、防御壁を最大魔力で強化した。
「では、では、やってやりましょう」
「……」
「……」
「爆破!」
……
この爆破は、強烈な閃光となって、この空間に広がった。
それは、宇宙の始まりビッグバンのようであった。
「まな様」
「クーちゃん」
「くすくす、まな様」
「今、すごくすっきりした顔をしていますよ」
「うん」
「全部出ちゃった」
「防御壁は解除しておきましょう」
「地球の地上にお願いします」
わたしは、地上に降りると、なんかすっきりしすぎて、疲れて横になった。
横にクーちゃんがわたしと同じ大きさで寝転んでくれた。
「くっ、くっ、くっ」
「あーっ、はっ、はっ、はっ、あーははははーあー」
「なんちゅーでたらめな魔力よー」
「うふふ、でたらめですね」
「くすくす」
わたしは、クーちゃんを抱きしめ、しばらく笑い続けた。
抱きしめられたクーちゃんは赤い顔をして、もじもじしていた。