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北の魔女  作者: 覧都
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第六十六話 コウの商談

コウはオリ国、王都オオリの中央広場に移動した。


中央広場は物々しい雰囲気に包まれていた。

兵士が千人以上詰めており、立派な将軍と思わしき人物までいた。

今日の襲撃で倒したゴルド一家の配下を、ここに移動させ逮捕させるため、メイが手配したのだ。


「あの方にご挨拶して下さい」


透明のクロがコウの肩で指示をした。


「ちょっ、待ってくれありゃー将軍だぜ」

「俺見てーな見てくれの者が、話しかけて良い人物じゃねーだろ」


コウの顔には無数の傷がある。これは全てケンにやられた傷である。

ケンの拳は痛烈で、顔の骨と拳に挟まれた肉は、刃物で切られたように裂ける。

裂けた傷痕が残ってしまっているのだ。

ケンと一対一で戦って生き残っているのは、このコウとチュウとモリの三人だけである。


コウはまだ人相がそこまで凶悪ではないので良いが、チュウとモリは凶悪な人相に加え傷痕も多いので、心臓の悪い人なら、その顔を見ただけで心臓麻痺のため死んでしまう位の見た目をしている。


「見てくれで人を判断するようなら私が叱ってやりますから」

「気にしないで声をかけて下さい」


「本当かよー」

「無礼打ちなんて、洒落にならねーぜ」


ぶつくさ言いながらも、コウは将軍に近づく。


「止まれー」

「きさまは、何者かー」


将軍の横の兵士に止められた。


「ですよねー」

「クロさん止められちまったぜ」


「ちゃんとあいさつして下さい」


クロが誰にも聞こえないよう、耳元でささやく。


「失礼します、私はミッド商会のコウと申します」

「将軍様に少し話したいことがありまして、お取り次ぎお願いします」


将軍はその言葉をきくと、コウの方を見た。

見るからに人相の悪いコウの姿を見て無視を決め込んだ。


「いだーーっ、痛いなークロさん」


クロは消していた姿を表した。

将軍の肩にもクロがいて、そのクロが将軍の揉み上げの毛をむしっている。

将軍はコウの肩にいるクロに気が付いた。


「す、すまぬ」

「私はシュウと申します」

「いやー、人を見た目では判断しないように心がけていたのだが」

「時々忘れてしまう、許してくれ」


「貴方がシュウ将軍!」


コウは目を見開いて驚いた。


「はい、後イ団にはお世話になっておりまして」

「今日は少しでもその恩返しがしたいと出て来ているのですよ」


シュウ将軍とはオリ国の筆頭将軍であり、世界一の強者としても有名な将軍である。


「クロさん。知り合いなのかよー」


「はい、だから叱ってやりました」


クロがにこりと笑うと、シュウはばつが悪そうに笑う。


「今日はどのようなご用でこちらに?」


「顔見せよ」

「でしょ、クロさん」


二人の後ろから声をかけたのはマイであった。


「それだけではありません、商談です」


マイの肩のクロが話す。

マイはご機嫌である、この白い小さな妖精が欲しくて、欲しくて我慢出来なかったが、今回のコオリの件で付けて貰えたからだ。


私の妖精さんが一番可愛いわ。

などと思っている。


「あのー、こちらの、きれいなお嬢さんは誰ですか」


コウがマイの肩のクロに質問する。


「この方は国王の次女にして、コオリの領主マイ様です」


「なーー、今度は王女様かよー」


コウは本気で驚いていた。

お、俺は場違いだろーどう考えても。

もう帰りてー。


「実は、お酒を生産出来るようになったので、売り込み先を探しています」

「良い知恵はありませんか」


「私が買ってあげるわよ」

「はい、商談成立ね」

「それより、ここにミッド一家が来ているって事は、そろそろ私の出番じゃない」

「私もコオリに行くわ、大丈夫かしらクロさん」


「大丈夫だと思います」


クロは、少し不安を感じたが、断る理由もなかった。


「じゃあ、準備をするわ」

「コウさん、あなたは私と来て、丁度いい人を紹介出来るわ」




コウとマイの姿が消えると、シュウの前に凶悪人相の者達が移動してきた。


「な、なんなんだこの数は」

「兵の数が足りぬ」

「増援を呼べ」


まいったなー、今日一日で五,六十人かと思ったら、すでに二百人はいる。

全員足と手がご丁寧に折られている。

のんびり構えていると牢が足りなくなるぞ。


「ゲダ殿の手配もいそがせろ!」


シュウは横にいる兵士達に指示をする。

メイはゴルドの手下を魔人ゲダの精神支配の魔法により、罪を自白させ裁きを受けさせるよう、シュウに頼んでいた。


「判事に、罪が決まり次第刑を執行するように伝えてくれ」


「はっ」


伝令の兵士達がそれぞれ指示通りに散っていった。






コウはマイに、領主屋敷の一室に案内された。


扉を開けると、大きな窓の喫茶室だった。

四人分の椅子と、少し大きめのテーブルがあり、そこに一人の上品で優しげな女性が座って、お茶を飲んでいた。


「お姉様!」

「紹介したい人がいます」

「ミッド商会のコウさんです」


「初めまして、ミッド商会のコウです」


「私はマイの姉マリアと申します」  


ま、まじかよマイ様の姉ってことは、次期王様じゃねーか。


「どうされました」

「そんなに驚いた顔をなさって」

「驚いているのはこちらの方ですのよ」

「見て下さい」


マリアの目線を追うと、お茶を持つ手がこれでもかという程震えていた。


「俺の顔はそんなに恐ろしいですか」


「はい、今まで見た人の中では一番です」


「では、あいこですね」


「ははは、ふふふ」


二人は一緒になって笑っている。


「じゃあ、私はコオリ行きの準備がありますので失礼します」


マイが出て行くと、マリアがコウに近づいた。


「商品を見せてもらってよろしいですか」


「ああ、はい」

「クロさん、お酒とグラスを」


白い妖精の様なクロが姿を現し一升瓶とワイングラスを出す。

コウがグラスに注ぎマリアに渡す。


「では、いただきます」

「ふー」

「……」

「おいしいですね」


薄い反応とは、うらはらにマリアは驚愕していた。

この世界にはあり得ないほどおいしい飲み物に。


「あのー、一本おいくらですか」


「金貨一枚です」


「では、十万本いえ、二十万本」

「お願いします」


「はーー、そ、そんなには急に用意出来ませんが」


「では、用意出来るだけ全部買います」

「それでお願いがあります」


「なんでしょうか」


「一般への販売価格は、金貨二枚にして欲しいのですが」


「それはなぜ」


「まず、その位の価値があるからです」

「そして、私は金貨一枚で購入し、兵士達への褒美にします」

「兵士達は、金貨二枚分の喜びを得ます」

「どうですお得でしょ」


マリアが得意げにコウを見る。


「なるほど、分かりました」

「その様に致します」


「コウ様、今晩お暇はありますか」


「は、はあ」


「貴族の晩餐会にご招待します」

「そこで、お酒を披露しましょう」

「きっと、面白いことになると思います」


マリアは楽しそうに笑った。

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